BY MASANOBU MATSUMOTO
日本に、欧米の宝石職人とはまた違う、優れた作品を生み出すジュエリー職人がいるのをご存じだろうか。その創作活動を後押しすべく、昨年の秋、宝飾史研究家・山口 遼さんは、5人の名工に声を掛け、職人グループ「五人の会—ファイブ・ヴァーチュオーシ—」を発足した。メンバーは、首藤 治さん、塩島敏彦さん、秋場けい子さん、長井 豊さん、村松 司さん。彼らの存在を広く伝え、ジュエリー愛好家たちにその優れた作品を楽しんでもらえる場をつくることが、その狙いであった。
そして、発足から半年を経て、3月7日、8日の2日間、「五人の会」の初エキシビションが開かれる。会場は、東京のウエダジュエラー 帝国ホテル店。5人の作品、あわせて100点以上が並ぶ予定だ。
首藤 治さんは、国が認めた「卓越した技能者(現代の名工)」表彰者であり、名実ともに日本のトップクラスの技術を持つジュエリー職人。とりわけパヴェ(ダイヤモンドの敷き詰め)の美しさには目をみはるものがあり、日本の四季、動植物をモチーフにしながら、繊細かつ優美な作品をつくり上げる。
![画像: 首藤 治さんの 《ハチドリのブローチ》¥3,640,000](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2020/02/13/19e3c2eed9d537e4dcf1d43b9307bdcc21b6f299_large.jpg#lz:xlarge)
首藤 治さんの 《ハチドリのブローチ》¥3,640,000
塩島敏彦さんは、“ピクウェ”という技法を用いて、表情豊かなジュエリーを生み出す。山口さんの解説によれば、ピクウェとは元来、象牙やべっ甲などの表面に、金やプラチナのパーツを押し込んで装飾を施す象嵌の一種。フランスのルイ14世時代、家具の装飾のために生まれた技術で、その後、廃れた“幻の技術”でもあったという。それを現代に復活させ、技術を再確立させたのが塩島さん。ヨーロッパで忘れられた幻の技術と日本の美意識を融合したジュエリーづくりに日々、挑んでいる。
![画像: 塩島敏彦さんの 《シャム猫とネズミ》¥1,300,000](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2020/02/13/b4a7001bec6845c524b573dfac15a4e2900c2e6d_large.jpg#lz:xlarge)
塩島敏彦さんの 《シャム猫とネズミ》¥1,300,000
秋場けい子さんは、これまで他社のジュエリー商品を下請けで制作してきた作家で、自身の名前で作品を発表するのは、この展示会が初めて。発表するのは、ソフトワックス(温めたワックスを少しずつ垂らしながらデザインする方法)を使用し、自然界にある風景を繊細に描き出した作品。ワックスにありがちな冷たい印象はほとんどなく、秋場さんらしいたおやかな感性が光る。
![画像: 秋場けい子さんの 《カニのブローチ》¥280,000](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2020/02/13/67e1bc846d8451bdcd90c3172bbd10d387a30ed3_large.jpg#lz:xlarge)
秋場けい子さんの 《カニのブローチ》¥280,000