RECEPI BY TOMOKO NAGAO, PHOTOGRAPHS BY TAKAKO HIROSE, TEXT BY MIKA KITAMURA

カリッ、とろり。
一皿で、グラタンとシチューを同時に楽しめる
寒さがぐんと深まってきた慌ただしい年の瀬。料理する時間が惜しいほどの忙しさのなか、たっぷり作っておいたスープがあれば、次の日も機嫌よく乗り切れる。今回は長尾流グラタン風シチューをご紹介。「シチューにチーズとパン粉を散らしてグラタンのように焼き上げます。焼き目のカリッとした部分をシチューと一緒にまず楽しみ、次にとろりとした熱々のシチューをいただきます。このような料理はもともとないので、私は勝手に『グラタンシチュー』と呼んでいます」と長尾さん。
今回は大きな耐熱容器で作ったが、一人分ずつ焼いてもよいし、翌日、しっかり焼き直せば正真正銘のグラタンになる。一度作って二度おいしい、ありがたいスープ。しかも、鍋でコトコト煮る場合はキッチンから離れられないが、オーブンに入れてしまえば、その間はお風呂に入ることだって可能だ。オーブン料理は敷居が高いと思われがちだが、オーブンでスープを作る方法は便利なので覚えておきたい。
「ゆでたほうれん草をのせるのがポイント。根菜類に葉野菜を加えると、食感や風味の幅が広がります」。今回は鶏肉、玉ねぎ、じゃがいもの組み合わせだが、鶏肉を豚肉(生姜焼き用を半分に切る)に、じゃがいもをかぶや里いもに、玉ねぎを長ねぎに変えれば、目先が変わるので毎週登場させても飽きない。もうひとつのポイントは、ホワイトソースを作らず、バターと小麦粉を合わせて練った「ブールマニエ」を使うこと。フランス語で「ブール」は「バター」、「マニエ」は「練る」という意味。料理の仕上げに溶いて加えるだけで、簡単にこくととろみをプラスできる。
ご馳走感のある一品なので、シンプルなサラダとお気に入りのパンを添えれば、週末に友人を招いてのメインディッシュにもぴったりだ。
<材料4〜5人分>
鶏もも肉 小さめ2枚/ひと口大に切り、塩、胡椒をする
玉ねぎ 中1個/皮をむき、ひと口大に切る
じゃがいも(メイクイン)3個/皮をむき、ひと口大に切り、水にさらす
ほうれん草 1束
パセリ 1本/粗みじん切り
にんにく 1片/薄切り
白ワイン 100ml
ハードチーズ(パルミジャーノ、グラナパダーノなど)約50g
牛乳 200ml
ブールマニエ
薄力粉 15g
無塩バター 15g
塩 少々
オリーブオイル 大さじ1
パン粉 適量

鍋を温めてオリーブオイルを入れ、弱めの中火にし、玉ねぎとにんにくを炒め、軽く塩を振る。油が全体にまわったら鶏肉を加えて炒め合わせる。

鶏肉の表面が白くなったら、じゃがいもを加える。軽く混ぜ合わせ、水と白ワインを同量ずつ混ぜたものを注ぎ、蓋をして火を弱めて15分ほど煮込む。

材料を煮る間に、ブールマニエを作る。室温に戻したバターをボウルに入れ、ふるった薄力粉を加えてよく混ぜ合わせる。

材料に火が通ったらパセリを加え、弱火にして牛乳を加える。

ブールマニエのボウルに煮汁を少し入れてよく溶いてから鍋に加える。スプーンで静かに混ぜてなじませ、2〜3分煮て軽くとろみがついたら火を止める。

オーブンを210℃に予熱する。別鍋にお湯を沸かして、煮立ったらオリーブオイル小さじ1/2(分量外)を加え、ほうれん草を30秒ほどゆでる。冷水に取り、粗熱を取り、水気を絞って4〜5cm長さに切り分ける。

耐熱容器に薄くオリーブオイルを塗り(分量外)、鍋の中身を移す。その上にほうれん草をのせ、チーズを全面にすりおろし、パン粉をたっぷり振る。

オーブンで30分ほど焼いて、濃いめの焼き色がついたら出来上がり。
甘くてスパイシーな柿のコンポート

クリーミーな一品に添えるのは柿のコンポート。口直しにもなるし、アペリティフにしても。柿は皮をむいてへたを取り、放射状に12等分する。鍋にメープルシロップと蜂蜜各大さじ3、白ワイン200mlを入れ、煮立てたところに柿を入れ、火を止めて蓋をし、そのまま冷ます。器に盛って軽く黒こしょうを挽きかける。柿はほどよく熟したものを使うのがベストだが、硬めなら、シロップに入れてから4〜5分煮て、火を止めて。シロップは多めに作って炭酸で割っても。
休日の昼下がりに、柿のコンポートとオレンジワインで始め、グラタンシチューが焼き上がるのを待つのもいいし、食後にチーズと一緒に、もしくはコーヒーとスイーツに添えてもいい。小さいけれど万能な一品。

長尾智子
フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/) も好評。
公式サイトはこちら
公式インスタグラムはこちら
▼あわせて読みたいおすすめ記事







