公共性をテーマにした建築家・隈研吾の展覧会、草間彌生の近作を見せるソロエキシビション。そして、ニューヨークを拠点に活動し、近年再評価が進む美術家・久保田成子の回顧展。開催中の3つのアート展の見どころを紹介する

BY MASANOBU MATSUMOTO

『草間彌生 私のかいたことばに あなたのナミダをながしてほしい』|オオタファインアーツ

 オオタファインアーツで開催中の草間彌生の個展『私のかいたことばに あなたのナミダをながしてほしい』は、草間が2009年以降、精力的に制作し続けている大型絵画シリーズ「わが永遠の魂」の近作とインスタレーション作品《雲》を見せる。

「わが永遠の魂」は、正方形のキャンバスに、草間が即興的にペイントを施した絵画作品。具象と抽象、概念とかたちといった対照的なものを、ひとつのキャンバスの中に統合するかのような作風で、ドットや網、少女の顔、目など草間作品の中心的なモチーフも画面の中に繰り返し現れる。

 制作を始めてから12年間のあいだに、800点近い作品が作られたというが、草間の心情を反映するように作品も少しづつ変化がみられるという。たとえば、キャンバスのサイズや色。同シリーズは、もともとアクリル絵の具を使いカラフルな色使いで表現されていたが、2019年ごろはモノクロームで展開。そして、パンデミックに世界が見舞われた2020年から、ふたたび画面に色彩が戻った。

画像: 草間彌生 《花の煩悶(もだえ)のなかいまは果てなく  天国への階段 優雅(やさし)さに胸果ててしまう  呼んでいるきっと弧空(そら)の碧さ透けて  幻覚(まぼろし)の影 抱擁(いだ)きわきあがる雲の色  芙蓉いろ食べてみて散るなみだの音》2021年 キャンバスにアクリル 130.3x130.3 cm © YAYOI KUSAMA COURTESY OTA FINE ARTS

草間彌生 《花の煩悶(もだえ)のなかいまは果てなく  天国への階段 優雅(やさし)さに胸果ててしまう  呼んでいるきっと弧空(そら)の碧さ透けて  幻覚(まぼろし)の影 抱擁(いだ)きわきあがる雲の色  芙蓉いろ食べてみて散るなみだの音》2021年 キャンバスにアクリル 130.3x130.3 cm
© YAYOI KUSAMA COURTESY OTA FINE ARTS

画像: 草間彌生 《我が憧れの天国への道へたどり着いたよろこび》2021年 キャンバスにアクリル 130.3 × 130.3 cm © YAYOI KUSAMA COURTESY OTA FINE ARTS

草間彌生 《我が憧れの天国への道へたどり着いたよろこび》2021年 キャンバスにアクリル 130.3 × 130.3 cm
© YAYOI KUSAMA COURTESY OTA FINE ARTS

 本展では、同シリーズのうち、この3年の間に描かれたものをピックアップして紹介。今年制作された作品も5点並ぶ。床には乱反射するステンレスでかたちづくられた《雲》が置かれ、絵画の色彩やモチーフが写り込んでみえる展示スタイルも面白い。

 またそれぞれの絵画のタイトルにも目を向けたい。「宇宙」「愛」「たたかい」といったワードが並ぶそれらのタイトルは、草間彌生の思い、魂の向かう先が示されているようにも読め、作家を突き動かす内なるエネルギーをより強く実感できる。

画像: 展示風景: 草間彌生「私のかいたことばに あなたのナミダをながしてほしい」オオタファインアーツ(東京)、2021年 © YAYOI KUSAMA COURTESY OTA FINE ARTS

展示風景: 草間彌生「私のかいたことばに あなたのナミダをながしてほしい」オオタファインアーツ(東京)、2021年
© YAYOI KUSAMA COURTESY OTA FINE ARTS

『草間彌生 私のかいたことばに あなたのナミダをながしてほしい』
会期:〜7月30日(土)
会場:オオタファインアーツ
住所:東京都港区六本木 6-6-9 ピラミデビル 3F
開廊時間:12:00〜18:00(完全予約制)
予約はこちらから
休廊日:日・月曜・祝日
電話:03(6447)1123
公式サイト

※ 新型コロナウイルス感染予防に関する来廊時の注意、最新情報は公式サイトを確認ください

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