ニッポンの「ローカルトレジャー」を探す旅連載。今回は、私的な早春の旅の一幕を番外編としてお届けしたい。訪れたのは富山県、旅の目的はずばり“サウナ”。貸し切りのサウナホテルを基地に、大地とつながるリトリートと手土産にしたい銘菓を手仕事案内人・樺澤貴子がお届けする

TEXT&PHOTOGRAPHS BY TAKAKO KABASAWA

画像: 富山を代表する和菓子の老舗「薄氷本舗 五郎丸屋」。店構えから真摯に和菓子作りを受け継いできた矜持がうかがえる COURTESY OF GOROUMARUYA

富山を代表する和菓子の老舗「薄氷本舗 五郎丸屋」。店構えから真摯に和菓子作りを受け継いできた矜持がうかがえる

COURTESY OF GOROUMARUYA

 富山には、知る人ぞ知る銘菓が揃う。老舗の鉄板から小粋なプチ菓子まで、新幹線で帰路につく直前にJR富山駅で購入できる、センスが薫る手土産4選をお届けする

《BUY》「薄氷本舗 五郎丸屋」
真綿に包まれた、工芸品のごとき銘菓

画像: 箱をあけるとご覧のように真綿に挟み込まれている。食べる前から繊細な味わいへの期待が高まる

箱をあけるとご覧のように真綿に挟み込まれている。食べる前から繊細な味わいへの期待が高まる

 茶の湯の世界で広く愛され、墨客の筆にも度々綴られるのが、宝暦2(1752)年創業で16代にわたり真摯な菓子づくりを受け継ぐ「薄氷本舗 五郎丸屋」である。箱を開けると、まるで繊細な磁器を扱うかのように、ふかふかの真綿が敷き詰められた様子に意表をつかれる。真綿をひらり捲ると、四季の風情をシンプルに意匠化した極薄菓子があらわれる。春には桜の花びらを模った「ひとひら」、初夏には「あやめ」や「蛍」、盛夏には「浴衣」、秋は「いちょう」、冬は「雪うさぎ」など。デザインの愛らしさもさることながら、薄焼きの菓子は口に含むとすうっと溶けるように消えて、和三盆のやわらかな風味がふわりと口の中に残る。富山特産の餅米・新大正米を原料に薄くのばし、阿波産の和三盆を手間暇おしまずに代々伝わる手法によって、一枚ずつ丁寧に刷毛で塗るのだという。

画像: 花びら一片一片を模った春限定の「ひとひら」10枚入り¥1,404(税込)

花びら一片一片を模った春限定の「ひとひら」10枚入り¥1,404(税込)

 この銘菓が誕生したのは、5代目五郎丸屋八左衛門の頃に遡る。「北陸の深い雪がようやく溶けはじめる如月、弥生の早朝。田んぼの水面にうっすらと張った、今にも割れそうな氷の風情を最小限の造形美で表した」。そう教えてくれたのは、16代目当主渡邉克明さんだ。そのフォルムについて、民藝運動の創始者であり日本の工芸の祖とされる柳宗悦は次のように語る。「私はよく友人から越中石動(いするぎ)の銘菓「薄氷」の贈物を受ける。和三盆による味わいもさることながら、私はその箱の蓋を開けることをいつも楽しむ。目が覚め、思いが鎮まるほどの美しい抽象紋が目前に現れるからである」(柳宗悦『抽象の美について』<日本民藝協会>より)。加賀藩主前田公より幕府へも献上された繊細な味わいは、今なお多くの人々の口福を誘う。しっとり、ふわり、こっくり……言葉で形容し難い独特の食感は、珈琲やワインのお供としても楽しめる。

画像: 早春の氷を模したブルーのパッケージが目印

早春の氷を模したブルーのパッケージが目印

住所:富山県小矢部市中央町5-5
電話:0766-67-0039
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《BUY》「月世界本舗」
どこか懐かしく、ハイカラなメレンゲ菓子

画像: 「月世界」は一包に2切れ入り

「月世界」は一包に2切れ入り

 明治30年に創業した月世界本舗。その店名を冠した銘菓「月世界」は、一見すると飾り気のない端正な佇まいだが、仄かな黄色味は暁の空に浮かぶ淡い月影から想起。その風情から「月世界」と名付けられたというロマンティックな物語が秘められている。その製法は、新鮮な鶏卵をベースに和三盆と白双糖を煮詰め、糖蜜と合わせて乾燥し、カットを施した。サクッとした歯ごたえがあるのに、口に運ぶと絡まった糸がほぐれるように、じんわり甘さがひろがる。日本茶はもちろん、紅茶や珈琲など洋の東西を問わずティータイムのパートナーとなる。古典文学の月の物語を感じさせるようなパッケージも大人の手土産に好適だ。

画像: 「月世界」(4個包み入り)¥702(税込)

「月世界」(4個包み入り)¥702(税込)

住所:富山県富山市上本町8-6
電話:076-421-2398
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《BUY》「大野屋」
典雅なパッケージに心躍る高岡ラムネ

画像: 日本の四季を彩る梅や桜、紫陽花、朝顔、撫子、菊など10種類の花々が精緻に形作られた「花尽くし」(国産いちご味)

日本の四季を彩る梅や桜、紫陽花、朝顔、撫子、菊など10種類の花々が精緻に形作られた「花尽くし」(国産いちご味)

 天保9(1838)年、高岡で創業した老舗菓子店「大野屋」。長きにわたる歴史の中で使い込まれてきた約1000種類以上に及ぶ和菓子用の木型を、何かに生かしたいと発案されたのが「高岡ラムネ」である。精緻な造形や大胆な図案の面白さを、日頃は和菓子に馴染みのない若い人にも楽しんでもらいたいという思いが込められているそうだ。富山県産コシヒカリをベースに、国産生姜や地元産の果物で風味を彩った上品な味わいは、駄菓子のラムネとは一線を画す。高岡文化の象徴である「御車山」は、高岡・国吉りんごを使用。「貝尽くし」は国産柚子味、「宝尽くし」は国産しょうが味など。職人の手仕事が一粒一粒にいきとどいた伝統文様のラムネは、遊び心を誘う大人のプチギフトとしてレコメンドしたい。

画像: 左から「御車山」「花尽くし」「貝尽くし」各¥540(税込)

左から「御車山」「花尽くし」「貝尽くし」各¥540(税込)

住所:富山県高岡市木舟町12
電話:0766-25-0215
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《BUY》「志乃原」
瑞々しいビジューのような琥珀糖

画像: 黄色はマンゴー、ピンクはクランベリー&ラズベリー&カシス

黄色はマンゴー、ピンクはクランベリー&ラズベリー&カシス

 天保3(1832)年にまで創業を遡り、前田利家の長男である前田利長(高岡城主)の海洋藩士として、広く海産物問屋を営んでいた旗本寺井家を祖にもつ「志乃原」。3代目の創案となる代表銘菓「江出の月」を礎に、現7代目まで真摯に和菓子と向き合ってきた老舗として知られる。ネオンカラーを効かせた現代的なパッケージに惹かれて手にしたのが紹介の琥珀糖「moco妹子〜こはく〜」である。商品のインスピレーションは、万葉の時代へとワープする。意中の女性を「我妹子(わがもこ)」と呼び、甘く切ない和歌を詠み交わしていた歴史の浪漫を、異国のときめきを誘うようなマンゴー風味と、甘酸っぱい胸の内を代弁するような3種類のベリーで表現。擦りガラスのような黄色とピンクの美しい色彩が正方形のボックスの中で、甘やかな市松紋様を描く。ほのかなフルーツフレーバーは白ワインのパートナーとしても楽しめそうだ。

画像: 「moco妹子〜こはく〜」¥712(税込)

「moco妹子〜こはく〜」¥712(税込)

住所:富山県高岡市城東1-9-28
電話:0766-22-1020
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画像: 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。

樺澤貴子(かばさわ・たかこ)
クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。

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