BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA
その他の好きなおやつを問うと、和三盆糖、豆かん、そして生姜糖。どうやら古典的なものがお好きなよう。「生姜糖は、デパートの地下の諸国物産売場をぶらぶら歩いていて見つけたもの。ちょっと固めの食感、昔ながらのシンプルな味や繊細な甘さが好みで、はまってしまいました。お茶請けや、作業の合間の糖分が欲しいときに少しいただきます。ちょっと変な表現だけど、僕は自分自身を生姜とか刻みネギのような薬味っぽいと思っていて、おやつって自分とは別の存在なんですよね。だからこそ面白いし、必要なものだな、とも思う」。
作業に集中すると、時間感覚がわからなくなり、「“あれ、いつのまにか作品ができている……”ということがある」と蓮沼さん。電子音、自ら採集した環境音、そして声から作る音…… 琴線に触れた“いい音”を脳内に記憶し、無限にある素材を引っ張り出しながら、自室で黙々と音楽として構築する。既存の常識や固定概念にとらわれない斬新な手法から生まれたものは、不思議なほど耳心地がよく、世の中にすっとなじむ。
「音楽という表現は、曲作りと演奏だけでなく、いろんな方法で作れると思っていて。僕らの生活の中で音楽はどこにでも存在していて、その作り方やプロセスを応用することで、音楽の可能性が広がってきます。僕は、旋律のような既存のルールだけではない方法で作品を作っていきたいというか」。
音楽は、文化と、芸術と、そして社会と仲良くコミットする。それらが響き合う未来は、きっと明るい。それを五感で味わえるのが、蓮沼さんの音楽だ。