BY YUMIKO TAKAYAMA, PHOTOGRAPHS BY SHINTARO OHKI
恵比寿にオープンした「LESS(レス)」は、ミラノの伝統的なクリスマスケーキ、パネトーネの日本初の専門店。パネトーネは卵、小麦粉、バターでできた生地にパネトーネ種を加え、自然発酵させて生地を休ませるという工程を繰り返して作るため、恐ろしく手間がかかる。オーナーパティシエである、ガブリエーレ・リバが使用するのは、ミラノの生家であるパティスリーから受け継いだ50数年ものの種だ。
「パネトーネの種(天然酵母)は、年月をかけて風味が増していきます。材料は卵やバターのほか、ナッツ、ドライフルーツといったリッチな食材を使うため、強い天然酵母でないと膨らまない。また温度や湿度など環境、そして職人の腕によって、出来が大きく左右される、非常に作るのが難しいお菓子なんです」とガブリエーレ。
そんな彼が、長年培った技術で焼き上げるパネトーネが、ここLESSでは一年中食べられる。定番のオレンジピールとチョコレートヘーゼルナッツクリームの入った「オレンジ&ジャンドゥーヤ」に加えて、すだちやかぼす、ゆずなどを使ったシトラス系、そして栗や桜といった季節の食材を使ったその時期だけのものの3種類を用意。パネトーネの風味豊かな生地は日を追うごとに熟成し、深みを帯びて変化していくのが醍醐味だ。
ケーキ類を担当するのはもう一人のオーナーパティシエ、坂倉加奈子さん。パリのパティスリーやレストランで修行した後、「ヒルトン東京」や「NARISAWA」でシェフパティシエとして活躍した実力派だ。たとえば、見目麗しい「りんごのタルト」は数種のリンゴの特徴を使い分け、バラの花に見立てた部分は紅玉と紅の夢を使用。生の食感を生かしており、タルトで使用されているのはバターでキャラメリゼした青リンゴのブラムリーという品種を使っている。食感も味わいも異なるリンゴのコントラストが楽しい。
店名のLESSに込められているのは、「無駄なものは排除し、研ぎ澄ますことで、より本質的になる」というふたりの哲学。ケーキは日替わりで3〜4種類を少量用意し、出来立てを食べてもらいたいから作り置きはせず、予約が優先。ケーキはSNSで発信しているので、それを見てオーダーするというシステムだ。1つの食材を掘り下げてさまざまな用途に使用するのも、お菓子の可能性を探求するのと同時に、フードロスをできる限り減らす工夫でもある。
イタリアと日本の食材を融合したクッキーもユニーク。しょうゆせんべいをシロップでコーティングし、中にジャンドゥーヤクリームをつめたものや、黒オリーブとカカオ、オリーブオイルを使ったものなど、未経験のおいしい組み合わせは、お土産にも喜ばれそう。
確かな腕とセンスに裏打ちされた、ふたりのパティシエの作り出す新しいスイーツにワクワクが止まらない。
LESS by Gabriele Riva & Kanako Sakakura
住所:東京都目黒区三田1-12-25 金子ビル1F
営業時間:8:00〜18:00
不定休
電話:︎03(6451)2717
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