TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
四条大宮「総造」

鴨川の夕景写真をイメージソースに創り上げられたデセール
「総造(そうぞう)」はフォトグラファーのJaz(ジャス)さんとパティシエ・畑谷実咲さんによるユニット名であり、店名だ。
コンセプトは「食べられる写真展」。フォトグラファーJazさんが撮った風景写真からインスピレーションを得てパティシエ・畑谷さんがデザートに仕立て、提供していく前代未聞のスタイルだ。

店舗があるのはクリエイティブ複合施設「sōma」1F奥。左はフォトグラファーであり現在はSNSマーケティングの会社代表のJazさん、右はパティシエの畑谷実咲さん
二人の出会いは2015年。ニュージーランドで生まれ育ったJazさんが19歳で京都に移り住み、初めてできた友人が畑谷さんだったそう。
その後、畑谷さんは、製菓専門学校を卒業し、南青山「アングラン」で、当時シェフパティシエを務めていた昆布智成さん(現在は福井の昆布屋孫兵衛を継承し、17代目当主に)の元で修行を行っていた。その頃、Jazさんはフォトグラファーとなり、料理写真を多く撮っていたという。そんななか、自分の撮った風景写真が「おいしそう」と感じるようになり、畑谷さんに「私の写真を食べられるようにしてくれへん?」と、打診。最初は「?」となった畑谷さんだったが、話を聞くほどに「なにそれ、すごくおもしろそう!」と、興味が沸き、2022年に「総造」を結成。2022年は京都で1回、2023年は東京で1回ポップアップイベントを行った後、2025年は7ヶ月、京都で間借り営業を行い、11月14日、ついに実店舗がオープンした。

12月の写真3枚。1枚目は北海道の朝の風景
店では月ごとに3つの風景写真と3つのデセールが楽しめる。撮影場所は日本もあれば、海外もあり、12月は、北海道と京都で撮影した冬の始まりを彷彿させる3枚が選ばれている。
デセールのメニュー表はなく、カウンターには3枚の写真と写真ごとに素材名を明記した薄紙があるのみ。
例えば、京都の鴨川の写真には、「紅みかん、カルダモン、生姜」と書かれた紙が添えられている。

カウンター9席のみ。デセールができあがるまでの行程を見るのも楽しい
「今、大阪に住んでいて、京都に住んでいた時はあんなに毎日見ていた鴨川が見られなくなって。日常だったものが日常じゃなくなり、思い出の一部になっていく。空気がツーンと冷たい冬の京都ですが、これから夜になってさらに冷え込む気配の中で、赤く染まる山だけがほんのりあたたかく見えます」と、Jazさん。
畑谷さんは、写真から受ける印象だけでなく、Jazさんがその写真を撮った時の情景までもじっくりヒアリングし、デセールを創り上げていく。
「写真を見て、色で言うとオレンジだなと感じました。夏に和歌山の善兵衛農園を訪れた時に、冬になったらこちらの紅みかんを使いたいと思っていて。紅みかんを薄皮をつけたままバーナーで炙って使っています。見た目の暖かさだけでなく、物理的にも体を温まるように、ソースやジュレには、生姜を使っています」と、畑谷さん。

「紅みかん、カルダモン、生姜」¥2,600、「煎茶×山椒」¥500
写真右に見える山々は和紅茶とカルダモンのアイスクリーム、鴨川の河原や建物の連なりは、紅みかんのほか、ショコラのブリュレクリームやベルガモットと生姜のジュレ、カルダモンのジュレ、クレームダンジュ、紅みかんとカルダモンのブランマンジェなど、さまざまなパーツを組み合わせて表現。そして、中央のマンゴーと生姜のソースは、夕焼けが川面に映った鴨川をイメージ。一口食べるごとに違った味と食感が楽しめる。

ポストカードは購入もできる。¥250
写真を眺めながら、デセールをいただけば、味だけでなく、撮影された時の情景についても想像が膨らむ。これまでにないアートと食の融合体験が味わえる。
「総造(そうぞう)」
住所:京都市中京区壬生馬場町37-3sōma1F
営業時間:12:00〜17:30LO
定休日:月曜、火曜、ほか不定休あり
TEL. なし
公式インスタグラムはこちら
※予約はInstagramのDMからのみ

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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