BY KYOKO SEKINE
東京・日本橋には、江戸から脈々と伝わる文化や伝統が色濃く残っている。世代交代をしながら伝統を守り続ける老舗はもちろん、祭りごと、気風のいい江戸っ子気質にもしばしば出会う街だ。江戸の呉服問屋「越後屋」も、現在は日本橋の橋の目の前で「三越」の名を掲げ、その歴史と変わらぬ重厚感を披露している。刃物専門店、鰹節問屋、呉服屋など、かつて水運都市として江戸幕府とともに始まった城下町は、今も東京の中心地として存在感を誇るエリアだ。そんな日本橋の一等地に、2018年9月13日、日本橋の魅力を詰め込んで「三井ガーデンホテル日本橋プレミア」が開業した。
"プレミア"という名を冠して他の同名ホテルとの違いを明確にした理由は、館内に入れば誰もが感じることだろう。日本橋という歴史ある土地柄に見合うインテリアを備え、1階から客室に至るまで、かつて「水」で栄えた日本橋にちなみ、漆や伝統素材を用いた「水」がテーマのアートが随所に飾られている。
三井不動産は、この「三井ガーデンホテル日本橋プレミア」を、多くのパートナーたちと取り組む大がかりな街づくり、「日本橋再生計画」の一環と位置づけている。そして五街道の起点・結節点である日本橋という土地柄に敬意を払い、物心両面において“つなぐ”というキーワードを主要コンセプトに掲げた。
たとえば、人と人、街とホテル、日本橋と世界、アートとアートなど、このホテルから広い視野で多彩なつながりを結び、さまざまな情報を発信して、世界と日本橋をもつなげていきたいという。さらに1階エントランスには、日本橋エリアのアクティビティと観光客をつなぐポイントとして、「日本橋インフォメーションセンター」とコラボレーションしたカウンターが設けられた。着物を着た案内スタッフが常駐し、体験コンテンツまで含めた日本橋の観光情報を濃やかに提供するという。もちろん、多言語対応も可能。時には外国人女性スタッフの着物姿にも出会える。
ホテルの総客室数は264室、最大収容人数は538人。日本橋地区では規模の大きなホテルである。1階からエレベーターで9階に上がれば、そこにはスペースの大きなロビーが広がる。右手のガラス越しにあるのが中庭(コート)だ。「日本の四季を楽しんだ江戸っ子の精神を受け継ぐ」という植栽は、季節ごとに鉢植えの樹木が変えられる。一方、同じロビー階には加賀料理の老舗料亭「日本橋浅田」が店を構え、家紋入りの暖簾が顧客を誘う。朝食はブッフェスタイルながら、150年の歴史ある加賀料理の数々が楽しめる。「浅田」では初の挑戦となるバー「松(MATSU)」も誕生し、外のテラス席も完備するオーセンティックでしゃれた空間を提供している。
ホテルのコンセプトを一心に集めるこだわりの客室があるのはロビーより上の最上15階までで、20~55.9平方メートルまでの9タイプが揃う。客室内には、大人シックなグレーや深紫、今紫など、落ち着きのある日本的な色を使用。ベッドボードには江戸切子や日本橋川の流れを描いたアートが飾られ、ロフテーと共同開発したオリジナルの快眠枕が置かれている。洗面用のキャビネットも信楽焼のオリジナルだという。プレミア感に対するこだわりは館内に留まらず、こうして客室内の細部にまで及んでいる。
アートに囲まれた静謐な客室では思わず都心にいることを忘れてしまうが、ここは日本橋。窓に映る都心の情景とともに、大人のステイが満喫できるホテルの誕生である。
三井ガーデンホテル日本橋プレミア(mitsui garden hotel Nihonbashi Premier)
住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4
電話: 03(3270)1131
客室:全264室
料金:¥19,300~(1泊1室2名の室料。消費税・宿泊税込)
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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