国内外で高い評価を獲得する現代アーティスト杉本博司の「杉本文楽」。第二弾はユニークかつ斬新な演出方法で、殺しの美学を追求

BY MASANOBU MATSUMOTO

 現代美術家、杉本博司が、構成・演出・美術を務める人形浄瑠璃文楽「杉本文楽」。その第二弾『杉本文楽 女殺油地獄』が、8月11日(金)から13日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターで上演される

画像: (左から)人形遣いの吉田一輔、吉田幸助、杉本博司。人形はお吉と与兵衛 COURTESY OF ODAWARA ART FOUNDATION

(左から)人形遣いの吉田一輔、吉田幸助、杉本博司。人形はお吉と与兵衛
COURTESY OF ODAWARA ART FOUNDATION

『女殺油地獄』は、近松門左衛門が書き下ろした世話浄瑠璃の傑作。主人公の油店・河内屋の与兵衛は、放蕩三昧、借金まみれ。にっちもさっちもいかなくなった与兵衛は、同じく油店・豊島屋の女房お吉に返済の金を無心するが、断られ、逆上。お吉殺しに及ぶというストーリーだ。

物語のクライマックスは、“油まみれの凄惨な殺人”。「杉本文楽」では、その殺しのシーンにこだわり、徹底してクローズアップする新演出が見どころとなる。人間国宝の鶴澤清治(三味線)がお吉殺しの場面である「豊島屋」と、三味線序曲「殺しのテーマ」を新たに作曲することも話題に。また、国重要文化財「旧東松家住宅」に保存されている本物の油棚と油桶を舞台美術に使用。ユニークかつ斬新な構成で「杉本文楽」流の殺しの美学を見せつける。

 人形劇は、世界中に古くからある。が、太夫、三味線、人形の三業一体の上演形式や、人形それ自体や舞台の作りに高い芸術性を有するものは、日本の人形浄瑠璃文楽のほかにあまりない。特に「杉本文楽」は、映像の併用など新演出を取り入れ、人形表現ながらも人間精神の核となる部分を描く文楽を、現代に通じる芸術としてアップデートさせてきた。

きっと、この『女殺油地獄』も、人間劇以上に、そして今までの文楽とも異なるリアリティを観る者に与えるはずだ。「杉本文楽」の新しく美しい企みを感じながら、凄惨な殺人物語に背中をヒヤリとさせられる。うだるような日本の夏の納涼にぴったりな、粋な演目だ。

『杉本文楽 女殺油地獄』
日時:2017年8月11日(金・祝) 18:00〜
   12日(土)14:00〜/18:00〜
   13日(日)13:00〜/17:00〜
会場:世田谷パブリックシアター
住所:東京都世田谷区太子堂4-1-1
料金:A席(1階・2階席) ¥9,000、 B席(3階席) ¥6,000
問い合わせ:公益財団法人小田原文化財団 
Tel. 046(542)9170(平日10:00~16:00)
公式サイト

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