BY YUKIKO HIRANO
新玉ねぎのシーズンだ。色白でみずみずしく、生でもおいしい味わいで人気が高い。一般的な玉ねぎは乾燥させることで保存性を高め、一年中食べることができるが、新玉ねぎを味わえるのは春の収穫後すぐに限られる。「まずはやっぱり生で食べましょうか。定番のオニオンスライスにパルミジャーノチーズをたっぷりのせ、オリーブオイルを回しかけました。新玉ねぎの魅力は辛味と甘味。その辛味は合わせるお酒を選ぶのですが、これを生かしたいと考えました。今回合わせたのは吾有事(わがうじ)という若き作り手が手がける山形の酒。軽快だけれど、小気味よい酸味と確かな旨味があります。お互いに味を引き立てつつ、玉ねぎの味わいが口の中でスッと溶けて消えていくのが心地よく、後を引きます」(平野さん)
レシピ1:新玉ねぎとパルミジャーノチーズのサラダ
定番のオニオンスライスにひと工夫で粋な酒の肴に。血液をサラサラにしてくれる成分の硫化アリルは熱に弱いので、生で食べるのが栄養面からもおすすめだ。
<材料 2人分>
新玉ねぎ1個、クレソン1束、かつお節ひとつかみ、パルミジャーノチーズ、オリーブオイル、醤油各適量
<作り方>
1 玉ねぎは薄切りにし、水に5分さらした後、水気をよく切る。クレソンをざく切りして混ぜる。
2 器に1の半量を盛り、削り節をのせる。ピーラーなどでチーズを削って散らし、これをもう一度繰り返す。オリーブオイル、醤油を回しかける。
レシピ2:新玉ねぎの鍋ロースト
新玉ねぎは加熱した甘さも魅力。平野流は玉ねぎの断面にキャラメリゼを加えることがポイント。じっくり火の通った甘さと香ばしさをご堪能あれ。
<材料2人分>
新玉ねぎ2個、ローリエ4枚、バター大さじ1、塩、黒こしょう
<作り方>
1 新玉ねぎは横半分に切る。
2 厚手の鍋にバターを熱し、切り口を下にして中弱火で焼く。焼き色がこんがりとついたら返して、塩少々をふり、ローリエを乗せ弱火で20分ふたをして加熱する。
3 火を止めてそのまま10分おき、余熱でさらに火を通す。
【今月のお酒セレクト:日本酒 奥羽自慢 吾有事 わがうじ 純米大吟醸 さんみ】
山形県鶴岡に構える蔵。「吾有事」の新銘柄を立ち上げて、酒造りを一新。キリッとした酸味とまろやかさのバランスを感じる日本酒だ。「さんみという名前ですが、強い酸味ではなく、食べ物に合わせるのにちょうどいい、心地のよい酸味。玉ねぎだけでなく、野菜料理やフレンチなど、合う料理の幅が広いですね。日本酒の世界はどんどん変わってきているので、料理の合わせ方も広がり、楽しくて仕方ありません」(平野さん)
平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。公式サイトはこちら