「ラデュレ」を皮切りに「オテル・ル・ムーリス」ほか、ミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」と三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」ではシェフパティシエを歴任。世界のグランシェフたちの信頼を得てガストロノミー界の檜舞台に登場し、現在はパリを拠点に、世界各地で活躍中の長江桂子さん。その精確で明瞭なレシピにはプロの間でも定評あり。家庭で楽しむお菓子においては、誰もがつくりやすく、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深く食べ心地は軽やかなレシピを提案している。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめるアイデアも。これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのレシピを丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE,PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: ジェノワーズとクレーム・シャンティ・ヴァニーユを使い、フランス版ショートケーキのフレジェ風に。いちごの断面の美しさが印象的。フランスでは春になると、パティスリーのショーケースにこのケーキが並び、季節の訪れを感じるのだという。クレーム・シャンティ・ヴァニーユは、口当たりも食後感も軽く、フルーツとの相性もよい

ジェノワーズとクレーム・シャンティ・ヴァニーユを使い、フランス版ショートケーキのフレジェ風に。いちごの断面の美しさが印象的。フランスでは春になると、パティスリーのショーケースにこのケーキが並び、季節の訪れを感じるのだという。クレーム・シャンティ・ヴァニーユは、口当たりも食後感も軽く、フルーツとの相性もよい

 今回は4回目で習ったスポンジ生地「ジェノワーズ」と、5回目の「クレーム・シャンティ・ヴァニーユ」を使って、いちごのケーキ「フレジェ」に挑戦してみよう。今回、教えてもらうケーキは、正確には”フレジェ風”。フレジェは本来、カスタードクリームとバターを合わせたクリームを使うが、長江さんは軽めに仕上げたいと、カスタードクリームと泡立てた生クリーム、ゼラチンを合わせたクレーム・シャンティ・ヴァニーユを使う。「クリームがだれずに美しく仕上がりますので、トライしてみてください。泡立てた生クリームだけを使う日本のショートケーキより、コクと風味がプラスされます。フランスと日本のいいとこどりをしたケーキです」

 長江さんがシェフ・パティシエとして働いていた三つ星レストラン「ピエール・ガニエール」でも、いちごの季節になると「フレジェ」をレストランデザートに仕立て、お出ししていたそうだ。「フレジェの表現は毎年変えていました。たとえば、薄く焼いたジェノワーズを小さなロールケーキにし、中にアーモンドのペースト、飴がけしてカリカリにしたナッツを詰めて、温かいバルサミコ風味のいちごのコンポートを添えたり、ジェノワーズにカンパリを加えたシロップを打ち、フルーツのコンポートやアイスクリーム、飴細工を添えて、いちごのクリアなソースをかけたり」

 今回、長江さんが提案する「フレジェ」は、風味は豊かで口あたりもなめらかだが、食べ心地はふわりと軽やか。「本来はバタークリームを使いますが、少々重いので、クレーム・シャンティ・ヴァニーユを私は使います」。クレーム・シャンティ・ヴァニーユとは、カスタードクリームと泡立てた生クリーム、そしてゼラチンを合わせた、口当たりのよい風味豊かなクリームのこと(第5回目の記事を参照。5回目の記事はこちら)。
 
 ちなみに、いちごを使ったものを「フレジェ」と呼ぶが、同じレシピで、いちごを季節のフルーツに置き換えてもOK。桃やぶどう、洋梨、ベリー類などがおすすめだという。「生のパイナップルやキウイは酵素が含まれ、生クリームから水分が出てしまうので避けたほうがよいですね。でも、加熱したもの、缶詰(加熱加工して酵素を不活性化のもの)などであれば大丈夫です」

フレジェの作り方

材料
ジェノワーズ 1台
いちご 1〜2パック
いちごジャム(市販)適量
シロップ* 90g
クレーム・シャンティ・ヴァニラ 200g
生クリーム 200g*
グラニュー糖10〜15g*
*生クリームはグラニュー糖を加え、深めのボウルまたは軽量カップに入れ、ハンドミキサーで7分立てに泡立てる

下準備
シロップ(*90g)を作る

材料(作りやすい分量)
水 60g
グラニュー糖 30g
好みの酒(なくてもよい)
材料すべてを小鍋に入れ、中火にかけて温め、グラニュー糖を溶かす(溶ければいいので、電子レンジでも可)。*蜂蜜やジャムなどを水でのばしたものを用いてもよい。

画像1: フレジェの作り方

型の側面に貼り付けるいちごは高さを揃えて選ぶときれい。ヘタを取り、側面用は縦半分に切っておく。

画像2: フレジェの作り方

セルクルを用意し、側面にケーキフィルムを当てる。

画像3: フレジェの作り方

セルクルがない場合は、ジェノワーズを焼いたケーキ型の底に敷紙を敷き、ベーキングペーパーを帯状に切り、写真のように十字に置く。ケーキフィルムを側面に当てる。ジェノワーズを入れたら、帯状のペーパー4枚の端を持ち上げて取り出す。

画像4: フレジェの作り方

ジェノワーズの高さが半分になるように定規で測り、ケーキを回しながらナイフで軽く切り込みを入れ、1周させる。

画像5: フレジェの作り方

切り込みに沿って、ナイフを動かしながら、半分の高さに切り分ける。

画像6: フレジェの作り方

表面が盛り上がっている場合はその部分を削ぐように切り取り、平らにするとよい。

■組み立て方

画像7: フレジェの作り方

 型に1枚目の生地を入れ、シロップをたっぷり打つ。

画像8: フレジェの作り方

2 いちごジャムを1に薄く塗る。

画像9: フレジェの作り方

2にクレーム・シャンティ・ヴァニラを少量入れてのばす。いちごをのせるので外側から5㎜ほど余白を残す。

画像10: フレジェの作り方

側面用のいちご(縦半分にカットしたもの)の切り口を、ケーキフィルムに貼り付けるように並べる。

画像11: フレジェの作り方

中央にいちごをぎっしりと並べる。

画像12: フレジェの作り方

6 クレーム・シャンティ・ヴァニラ(少量残しておく)を5にのせるように入れ、隙間にもしっかり入るよう、ヘラで軽く押すようにして表面を整える。型ごと持ち上げて落とし、中の空気を抜く。

画像13: フレジェの作り方

2枚目の生地にシロップを打ち、いちごジャムを薄く塗る。塗った面を下にして6にのせ、上から軽く押さえる。まな板などをのせて押さえると力が均一にかかってよい。

画像14: フレジェの作り方

生地の表面にシロップを打ち、残したクレーム・シャンティ・ヴァニラを薄く塗って冷蔵庫で冷やし固める。

画像15: フレジェの作り方

セルクルより一回り小さいボウルに8をのせて、セルクルを下げて外す。

画像16: フレジェの作り方

10 7分立てにした生クリームを,9の上にのせる。クリームをのせたら、あまりいじりすぎないほうが、なめらかできれいに仕上がる。

画像17: フレジェの作り方

11 生クリームをたっぷり塗ったら、いちご、好みでエディブルフラワー、ドライフルーツを飾る。

画像18: フレジェの作り方

クリームをきれいに塗れなくても大丈夫。ヘラで軽くぽんぽんと叩くようにして角を作ってもよい。その角の間にいちごをのせるデコレーションも、可愛いらしい仕上がりに

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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