BY ALICE NEWELL-HANSON, PHOTOGRAPHS BY MICKALENE THOMAS, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
さまざまな柄であふれたリビングスペースに佇む女性をモチーフにした、色鮮やかなペインティング作品で知られる、アーティストのミカリーン・トーマス。彼女は15台ほどのポラロイドカメラを所有していて、蛇腹式のものは色違いで7、8台ある。彼女のパートナー、アート・コンサルタントでアート収集家でもあるラケル・シェヴルモンが、NYのチェルシーにあるふたりの家の冷蔵庫を開けると、フィルムのパックしか入っていないこともしばしばある。ミカリーンの前回の誕生日に、ラケルはポラロイドSX-70をプレゼントした。旅行の際も、ミカリーンは救世軍のリサイクルストアを訪れ、コレクションに加えるべく別のモデルを探す。
ミカリーンはこれらのカメラを日常的に使い、ときに写真の縁を剥がしたり、ネガフォルムを漂白液に漬けたりして変化を出しながら、ポートレイトの習作を試みている。ただそれだけでなく、彼女はポラロイドカメラをデザイン性の高いオブジェとして楽しんでおり、パーティの際には場を盛り上げる小道具としても活用している。「ポラロイドカメラを使うことで、遊びの感覚が生まれるの」とミカリーン。「ほとんどDIY感覚で、プロのフォトグラファーでなくても撮影できるしね」しかし――、それが役に立つこともある(シアトルにあるヘンリー・アート・ギャラリーでは、彼女の写真作品を集めた展覧会が開催された)。今回、Tのアート特集号のために、こちらで用意したポラロイドカメラを彼女に渡して、1週間の出来事を撮影してほしいとお願いした。「多くの時間を友人たちと過ごしていたから、彼らの姿を撮りたいと思ったの」。これらの写真について、彼女はそう説明する。このプロジェクトがとても楽しかったようで、彼女いわく、また新たなカメラを買いたくなったとか。
「ニューオーリンズのホテルで、ソファに座ってくつろぐラケル。私たちはメモリアル・デー(戦没将兵追悼記念日)のあった週末に、2019年に予定されている私の展覧会の打ち合わせで、現代美術センターに行ったの」
「NYのアートスペース『パーティシパント・インク』で開催された、アーティストのライル・アシュトン・ハリスのすばらしい展覧会『エー・ケー・エー・ダディ』で撮った、彼のインスタレーションのディテール。これは『ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命だって大切)!』のスローガンを直接的に使った作品群の一部」