IT分野で活躍するビジョナル取締役CTO・竹内真氏が収集する現代アートと家具を鑑賞できる『TAKEUCHI COLLECTION 「心のレンズ」展』。アートはもちろん、インテリアに興味のある人にとっても見逃せない展覧会だ

TEXT & PHOTOGRAPHS BY HIROYA ISHIKAWA

画像: ピエール・ジャンヌレ《フローティングバックチェア》のインスタレーション

ピエール・ジャンヌレ《フローティングバックチェア》のインスタレーション

 天王洲にある現代アートのコレクターズミュージアム「ワットミュージアム」では、展覧会『TAKEUCHI COLLECTION 「心のレンズ」展』が開催中だ。

 ワットミュージアムは美術品の保管サービスを業務のひとつとして行う寺田倉庫が運営する芸術文化発信施設で、作家やコレクターから預かっている貴重なアート作品を中心に公開する世界でも珍しいミュージアムとして知られる。これまでもアートコレクターの桶田俊二・聖子夫妻や、大林組代表取締役会長の大林剛郎など国内有数のコレクターが所蔵するアートコレクションが、ワットミュージアムによる企画制作で展覧会として紹介されてきた。

画像: ヴィルヘルム・サスナルの作品の前で話すビジョナル取締役CTOの竹内真氏

ヴィルヘルム・サスナルの作品の前で話すビジョナル取締役CTOの竹内真氏

 今回の展覧会ではIT分野で活躍するビジョナル取締役CTOの竹内真のコレクションを展示。会場では竹内がおよそ5年前から収集を始めた国内外のアーティストによる現代アート33点と家具33点を鑑賞することができる。

 竹内がアート作品を集め始めたきっかけは、数年前にマンションを購入したことだった。「入居したばかりの殺風景な部屋がどうしたら居心地よくなるのかなと考えた時に、賃貸とは違って壁に穴を開けても問題ないので、好きな場所にアート作品を飾ったらどうだろうと思って興味を持ち始めました」

画像: 自宅に飾られているかのように作品を鑑賞できる。左から/イヴ・クライン《Untitled Blue Monochrome(IKB 317)》(1958)、ゲルハルト・リヒター《14.2.88》(1988)© Gerhard Richter、ピエール・ジャンヌレ《トライアングル ローテーブル》、ピエール・ジャンヌレ《Xレッグアームチェア》

自宅に飾られているかのように作品を鑑賞できる。左から/イヴ・クライン《Untitled Blue Monochrome(IKB 317)》(1958)、ゲルハルト・リヒター《14.2.88》(1988)© Gerhard Richter、ピエール・ジャンヌレ《トライアングル ローテーブル》、ピエール・ジャンヌレ《Xレッグアームチェア》

 最初に購入を考えたのは、以前から気になっていたモネの作品だった。竹内は海外のオークションで競り落とそうと深夜に行われるオークションに参加する。「素描が3点出品されていたのでポチポチと入札を行ってみましたが、想定以上に価格が競り上がってしまい、泣く泣く断念しました」

 その後もオークションをチェックしていると、ピカソの作品が頻繁に出品されていることに気づいた。ピカソは多作で知られ、生涯で15万点近い作品を残している。「とにかく部屋に作品を飾ってみないことには始まらないと思い、ピカソなら自分も知っていたので入札してみると、手の届く価格で落札できたんです」

画像: シャルロット・ペリアンのスツールに座って観ることで、いつもと違う鑑賞体験になる。壁にはアルベルト・ジャコメッティの作品《スタジオの椅子(表面)》を展示

シャルロット・ペリアンのスツールに座って観ることで、いつもと違う鑑賞体験になる。壁にはアルベルト・ジャコメッティの作品《スタジオの椅子(表面)》を展示

 こうして竹内の自宅にパブロ・ピカソの作品が届いた。「自分の記憶の中にあった、ピカソと言えばこういう作風というイメージに近い」と竹内。どんなタイミングで観ても力強さを感じる印象的な作品だと話す。コレクションの記念すべき最初の作品となったピカソの《Couple, from La Magie Quotidienne》は、会場に入ってすぐの場所に展示されているのでぜひチェックしたい。

画像: (左)スターリング・ルビー 《TURBINE. RED RIDING HOOD.》(2023)©Sterling Ruby.Courtesy of Taka Ishii Gallery (右)オスカー・ムリーリョ 《manifestation》(2021)©Oscar Murillo.Courtesy of Taka Ishii Gallery

(左)スターリング・ルビー 《TURBINE. RED RIDING HOOD.》(2023)©Sterling Ruby.Courtesy of Taka Ishii Gallery
(右)オスカー・ムリーリョ 《manifestation》(2021)©Oscar Murillo.Courtesy of Taka Ishii Gallery

 ピカソから始まった竹内のコレクションだが、そこからアート作品を集めていくと、どうやら自分は抽象絵画が好きらしいと気づいていく。

「今回の展覧会も抽象絵画を中心に展示しています。タイトルに「心のレンズ」とあるように、なにが描いてあるのかよくわからないものでも、見ているうちにそれがだんだんなにかに見えてくるんです。それはその人の心の中にある記憶だったり、経験だったり、気持ちだったりが、そういう風に見せてくれるものだと思います。もし誰かと一緒にこの展覧会に足を運ぶ機会があれば、同じ抽象絵画を観ながら何に見えるか話し合ってみてください。きっと目に見えないお互いの心の内側が見えてくる。そんな力が抽象絵画にはあると思います」

画像: ピエール・ジャンヌレの《フローティングバックチェア》には、生産や流通を管理するためのアルファベットや数字が記されている

ピエール・ジャンヌレの《フローティングバックチェア》には、生産や流通を管理するためのアルファベットや数字が記されている

 家具に関しては、自身が手がけるレストランビジネスでアートを飾れるような店を作ろうと思い、内装を考えたことが収集のきっかけだった。「勉強のためにアートのある空間をいろいろ見に行ったところ、椅子やテーブルが新しくてカッコよすぎるとアートとは合わない感じがしたんです」

そんな矢先にジャンヌレのアンティークの椅子について知る竹内。すぐに現物を見に行った。「歴史があるし、デザイン性にも優れていて、実用性も高い。情緒性も感じられる。たくさん作られたものなので、実際に使うことを考えると必要以上に気を使わなくてもいいし、壊れても買い足せると思って集め始めたんです」

画像: ル・コルビュジエやシャルロット・ペリアンなどの家具がアート作品とともに展示されている

ル・コルビュジエやシャルロット・ペリアンなどの家具がアート作品とともに展示されている

 そこから竹内はル・コルビュジエやシャルロット・ペリアンなどの家具に収集対象を広げていった。「古い家具は時間を超えて人から人へと渡りながら使われてきたストーリーそのものが素敵だなと思ってハマっていきました」

画像: シャルロット・ペリアンのローベンチに腰掛けながら、大型の抽象絵画を鑑賞する喜び

シャルロット・ペリアンのローベンチに腰掛けながら、大型の抽象絵画を鑑賞する喜び

 今では自宅で現代アートと家具を一緒に楽しんでいる竹内。会場でも同様に椅子に座りながらアート作品を鑑賞できるようになっている。「家具が存在することで現代アートとの距離を近くしてくれるんです」

 ひとつひとつのアート作品の素晴らしさやアンティーク家具の魅力を感じられることに加えて、両者の相性の良さも実感できるのが『TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展』。アートだけでなく、インテリアに興味のある人にとっても見逃せない展示になっている。

『TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展』
会期:2024年2月25日(日)まで
住所:東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号 ワットミュージアム
時間:11時~18時(最終入場17時) 
休館日:月曜(祝日の場合、翌火曜)、年末年始
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