BY MASANOBU MATSUMOTO
『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』|東京国立近代美術館
東京国立近代美術館で開催している『隈研吾展』は、「公共性」がテーマだ。世界各地にある建築家・隈研吾の作品のうち、美術館、大学、駅、商店街など、公共性の高い68の建築物をピックアップし、模型や写真などで紹介。また隈の建築がどう使われ、どのように人や街と関係を結んでいるかを捉えた映像作品、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場となる国立競技場の模型も展示する。
“建築は公共に対してどのような価値を与えられるか”、“(市民や都市空間、自然に対して)開かれた建築とはどのようなものか”といった問いは、元来モダニズム建築の大きな課題でもあった。本展の展示物には、そういった課題、時代の要請に向き合いながら、モダニズム建築を乗り越えていく隈のビジョンが端的に示されている。その上で、隈がいま思う“新しい公共性”とは何か?ーーそれにフォーカスしているのが、第2会場で紹介されている「東京計画2020(にゃんにゃん) ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則」だ。
隈が注目したのは、動物のネコ。コロナ禍によりソーシャル・ディスタンスが求められ、オフィスをはじめ建物の価値が転換する中、隈は、都市空間の隙間もうまく利用しながら、適切に個体間の距離をとり、共生するネコに“新しい公共性”のヒントを得た。そして、自宅近くに暮らす2匹の半野良のネコにGSPを付け、行動を記録・分析し、ネコ目線で都市の地図を描くことを試みた。
展示スペースでは、そのリサーチの成果を3DCGアニメーションやテキストで紹介。公共空間と私的空間の間のグラデーション上に暮らすネコに学ぼうというのが隈のメッセージであるが、人間の都合で作り上げてきた都市を見直すこと、人間中心主義的な考え方を改めることが叫ばれている昨今において、極めて興味深い展示物でもある。
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