「ラデュレ」を皮切りに「オテル・ル・ムーリス」ほか、ミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」と三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」ではシェフパティシエを歴任。世界のグランシェフたちの信頼を得てガストロノミー界の檜舞台に登場し、現在はパリを拠点に、世界各地で活躍中の長江桂子さん。その精確で明瞭なレシピにはプロの間でも定評あり。家庭で楽しむお菓子においては、誰もがつくりやすく、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深く食べ心地は軽やかなレシピを提案している。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめるアイデアも。これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのレシピを丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: 外側はカリカリ、中はふんわりと焼き上がったシュークリーム。「裏まできちんと焼き色がついているのが、ベストな焼き上がりです。焼きが足りないと底がしぼんでしまいます」

外側はカリカリ、中はふんわりと焼き上がったシュークリーム。「裏まできちんと焼き色がついているのが、ベストな焼き上がりです。焼きが足りないと底がしぼんでしまいます」

 日本人が大好きな洋菓子のひとつ、シュークリーム。日本には幕末から明治にかけて、フランスから伝わった。「シュー」とは、フランス語で「キャベツ」の意味。焼き上がりのふっくらした形がキャベツに似ていることから命名されたと言われる。

 フランスには、イタリアのメディチ家からアンリ2世に輿入れしたカトリーヌ・ド・メディシスが連れてきた菓子職人によって16世紀中頃、伝えられた。その後、シューの揚げ菓子となり、19世紀に名パティシエのジャン・アヴィスが現在のシュー生地を完成させた。後に、その弟子の偉大な料理人アントナン・カレームが、現在のエクレアなどのスタイルを考案したとされる。

 シュー生地を使ったお菓子も時代を経て進化させてきたフランス。だが、いまのフランスでは、日本のシュークリームのようなお菓子はみかけないと長江さんは言う。「シュー生地を使ったものでは、エクレアが主流です」。

 まず、シュー生地を作ってみよう。失敗しないコツを細かく説明しているので、それぞれのプロセスを丁寧に、数回は作ってみて。工程はシンプルなので初心者でも大丈夫。

 今回は、シュー菓子の基本形として、日本スタイルのシュークリームをご紹介する。「中に詰めるのはカスタードクリームだけでもよいのですが、『クレーム・レジェール』*がおすすめです。カスタードクリームに、クレーム・シャンティ(泡立てた生クリーム)を加えているので、ふんわりとなめらかな口当たりに。カスタードクリームだけのものより、軽い仕上がりになります」。
*「クレーム・ディプロマット」とも呼ばれる。「レジェール」とは「軽い」と言う意味。

画像1: パリのパティシエ
長江桂子さんにお菓子を習う
Vol.10 シュークリーム

材料(8~10個分)材料

■シュー生地
水 50g
牛乳 50g
無塩バター 45g
塩 2g
グラニュー糖 2g
薄力粉 60g
卵 100g(2個)

■クレーム・レジェール
カスタードクリーム 200g
生クリーム 50g

■下準備
・薄力粉は振るう。
・卵はボウルに入れて溶きほぐす。
・天板にベーキングシートを敷く。
・カスタードクリームを作り、冷蔵庫に。

作り方 

画像1: 作り方

1 鍋に水、牛乳、無塩バター、塩、グラニュー糖を入れて温める。混ぜながらバターを溶かし、沸騰したら火からおろす。シュー生地は力をしっかり入れてまとめていかないといけないので、混ぜる道具は木ベラがおすすめ。

画像2: 作り方

2 薄力粉を一気に加えて、木べらで手早くかき混ぜる。水分を薄力粉に一気に吸わせるのがポイント。ダマができないように、薄力粉を加えたらすぐに力強く混ぜる。

画像3: 作り方

3 粉気がなくなるまで混ぜたら、再び火にかけ(中火から強火)、木ベラで鍋底をこそげるように力強く混ぜる。

画像4: 作り方

4 加熱しながら水分を飛ばし、生地が一つにまとまって鍋肌から離れるようになったら火からおろす。

画像5: 作り方

5 ボウルに移して、粗熱を取るために軽く練りながら温度を下げる。表面にツヤが出てくる。卵は60℃くらいで固まるので、ここで人肌より少し熱いくらい(45〜50℃)までに下げておく。

画像6: 作り方

6 5に溶いた卵を3〜4回に分けて加え、加える度に生地と卵をしっかり混ぜる。

画像7: 作り方

7 ヘラで生地をすくうと最初にボタっと落ち、後を追うようにリボン状に落ちていくような状態に整える。生地はツヤがあり、なめらかな状態。加える卵の量は、生地のかたさを確認しながら調整する。

画像8: 作り方

8 丸口金をつけた絞り袋に7の生地を入れ、直径約4cmになるように、天板に間を空けて絞る。生地の表面に溶き卵(分量外)を塗る。生地を均一に焼き上げるため、フォークなどで表面を軽く押さえて生地の凹凸をならす。この状態で冷凍可能。冷凍する場合は、ベーキングシートごと冷凍庫へ。固まったら密閉容器に入れて保存する。

画像9: 作り方

9 190℃に熱したオーブンで20分焼き、180℃に下げて10分焼く。焼成中にオーブンの扉は開けないこと。焼成途中で開けると、膨らんでいたシュー生地がしぼんでしまう。

画像10: 作り方

10 クレーム・レジェールを作る。カスタードクリームは冷蔵庫から出し、泡立て器で混ぜてなめらかにする。カスタードクリームは前日に作っておいてもOK。生クリームは7分立てにする。

画像11: 作り方

11 カスタードクリームに泡立てた生クリーム1/3量を加え、泡立て器でなめらかになるまで混ぜ合わせる。

画像12: 作り方

12 残りのクリームを加え、ヘラに持ち替えて、全体をよく混ぜ合わせる。

画像13: 作り方

13 シューの底の真ん中にペティナイフなどの先を入れて回し、穴を開けておく。

画像14: 作り方

14 丸口金をつけた絞り袋に12のクリーム・レジェールを入れ、13に絞り入れる。このサイズには大きめの6番の口金を使用。小さいとクリームを押しつぶしてしまうので、大きめがよい。シュー皮を持っている手のひらで、クリームがパンパンに入って膨らんできたのを感じればOK。

画像15: 作り方

15 穴からクリームが出てきたら、クリームが満杯に入った証拠。底にあふれたクリームは、クリームの入ったボウルの縁に当てて取る。除いたクリームは本体のクリームに加えて使用。「クリームを絞り入れたらすぐに召し上がる方もいますが、私は皮とクリームを馴染ませるために、一旦、冷蔵庫で休ませます」

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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