PHOTOGRAPH BY AMELIE BLANC

 モーツァルトのオペラ『魔笛』を、“20世紀最高の振付家”と呼ばれたモーリス・ベジャールがバレエにした36年前。まさか“3人の童子”のひとりを踊る若手ダンサーが、将来ベジャールの座を引き継ぐとは思わなかった。「アハハ。確かに僕は童子のひとりだったよ。その後、パパゲーノや語り部も演じた。『魔笛』はとても大切なベジャール作品のひとつなんだ」。こう語るのは、10年前に亡くなった恩師ベジャールの跡を継いで、モーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督を務めるジル・ロマン。自身の振付作品も多い。


「モーリスと僕は、象徴的な意味も含めて2回出会っている。最初はバレエ団のオーディションを受けて入団した若手ダンサーとして。これが初対面だ。でも本当に出会ったのは、今回『ベジャール・セレブレーション』でも一部上演する『1789...そして私たち』を彼が作った1989年だった。あの頃、僕は個人的に落ち込むことがあってバレエ団を辞めようとしていたんだけど、実はモーリスもある理由でどん底にいた。僕たちはありとあらゆることを話し合った。すると、好きな本や音楽などが似通っていることに気づき、より深い部分でお互いを理解できるようになったんだよ」


 作品のアイデアはどこから生まれるのか。「たとえば僕の振付作品『アニマ・ブルース』はユングの男女の相互補完性が大きなテーマになっている。男性性と女性性、自分の中のもうひとりの自分を受け入れるというのは、『魔笛』にも通じるテーマだと思う。日本人ダンサー2名を起用した『兄弟』は、ボルヘスの『じゃま者』からインスパイアされたんだ」。このあたり、バレエで哲学を語った師、ベジャールにも通じている。


「モーリスにはオペラ『ニーベルングの指環』のバレエ版もあるけど、創作過程は『魔笛』と全然違う。もちろん『指環』は全部上演すると15時間かかるから、全曲を使うわけにはいかない(笑)。そこで彼は、原典に深く分け入って、テーマとなる要素を探し出した。僕が演じた火の神ローゲが話をリンクさせていくのもひとつの例。こうした手法は、愛する芸術家をテーマにした作品の創作姿勢にも通じる。エディット・ピアフ、バルバラとジャック・ブレル、チャップリン......。彼らに対して表面的な敬意を表すのではなく、心の深い部分まで入り込むことでモーリスにしか生み出せない作品に仕立て上げるんだよ。『ピアフ』に男性ダンサーしか出てこないのは、彼女はいろんな男たちとの関わりの中でエディット・ピアフになっていったという象徴でもあるんだ」



ジル・ロマン振付 『アニマ・ブルース』

PHOTOGRAPH BY FRANCETTE LEVIEUX


 モーリス・ベジャール・バレエ団の近年の来日公演では、ズービン・メータ指揮のイスラエル・フィルと、東京バレエ団とのコラボレーション演目も評価された。「過去に『パリー東京』で坂東玉三郎さんと共演したように、他者と交わることは大切なんだ。モーリスも“別の人生では歌舞伎役者だったかも”と言っていたよ(笑)」




モーリス・ベジャール・バレエ団 2017年日本公演 


公演日程:

Aプロ『魔笛』

2017年11月17日(金)〜19日(日)

Bプロ『ボレロ』『ピアフ』『アニマ・ブルース』『兄弟』

11月25日(土)、26日(日)

東京バレエ団との特別合同ガラ「ベジャール・セレブレーション」

11月22日(水)、23日(木・祝)


会場:東京文化会館

住所:東京都台東区上野公園5-45


問い合わせ

NBSチケットセンター

TEL. 03(3791)8888

公式サイト






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