「ラデュレ」を皮切りに「オテル・ル・ムーリス」ほか、ミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」と三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」ではシェフパティシエを歴任。世界のグランシェフたちの信頼を勝ち得てガストロノミー界の檜舞台に登場し、現在はパリを拠点に、世界各地で活躍中の長江桂子さん。その精確で明瞭なレシピはプロも絶賛。家庭で楽しむお菓子においては、誰もがつくりやすく、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深く食べ心地は軽やかなレシピを提案している。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめるアイデアも。これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのレシピを丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: シュー生地をマスターし、2種類のエクレアに挑戦!左はチョコレートをコーティングし、クレーム・レジェールを詰めたもの。右は生地にナッツを散らして焼きあげ、クレーム・カフェ(コーヒークリーム)を詰め、粉糖をかけたもの。生地はしっかり焼き色がつくまで焼き上げたほうがおいしい

シュー生地をマスターし、2種類のエクレアに挑戦!左はチョコレートをコーティングし、クレーム・レジェールを詰めたもの。右は生地にナッツを散らして焼きあげ、クレーム・カフェ(コーヒークリーム)を詰め、粉糖をかけたもの。生地はしっかり焼き色がつくまで焼き上げたほうがおいしい

「フランスでポピュラーなお菓子といえばエクレアです。エクレアは、どのお菓子屋さんにも必ず並んでいます。日本のショートケーキやシュークリームのような存在ですね」。

 前回作り方をご紹介したシュー生地の形を変えれば、エクレアになる。「作り方は単純ですが、実はとても奥の深い生地です。外側はカリッと、中はしっとりさせるためには、しっかりと焼き上げるのがコツです。しているのが理想ですが、そのように仕上げるのは案外難しいですね」。ポイントを細かく説明しているので、前回のシュー生地の作り方を参照しながら作ってみよう。

 エクレアは、コーティングと中に詰めるクリームによってさまざまなバリーションが生まれるので、パティシエの個性が表現されるお菓子でもある。「通常はフォンダンと呼ばれる糖衣にフレーバーをつけたもので表面を覆いますが、家庭で作るのはなかなか難しいですね」。クリームはクレーム・レジェールをはじめ、カスタードクリームや生クリーム、風味付けにコーヒーやリキュールを加えたり、フルーツをはさんだり。

 今回は、チョコレートコーティングの方法と、コーヒークリームを詰めたエクレアの2種類をご紹介。「チョコレートとコーヒーのエクレアはフランスでは定番の味。チョコレートコーティングには繊細な技術が必要なので、市販のお菓子のようにきれいに仕上げるのは難しいのですが、おうちでいただくお菓子ですから、おいしさ優先で楽しんでください」。

エクレア生地の作り方

画像1: エクレア生地の作り方

■材料(約6~8個分)
水 50g
牛乳 50g
無塩バター 45g
塩 2g
グラニュー糖 2g
薄力粉 60g
卵 100g(2個)

■下準備

画像2: エクレア生地の作り方

・ベーキングシートに鉛筆で10㎝幅に2列、線を引く(写真上参照)。
・ベーキングシートを裏返し、天板にのせる。

■作り方

1〜7 Vol.10の「シュークリーム」編のシュー生地と同様の手順で生地を作る。

エクレア生地の作り方はこちら(Vol.10「シュークリーム」編)

画像3: エクレア生地の作り方

8 金をつけた絞り袋に7の生地を入れ、10㎝幅の線の間に細長く絞り出す。口金は星形でも丸型でもOK。写真のように、絞り袋を少し浮かせるときれいに絞れるので、もう一方の手の人差し指を口金に当てて、口金を浮かせるとよい。

画像4: エクレア生地の作り方

9 生地の表面に溶き卵(分量外)を塗る。凹凸があれば、塗りながら刷毛を左右に動かして表面を平らにする。

画像5: エクレア生地の作り方

10 9の生地の半分に砕いたヘーゼルナッツとアーモンド(各材料外)をのせる。生地はこの状態で冷凍可能。冷凍する場合は、ベーキングシートごと冷凍庫へ。固まったら密閉容器に入れて保存する。

画像6: エクレア生地の作り方

11 190℃のオーブンで20分焼き、180℃に下げてさらに10分焼く。焼成中はオーブンの扉を開けないこと。焼成途中で開けると、膨らんでいた生地がしぼんでしまう。絞り袋に残った生地も一緒に焼いてしまおう。

クレーム・カフェのエクレアを作る

画像1: クレーム・カフェのエクレアを作る

■材料(エクレア6〜8個分)
クレーム・カフェ
 ・インスタントコーヒー 2g
 ・お湯 2g

カスタードクリーム 100g

カスタードクリームの作り方はこちら(Vol.5「絶品カスタードクリーム」編)

■作り方

画像2: クレーム・カフェのエクレアを作る

1クレーム・カフェを作る。インスタントコーヒーとお湯を合わせてよく溶く。カスタードクリームは冷蔵庫から出し、泡立て器でなめらかになるまで混ぜる。

画像3: クレーム・カフェのエクレアを作る

2 カスタードクリームに1のコーヒーを加えてよく混ぜる。

画像4: クレーム・カフェのエクレアを作る

3 ナッツ類をのせた生地の裏に、ペティナイフの先を入れて回し、小さな穴を3カ所開ける。

画像5: クレーム・カフェのエクレアを作る

4 丸口金をつけた絞り袋に2のクレーム・カフェを入れ、3の穴にクリームを詰める。口金は大きめの6番を使用。小さいとクリームを押しつぶしてしまうので、大きめがよい。他の穴からクリームがはみ出してきたら、クリームが詰まった証拠。底にあふれたクリームは、クリームの入ったボウルの縁に当てて取る。

チョコレートコーティングのエクレアを作る

画像1: チョコレートコーティングのエクレアを作る

■材料(エクレア6~8個分)
チョコレートコーティング
  ・ミルクもしくはダークチョコレート(好みで) 100g
  ・植物油(太白ごま油、グレープシードオイルなど香りの少ないもの) 25g

クレーム・レジェール 1個につき25~30g

クレーム・レジェールの作り方はこちら(Vol.10「シュークリーム」編後半)

■作り方

画像2: チョコレートコーティングのエクレアを作る

1 チョコレートコーティングを作る。チョコレートを湯煎して溶かす(電子レンジの弱パワーで溶かしてもよい)。植物油を加えて、ハンドブレンダーでよく混ぜ、きちんと乳化させる。

画像3: チョコレートコーティングのエクレアを作る

2 クレーム・レジェールは、丸口金をつけた絞り袋に入れて、生地にクリームを詰める。(詳細は上記「クレーム・カフェのエクレアを作る」作り方4を参照)

画像4: チョコレートコーティングのエクレアを作る

3 1をエクレアの大きさより大きな器に移し、2をひっくり返して浸す。

画像5: チョコレートコーティングのエクレアを作る

4 3を持ち上げ、静かに上下に動かして余分なチョコレートを落とし、最後は下の部分のチョコレートを指先で落とす。

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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