西部開拓時代の町並みが残るリビングストンは、自然豊かなイエローストーン国立公園の玄関口だ。そして作家や俳優らセレブリティーが暮らし、居心地のよいレストランや個性的な書店が軒を連ねる“文学の町”でもある

BY NATALIE STOREY, PHOTOGRAPHS BY LYNN DONALDSON, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)

 モンタナ州南西部、クレイジー山脈とアブサロカ山脈の2つの険しい山脈に挟まれたイエローストーン川沿いに、リビングストンという町がある。1882年に制定され、かつて鉄道産業で栄えたこの町は、典型的な“オールド・ウェスト”(西部開拓時代)の雰囲気が依然として残っている。しかし近年、7,000人しかいない町の人口に対して、牧場の労働者だけでなく、芸術家と文筆家が占める割合が不釣り合いなほど多い。女優のマーゴット・キダーや作家のジム・ハリスンは、かつてリビングストンに暮らしていたし、作家のトーマス・マクゲインと俳優のジェフ・ブリッジスは、現在もこの付近に住んでいる。春には時速60マイルの突風が吹くこともあり、冬の寒さは厳しいが、リビングストンにはあふれんばかりの自然環境がある。町のメインストリートに建ち並ぶ、19世紀に建てられた低層の建物の先には、南の地平線上にそびえ立つリビングストン山の息を呑むような眺めが楽しめる。

 イエローストーン国立公園まで車でたった1時間なので、リビングストンはハイカーにとって最適なベースキャンプであり、町の魚釣りのガイドは、イエローストーン川のすべてのカーブを知り尽くそうと心掛けている。しかし、町には多くのギャラリーやブティックがあり、そこで見られる野生味あふれる多種多様なアート作品の中でも、国立公園の山々や小川や森は重要な役割を果たしているし、人気のレストラン、”オールド・ウェスト”の建築、そして在庫が豊富で魅力的な3軒の書店もあることを考えれば、観光客がリビングストンの市街地から出ずに過ごすことにしたとしても仕方がないだろう。

<STAY>

「マレー・ホテル」
イエローストーン国立公園を訪れる観光客を迎えるため、ノーザン・パシフィック鉄道により1904年に建設された「マレー・ホテル」は、町の鉄道車庫の向かい側にあり、常にリビングストンの中心的位置を占めてきた。かつてリビングストンが、カントリー・ミュージックなどが演奏される、ワイルド・ウェストの安酒場(ホンキートンク)の町であったころ、西部開拓時代のガンマンで興行主であったバッファロー・ビルや女性ガンマンのカラミティ・ジェーンもこのホテルに泊まった。また、映画監督のサム・ペキンパーは1970年代後半から80年代にかけて、このホテルの3階で暮らしていた。宿泊客はロビーに展示されている写真や工芸品を通して、ホテルの歴史の多くを見ることができる。また、いまだ現役の「オーチス社」の手動操作のエレベーターに乗ることもできる。マレー・ホテルを1991年に買収したオーナーのダンとキャスリーン・カウルは、全25部屋の大幅な改修工事を終わらせた。どの部屋も居心地が良く、古風な雰囲気が漂っている。
murrayhotel.com

「Chico Hot Springs(チコ・ホット・スプリングス)」
リビングストンの町とイエローストーン国立公園の中間地点には、1900年に設立された、癒し効果のある温泉水で知られる「チコ・ホット・スプリングス」がある。ゴールドラッシュ以前には、クロウ族、フラットヘッド族、ブラックフィート族などのアメリカ先住民族が、この”水溜り”を頻繁に訪れていた。その後は、2つの木製のバスタブを備えた入浴場として金鉱労働者が使用していた。コリンとシーブリング・デイヴィス夫妻が所有している現在、チコには様々な宿泊設備もできている。宿泊客は、改修された車掌用の車両や、丘の上に並ぶ8軒のラグジュアリーな山小屋に泊まったり、あるいは大型の幌馬車の中でキャンプすることもできる。こうした物件に泊まる醍醐味は、観光客の群れが到着する前の朝方に、天然のミネラル温泉に入り、高さ10,900フィートある壮大なエミグラント山の景色を楽しむことができることである。
www.chicohotsprings.com

画像: (写真左)マレー・ホテル (写真右)チコ・ホット・スプリングス

(写真左)マレー・ホテル
(写真右)チコ・ホット・スプリングス

「A Stone’s Throw Bed and Breakfast(ア・ストーンズ・スロウ ベッド & ブレックファースト)」
居心地のよい“クラフツマン様式”のこちらのB&B(朝食付き宿)は、地元のカップルであるミック・バーリントンとドナルド・ザノフが、友達の力を借りて、自ら設計と建設を行った宿泊施設だ。バーリントンは人気のあるツーステップのインストラクターで、ザノフは熱心な“馬乗り”である。「ア・ストーンズ・スロウ」では、カウボーイ文化に対する敬意がそこここに感じられる。建物の壁に飾られている、ウェスタンをテーマにしたアート作品のほとんどは、彼らの友達が手がけたものだ。また家具の多くと、いくつかの幌馬車の車輪は、ザノフが以前勤めていたワイオミング州の大牧場から持ち込んだものである。一方でバーリントンは、自ら作った回転台をつけたパイン材の大きなテーブルで、丁寧に作った朝食を提供してくれる。
astonesthrowbandb.com

関連記事

>> カラフルな街並みが魅力! カリブ海、キュラソー島の歩き方

>> 現代アーティスト ホルヘ・パルドが手がけたアートホテル

>> 連載・私的な旅遺産 「幸せ」を探す旅、フィジー

>> ウズベキスタン紀行「麗しのサマルカンド」

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.