「グランドプリンスホテル高輪」は誰もが知る有名ホテルだが、2016年11月1日、そのホテルのリニューアルオープンと同時に誕生した旅館・イン・ホテル「高輪 花香路」の存在を知る人はそう多くはない。あえて、開業告知も声高にはしなかったという。



 この旅館は、大切に育てていきたい都会の隠れ家的旅館として、「グランドプリンスホテル高輪」の別館、4階から5階の2フロアを利用した16室の宿として誕生した。ゆえに、窓からは隣接する美しい日本庭園を望め、春はお花見、初夏は新緑、秋は紅葉という日本ならではの景色を共有できる。一方、正門と宿の入り口はホテルとは別に作られ、ホテルのゲストとは一線を画した隠れ家的なルートが用意されている。



「グランドプリンスホテル高輪」の

1階に造られた旅館専用のエントランス



 旅館への門は、ホテル正面のエントランスとはり異なり、品川駅から続くさくら坂側にある。高級旅館としての威厳のある昔ながらの『冠木門』(かぶきもん)をくぐって2万㎡もの日本庭園に入る。通年季節の花に彩られる庭を愛でながら小道を歩き、香りに癒され、やがて旅館専用の入り口にたどり着くというアプローチ。「花香路」とは、そんな趣深い意味が込められた旅館名なのである。



緑が美しい日本庭園には山門や鐘楼も


 

 館内に入ると着物姿のスタッフが対応し、チェックインのための「ラウンジ 桜彩」に通される。ウェルカムドリンクで歓迎されるうちに、たちまち都心にいることを忘れてしまう。一見、ごく普通の旅館の趣だが、内装のディテールや飾られている墨絵、左官アートなど、随所に落ち着いた高級感が漂う。



館内の「ラウンジ 桜彩」でチェックインし、ウェルカムドリンクをいただく



ラウンジでのカクテルタイムには、和のフィンガーフードやスイーツが並ぶ



 「ラウンジ 桜彩」では、和朝食、ティータイム、カクテルタイム、就寝前のくつろぎのために19時から始まるナイトキャップまで、1日じゅう優雅なサービスが提供されている。その合間には、折り紙や風呂敷包み、着物着付けなど、日本文化を楽しむアクティビティも催され、外国人ならずとも楽しめる。もちろんスパも併設。和の空間で贅沢なトリートメントが受けられる。



客室は「和室D」<50.1㎡>。全室ベッドを採用。

最大客室は100.8㎡



和室を改装した「SPA たゆた」トリートメントルーム



茶室でのお点前披露は、外国人観光客にも人気

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF TAKANAWA HANAKOHRO



 もともと閑静な住宅地として知られている高輪地区。「グランドプリンスホテル高輪」の敷地内にも由緒正しき「高輪 貴賓館」(明治44年築、旧竹田宮邸)が残る。美しい日本庭園には茶室のほか、鐘楼や観音堂なども点在し、散策にはカメラを持参したくなる。まだ今ほどホテル文化が定着していなかったころから、プリンスホテルは華やいだ大型ホテルを次々にオープンさせ、日本のホテルの一時代を作りあげてきた歴史がある。この庭園は1971年、ホテル新築にともない造られたもので、作庭者は皇居新宮殿を手掛けた故・楠岡悌二氏。そういう目でホテル全体を観ると、その建物内に造られた隠れ家的16室がいかに貴重な存在であるか、思いを馳せずにはいられない。



高輪 花香路(TAKANAWA HANAKOHRO)


住所:東京都港区高輪 3-13-1

客室:全16室

料金:¥118,800~(和室D 2名利用の1泊料金。消費税・サービス料込)

お問い合せ:03(3447)1111(代表)

公式サイト




せきね きょうこ

ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、“ホテル”の表裏一帯の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている。

http://www.kyokosekine.com/



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