RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

「クレーム・パティシエール」(菓子職人のクリーム)と呼ばれるカスタードクリーム。これに泡立てた生クリームを加えて、軽快な口当たりにした「クレーム・シャンティ・ヴァニーユ」を作る。だれないようにゼラチンを加えているので、デコレーションに最適
前回は、ふんわり、しっとりのスポンジ生地・ジェノワーズを教わった。この生地はさまざまなお菓子やデザートの土台となるが、生地をよりおいしく味わうために、クリームをはさんだり、添えたりする。
パティシエにとってクリームといえば、まずカスタードクリーム。フランスでは「クレーム・パティシエール(菓子職人のクリーム)」と呼ばれているように、フランス菓子の世界では基本中の基本、大切なクリームだ。「菓子職人は、カスタードクリームを上手に炊けるようになったら一人前」といわれるほど。今回はまず「クレーム・パティシエール」こと、カスタードクリームの炊き方をしっかり教えてもらう。
基本のカスタードクリームに、生クリームやバター、メレンゲなどをプラスすることで、さまざまなお菓子への展開が可能だ。例えば、カスタードクリームに泡立てた生クリームを加えたものを「クレーム・ディプロマット」もしくは「クレーム・レジェール」と呼ぶ。“レジェール”は“軽い”という意味で、まさにふんわりとなめらかな口あたり。(ちなみになぜ“ディプロマ”(外交官)なのかは諸説あれども根拠は不明)。
長江さんは、“カスタードクリーム+泡立てた生クリーム”にゼラチンも加えて保持力を高めた「クレーム・シャンティ・ヴァニーユ」もおすすめという。「軽やかで風味豊かなクリームです。卵と牛乳のやさしい風味に、ヴァニラの香り、なめらかな口当たり。出来立てのおいしさは格別なので、ぜひ作ってみてください」
次回はこの「クレーム・シャンティ・ヴァニーユ」とジェノワーズを用いて、「フレジェ」に挑戦!
カスタードクリーム(クレーム・パティシエール)の作り方

■材料(作りやすい分量)
牛乳 200g
ヴァニラビーンズ 1/5本
グラニュー糖 40g
卵黄 40g
薄力粉 10g
コーンスターチ 10g
■作り方

1 鍋に牛乳を入れる。ヴァニラビーンズを縦に切って種を取り出し、さやと共に牛乳に入れて、沸騰直前まで温める。

2 ボウルに卵黄、グラニュー糖を入れ、もったりするまで泡立て器でしっかり混ぜる。

3 2に、薄力粉とコーンスターチを加えて混ぜる。
*薄力粉とコーンスターチ、どちらかだけでもよい。その場合は20gで。コーンスターチがなければ、片栗粉でもOK。

4 1の牛乳からヴァニラビーンズのさやをとりのぞき、半量を3に加えてよく混ぜ、1の鍋に戻し入れる。中火にかけ、泡立て器で絶えず混ぜながらぷつぷつと沸くまで加熱し、クリームを炊く。

5 ラップを敷いた容器(トレーやバット)に4を移し、表面にもラップをピッタリかけて平らにして、冷蔵庫で急速に冷ます。
*前日に作っておくことも可能。
クレーム・シャンティ・ヴァニーユの作り方

■材料(作りやすい分量)
生クリーム 200g
グラニュー糖 10g
粉ゼラチン 2g*
カスタードクリーム 50g
*ゼラチンは200ブルームを使用。板ゼラチンの場合はたっぷりの氷水に浸けておく。粉ゼラチンは6倍の水を加えて混ぜ、ふやかしておく。
■作り方

1 冷たい生クリームにグラニュー糖を加え、7分立てに泡立てる。

2 カスタードクリームは泡立て器でなめらかになるまで混ぜておく。

3 ふやかしたゼラチンを湯煎で溶かし(電子レンジでもOK)、2のカスタードクリームを大さじ1ほど加えて混ぜ、2に戻し入れる。泡立て器で、均一になるまでよく混ぜる。

4 1の生クリーム1/3量を3に加えて混ぜ、ヘラに持ち替え、残りの生クリームを全部入れて、片手でボウルを回しながら、ゴムベラを中心から外側にすくい上げて落とすように混ぜる。
長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「ARÔME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける
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