澄みきった美しい川や湖、山脈の景色、新鮮な空気―― 都会の喧騒を離れ自然と調和し、心の平穏を取り戻すアルプスへの旅

TEXT & PHOTOGRAPHS BY WALTER GRIAO, TRANSLATED BY MICHIKO TOYAMA

INTERLAKEN(インターラーケン)
 東にある「ブリエンツ湖」と西の「トゥーン湖」の間に位置し、2つの湖を結ぶアーレ川の沖積平野にある小さな山間の町。双方の湖では、昔ながらの外輪式蒸気船をはじめ、たくさんの船が停泊しており、それらを利用することで、このすばらしい湖や山々をじっくりと堪能することができる。湖のほとりに見える、森を背にした小さな城や村々を眺めながらのクルージングはとても穏やかで美しい。

画像: 湖からの景色。クルージングツアーでは美しい風景を眺めながら、いくつかの名所に立ち寄ることができる

湖からの景色。クルージングツアーでは美しい風景を眺めながら、いくつかの名所に立ち寄ることができる

<STAY>

GRAND HOTEL GIESSBACH(グランドホテル ギースバッハ)
 チューリッヒ有数のホテル王 ハウザー一族のためにフランス人建築家、ホレス・エドゥアール・ダヴィネによって1873〜74年に建てられた。この由緒ある邸宅のようなホテルに必ず一泊はしてほしい。アルプスの森林に囲まれ、エメラルドグリーンの「ブリエンツ湖」を見下ろせるここでは、外の世界から隔てられて、鳥のさえずりや、銀色がかったかの有名なギースバッハの滝の轟音とともに目覚めることができるのだ。

 ホテルの中に一歩足を踏み入れれば、独特な輝きを放つ豪華さと洗練された上品な世界に包まれ、過ぎ去っていった時代のロマンやその輝かしい魅力が蘇る。皇帝や王とその取り巻きたち、政治家や外交官、そして、才能あるアーティストたちが、日常生活や都会の喧騒から遠く離れ、このオアシスで夏を過ごした。
www.giessbach.ch

画像: ギースバッハの滝。写真は、滝の裏手から見たギースバッハ ホテル。ホテルまでは徒歩15分ほどだ

ギースバッハの滝。写真は、滝の裏手から見たギースバッハ ホテル。ホテルまでは徒歩15分ほどだ

ZURICH(チューリッヒ)
 街の中心地に戻る電車の中で、車窓が自然の風景から都会のコンクリートの建物に移り変わる様を見ていると、山が恋しくて心が沈んだ。その夜はチューリッヒに滞在。この美しい欧州の古都の中心地、旧市街にあるニーダードルフの遊歩道を散歩していると、次第に恋しかった自然を諦めて都会を楽しもうという気分になってきた。旧市街は紺碧のリマト川周辺に拡がり、曲がりくねった道には隠された宝石のように小さなカフェや店が点在し、何世紀も変わらぬ佇まいに過ぎ去った昔の洗練された雰囲気に浸ることができた。

 チューリッヒのランドマークたる、1100年築のロマネスク様式の教会「グロスミュンスター大聖堂」の塔から景色を眺め、この小さな首都の魅力に酔いしれた。アインシュタインが自ら講義した歴史ある大学からダダイズム発祥のカフェまで、この街にはパリやロンドンのような人気の観光地に負けずと劣らぬ名所がたくさんあることに気づいた。ここはとても一日では回りきれない。

<STAY>

B2 BOUTIQUE HOTEL + SPA(B2 ブティックホテル+スパ)
 このアヴァンギャルドなホテルは、チューリッヒの中心、老舗ビール醸造所「ヒューリマン醸造所」の跡地にある。5つのカテゴリーに分けられた客室(60室)は、かつての醸造場に敬意を払うかのように、すべて洗練されたインダストリアルデザインに改築されている。

 このホテルの目玉は、なんといっても最上階にある温泉付きのスパで、屋上には街を一望できる温水プールもある。一日中街を歩き回った後に、温かい風呂にのんびり浸かったり、ワイン好きなら、ワイン・ライブラリーでお気に入りの一本を手に入れたり……とても使い勝手がいい。本に囲まれた環境はとても居心地が良く、お腹が空けば、スイス産のチーズやその他のご馳走も頼むこともできる。空港からたったの30分のところにあるので、ちょっと立ち寄るだけでもいいかもしれない。
www.b2boutiquehotels.com

<TIPS>

山間の村々を歩いて回るなど屋外で活動することが多いので、それを楽しむためにも着心地のいい暖かい服と靴を持っていくこと。朝は冷え、日中は気温が上がり、夜はまた寒くなる。

ホテルのみならず、美しいシャレー(木造の山小屋)に泊まることもできる。

市場と施設の閉館が早く、大体午後5時には閉まってしまうので、開館時間など事前にチェックをしておいた方がよい。

 スイスアルプスへの旅がどんなものだったかというと、新鮮な山の空気や、夜空を何時間も照らす美しい月、草がおい茂る道をどこまでも歩く長い散歩、輝くカウベルをつけた牛たちを見渡せる山間の森林、喧騒とは無縁の滝――それらすべてを、今もまだ手に取るように感じられるということだ。そしてなによりも驚いたことは、自然そのものの美しさに身体が自ら調和し、これまでに追われていた課題や答えの見つからない悩みなどが、まるでなかったかのように消え去ったことだ。自分のような人間でも、一歩ここへ足を踏み入れた瞬間から、日常のこうした世界から完全に遮断され、山々の中で自然とともに存在することができたのだ。

 

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