BY KYOKO SEKINE
「パーク ハイアット 東京」の開業は1994年7月9日。23年以上が経過しているにもかかわらず、そのデザインも趣も古びることなく、色褪せず、今なお美しい憧れのホテルとして都会的なたたずまいを保っている。90年代には外資系の"東京新御三家"などと呼ばれたが、それももう昔。時がこれほど過ぎ去っても、こうして抜きんでた人気を誇るホテルのすごさを改めて追ってみた。
設計は丹下健三氏、インテリアはジョン・モーフォード氏、そしてオーナーは東京ガス都市開発という、なるほど、いろんな意味で理想的で完璧なコラボレーションで始まったこのホテル。聞けばオーナーもインテリア担当の氏も、いまだにこのホテルを孫子(まごこ)のように愛してやまず、かわいがりようも半端ではないという。彼らがつねに厳しい目を光らせ、大切にしているとあらば、現状もさもありなん。メンテナンスにもきちんと対応しているに違いない。そうでなければ、日常の掃除だけではこうして輝き続けていられないのがホテルなのだ。
かつて世界中で大ヒットしたソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』は、まさにこのホテルを世界にデビューさせ、ワールドワイドに注目を集めるきっかけとなった。今なお多くのセレブに慕われ、あまたのホテルファンが競うように宿泊する幸せなホテル、それが「パーク ハイアット 東京」なのだ。
このグレードのホテルともなると、最も料金の安いスタートクラスの部屋でも充分にラグジュアリーだが、中でもあまり知られていない「トーキョー スイート」をご紹介しよう。2007年3月18日。天空の50階に、220㎡の特別な部屋としてこの客室が誕生した。インテリアデザインはホテル同様、気鋭のジョン・モーフォード氏。客室内には、ホテルのアイコンカラーである深いグリーンの大理石が、大がかりなバスタブにまで敷き詰められている。四季を表現した越前谷嘉高氏の大型絵画「Seasons」の4点が色彩のアクセントとして高級感を演出。一方で、結城美栄子氏によるマスクの陶芸作品が、パークらしく、また大人のスイートらしいムードを醸し出している。
広さも、グランドピアノが置かれたリビングルームは75㎡、寝室は約50㎡、さらにバスルームが45㎡という贅沢三昧のスイートなのだ。そのそのバスルームには巨大な浴槽のほか、サウナ、レインシャワー付きシャワーブース、2カ所の独立シンク、大型のクローゼットを備えたドレッシングルームも設置されている。室内のライブラリィ書棚には、なんと約1000冊もの書籍が置かれ、その選書はジョン・モーフォード自身というから、やっぱり、そのこだわりは半端ではない。「トーキョー スイート」は、まさにこの特別なホテルのアイコンとして、パワフルな東京の贅を表現した客室なのだろう。
パーク ハイアット 東京(PARK HYATT TOKYO)
住所:東京都新宿区西新宿3-7-1-2
予約電話:0120-448-558(フリーダイヤル)
客室:全177室
料金:¥700,000~
(トーキョー スイート1泊室料。消費税・サービス料別)
※日によって料金が異なるため、要問合わせ
お問い合せ:03(5322)1234(代表)
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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