今回のリストは、日本における現代アートの祭典『六本木クロッシング 2019展:つないでみる』。そして、余命宣告を受けた佐藤雅晴の個展『死神先生』

BY MASANOBU MATSUMOTO

『六本木クロッシング 2019展:つないでみる』
|森美術館

『六本木クロッシング』は、森美術館が3〜4年に一度、日本の現代アートシーンの今を総観すべく開催するシリーズ展。6回目となる今回は、70年代から80年代生まれを中心とした日本のアーティスト25組の作品が集まった。テーマは「つないでみる」。「分断」が顕在化している現代社会を生きるヒントとして、アーティストの作品もしくはその制作プロセスにある、多様な「つながり」のかたちを検証しようとするものだ。

 ファッションブランド、アンリアレイジは、形状や色が変化する特殊な花の装飾を施したドレスを発表。人の体温や日光、外気などの熱エネルギーによって花が咲いたり、閉じたりするこの作品は、“テクノロジー”と“ファッション”の新しい接続を体現したものだ。また青野文昭は、古く使えなくなった車やタンスなど異質なものをぴったりつなぎ合わせて、新しい彫刻作品をつくる。こうした“異なる分野、異なる素材をつなげる”だけでなく、視点を変えることで、本来的なつながりを可視化しようとする作品もある。

 竹川宣彰は、1,300匹超の猫たちが無邪気に入場行進をする様子が愛らしい立体作品《猫オリンピック:開会式》や猫の顔をモチーフにした24点のプラカードなどを展示。“もしも猫だったら”という、脱・人間中心主義的な視点は、われわれの日常、または政治や社会経済、コミュニティのあり方を再考するきっかけにもなるだろう。

画像: 竹川宣彰《猫オリンピック:開会式》(部分)の展示風景  2019年 陶製人形、木、鉄、陶製タイル 95×421.3×302cm COURTESY:OTA FINE ARTS, TOKYO, PHOTOGRAPH BY KEIZO KIOKU, IMAGE COURTESY OF MORI ART MUSEUM

竹川宣彰《猫オリンピック:開会式》(部分)の展示風景  2019年 陶製人形、木、鉄、陶製タイル 95×421.3×302cm 
COURTESY:OTA FINE ARTS, TOKYO, PHOTOGRAPH BY KEIZO KIOKU, IMAGE COURTESY OF MORI ART MUSEUM

 この展覧会を訪れるなら、ぜひ合わせて見てほしいのが、会場内で同時開催されている『MAMスクリーン010』(世界の映像作品を紹介するプログラム)。世界的に注目を集める作家ミハイル・カリキスの作品をスクリーンで鑑賞できる。

 ミハイルは、特定のコミュニティに自ら入り込み、そこで収録した音や人の歌声を素材に、映像作品や体験型のインスタレーション作品をつくる。今回上映される映像作品のひとつ《チョーク工場》は、積極的に知的障がい者を雇用(現在は社員全体の7割を超える)してきた日本理化学工業のチョーク工場が舞台だ。

画像1: ミハイル・カリキス《チョーク工場》 2017年 ビデオ

ミハイル・カリキス《チョーク工場》 2017年 ビデオ

画像2: ミハイル・カリキス《チョーク工場》 2017年 ビデオ

ミハイル・カリキス《チョーク工場》 2017年 ビデオ

 朝のラジオ体操の音楽から始まり、チョークの粉を混ぜ、焼き、箱詰めする作業中の機械音、作業員の声、そして昼休みのカラオケ大会(そこで女性の作業員が藤圭子の『新宿の女』を見事に歌いあげる姿がほほえましい!)ーー多様な“音”が生まれる一日の風景を、本作は鮮やかに描き出す。

 音だけでなく、ミハイルの目(カメラ)が捉えた風景も魅力的だ。たとえば、赤や白、黄色のチョークの粉が落ち、混ざり合った地面。それは抽象絵画のように見えて、じつに美しい。

画像3: ミハイル・カリキス《チョーク工場》 2017年 ビデオ

ミハイル・カリキス《チョーク工場》 2017年 ビデオ

『森美術館15周年記念展「六本木クロッシング 2019展:つないでみる」』
同時開催:『MAMスクリーン010:ミハイル・カリキス』
会期:〜5月26日(日)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
開館時間:10:00〜22:00(火曜は〜17:00)ただし4月30日(火)は〜22:00。また、5月25日(土)は「六本木アートナイト2019」の開催に伴い〜翌朝6:00
※「MAMスクリーン010」に関しては、上映のない時間帯あり。詳細はこちらを参照
料金:一般 ¥1,800、大学・高校生 ¥1,200、4歳~中学生 ¥600、65歳以上 ¥1,500
電話: 03(5777)8600(ハローダイヤル)
公式サイト

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