全国津々浦々、幾多のサロンを取材してきた毛髪診断士で美容エディターの伊熊奈美さんが、大人の髪悩みに応えるヘッドスパメニューを実際に体験してレポートする本連載。第8回は“頭の整体”で髪と頭の形を整えてくれる「SPIC Salon 鎌倉店」へ!

TEXT AND PHOTOGRAPHS BY NAMI IKUMA

ヘアスタイルを整えながら健康になる「ヘッドデトックス」

画像1: ヘアスタイルを整えながら健康になる「ヘッドデトックス」

 最近、後頭部の内側に大きなうねりが出ている私の髪。その上に乗っている表層の髪は比較的直毛なので、ブローしないとキレイに見えないが、それを整えようとすると恐ろしく面倒なことになる。美容院では縮毛矯正をすすめられることも多いのだが、あるとき「うねりをまっすぐにする頭皮ケアサロンがある」という話を耳にした。さらには「頭のハチが小さくなる」「髪にボリュームが出る」など、にわかには信じられない話ばかり。
 その施術がSPIC Salonの「ヘッドデトックス」。説明が少し長くなるので今回は結果から先に見せてしまうけれど、施術をした後は、うねりについてはこのように違いが出て、本当に驚いてしまった。

Before(左)
20代の頃にはなかったこの大きなうねり。それがヘッドデトックスをすると……
After(右)
手ぐしでテンションをかけながら乾かしただけ。自分でできる乾かし方で本当にまっすぐに! 

画像2: ヘアスタイルを整えながら健康になる「ヘッドデトックス」

未来の健康をつくる会社のヘアサロンメソッド

 ヘッドデトックスをメニュー化しているサロンは全国にあるが、SPIC(スピック)という名前は聞き慣れない、という人も多いだろう。でも健康コンシャスな人であればこのサプリメントを見たことがある人はいるのではないだろうか。

画像: COURTESY OF SPIC CORPORATION

COURTESY OF SPIC CORPORATION

 この「Lypo-C(リポシー)」という液状のサプリメントを発売しているメーカーが株式会社スピックだ。「Lypo-C(リポシー)」は、「未来の健康をつくる」ことを信条とし、日本に高濃度ビタミンC点滴を広めた柳澤厚生医師との連携によって、2015年に発売された。このサプリメントが発売される前から同社には「ヘッドデトックス」という頭皮ケア技術のメソッドがあり、30年以上も全国の提携サロンで施術が行われてきた実績がある。実は「Lypo-C(リポシー)」は私がここ2年ほど愛用しているサプリメントでもあり、その会社の原点ともいえる頭皮ケアメソッドをぜひ体験したいと、鎌倉の直営サロンを訪ねた。

顔と髪の形を変えるメソッドはまるで“頭皮の整体”

画像: 顔と髪の形を変えるメソッドはまるで“頭皮の整体”

「ヘッドデトックス」が受けられるサロンは全国に約30軒ほどある。今回は鎌倉の直営サロンでメソッドの考案者でもある根本克己さんに施術を受けた。

 和のディテールが印象的なウッド調の落ち着いたフロアでまずはカウンセリング。ここでは髪の状態だけにとらわれず、髪も顔も体としてひと繋がりという前提のもとに診断する。
「伊熊さんの顔でまず気になるのが眉です。左眉が上がっていて、右は横に広がっていてなだらかですよね? これは頭皮に緊張があって、上から押された状態になっているからです。その硬さを緩めると、眉の高さも元に戻る余裕が出てきます」と根本さん。眉のアンバランスさは確かに自覚があって、そのために片方の眉間だけに深いシワがあるのが気になっていた。手で正しい位置に戻されると、確かに左右の眉の形が揃うのがわかる。

 もしやほうれい線も単なるたるみのせいではないのかも? と尋ねてみると
「その通りです。頭皮は上からの緊張と同時に、後ろから前方向へも“力”がかかって押されています。“力”とは肩こりのことです。肩こりによる筋肉の緊張で頭蓋骨も次第にズレてきます。その力は顔の頬骨に影響してまず頰が高くなり、すると目が奥に引っ込み、上唇が下向きになり、やがてほうれい線に影ができます。スピックではほうれい線はたるみで起きているというより、むしろ影が大きく出た状態と考えています」

 本題の髪については、冒頭の私のような大きなうねりだけでなく、トップのボリュームがなくなることも同じ理由で起こっているという。
「後ろから前方向に力がかかることで筋肉が後ろへ引っ張られ、髪が斜めに倒れてしまっているんです。育毛剤をつける前に余計な緊張と歪みのある頭皮をほぐしておかなければ、本来のうねりやボリュームには戻れないんです」

 髪のエイジングは髪だけで局所的に起こっているのではない。年齢を重ねることで肩の筋肉がうっ血して肩こりが起こり、それによって頭皮の血流が悪くなり、髪がエイジングするという一連の加齢による体の変化からやってきているという考え方だ。
 また、人により筋肉の緊張状態は違い、ほぐすべき場所も人それぞれ。その人の現在の体の状態を伝え、解決法を教えるメソッドは、単に「頭皮が硬い」というざっくりした捉え方から一歩踏み込んだ、パーソナルで統合的な施術と言えるだろう。このトータルな見立ての技が30年前から少しずつ構築されて、「美容室」という身近な場所で実践されてきたことに新鮮な驚きを感じた。

癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

 いよいよ施術に入る前に、鏡の前でもう一度私の髪のうねりについて細かく検証する。

画像1: 癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

「左側は地肌に近い部分(上方)で大きくうねっていますよね。でも右側はそれほどでもない。この原因は地肌のコリなんです。左側に触れてみてください」
 確かに左側の地肌に触れると、内側にしこりのような凸凹が感じられ、触れると痛みがある。この痛みは……いつもヨガの前に筋膜をほぐす時に感じる痛みと同じだ。右側にはその凹凸はあまり感じない。
「年齢によって頭皮や頭の形は変わっていくんです。凸凹もできるし、筋肉の緊張でムラもできる。若い頃は多少変形しても弾力があるのですぐに戻りますが、年齢を重ねるとなかなか戻りません。コリがあるところは白髪も多いんですよ」

 白髪が多いと自覚している襟足に触れると、確かにあの筋膜リリースに似た痛みが走るが、ほぐすととてもすっきりする。これまでは白髪もうねりも単に加齢現象の一つ、とざっくり捉えていたが、その本質的な原因にクローズアップし、明確な解決策を探っていく感じだ。
「お客様に知っていただきたいのは、まず自分自身の体を見つめ、耳を傾けることですね。それを大切にしないと、未来の『自分』の健康を作ることができず『誰か』の健康法を代わりにやっているだけになってしまう。その自分を見つめる基準を一人ひとり丁寧に教えるのが私たちの仕事なんです」と根本さん。ヘッドスパ、というとつい他力本願になりがちだがそれでは本当の解決には至らない。“釣った魚を与えるのではなく、その人に合った釣り方を教える”の精神といえる。

 ここからは洗いながら自分にあった洗い方を教えてもらう。フルフラットのシャンプー台で髪を濡らすが、シャンプー自体は座位で行うので、洗い方をよく観察できる。使用するのはゴム製のシャンプーブラシ2個。やや硬めのピン先が特徴のSPIC Salonオリジナルだ。

画像2: 癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

 まずは耳裏〜ハチの下、後頭部全体をブラシでほぐしてから側頭、続いて頭頂へとブラシをやさしく揺らすように洗っていく。使用するのはオリジナルのシャンプー、「スピック ドレッシング」。元々は美容師さんの手荒れを抑えるために考えられたというものだ。つまり、私たちの頭皮や肌にもこの上なく優しい。
「何で洗うか、というより正しく洗う方法の方がずっと大切なので、スピックのシャンプーは1種のみです。これは全身が洗えるシャンプーで、トリートメントはありませんが、ご自身にあった使い方ができていれば十分に美しい髪になります」

画像3: 癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

 すすいだ後は、トルマリン入りのマッサージ専用器具で頭のこりをほぐし、さらに首から背中に流していく。頭痛すらすっきりしていくような心地よさだ。

画像4: 癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

 頭も筋肉のコリを流したらここからはほぼ整体。誰が見てもこれがヘアスタイルのための施術とは思わないだろう。ジムのマッサージで受けたことがあるが、肩甲骨をはがす動きそのもので、ときどき「アイタタタ……」となるものの、肩の可動域が広がり、体全体の血流が一気に動き出すのがわかる。

画像5: 癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

 髪を乾かし、頭のハチに触れると、明らかに後ろに下がっている! 体と同様に頭皮にもコリが溜まっていて、それが頭の形を変えてしまうという根本さんの話にここで改めて納得する。髪もただ乾かしただけなのにツヤツヤでツルツル。しかも分け目がなくなりボリュームが出ている。
「分け目ってコリが線状になったものなんですよ。ほぐしていくことで徐々になくなっていきます」

 長い髪は重みがあるので、分け目ができるのは当たり前と思っていたので、これにも驚いてしまった。姿勢をチェックしてみると、肩の高さの左右差までなくなっている。

画像6: 癒されるだけでなく、解決策を身に付けるヘッドスパ

 最後にもう一度ほぐしかたを詳しく教えてもらい、ヘッドデトックスは終了。最後は「Lypo-C(リポシー)」でビタミンCのおもてなし。常用すると慣れるが、個性的な……しょっぱい味がする。ちょっと疲れたときなどは、これを3包一気飲みすると翌朝のコンディションを整えられるので、このサプリメントだけは手放せない。

ヘアデザインを突き詰めたら健康に行き着いた

 なぜこのような他にはないメソッドを考案したのか、根本さんに改めて伺った。

「ヘッドデトックスを考案する前は、お客様のヘアスタイルへの要望に答えられないことに美容師としてもどかしさを感じていました。対症療法的にうねっているから縮毛矯正、ボリュームが出ないからパーマをかける、というひとつの手ですが、もっと根本的な部分に働きかける必要があるのではないかと考えたのです。いろいろと試した結果、頭皮のコンディションを整えるこの方法に行き着きました。髪質は持って生まれた特徴もありますが、お手入れや生活習慣でカバーできることもたくさんあります。カットの前にまずその方の頭皮のコンディションを整えることで、髪は扱いやすく自由になり、ヘアスタイルも自由になるのです。私はヘアデザインのためにこの方法を構築してきたのですが、お客様からは『顔が小さくなった』とか『目がすっきりした』とか『肩こりがなくなって夜眠れる』ですとか、髪以外の部分で喜んでいただけるんです。それはとても嬉しいことでした」

 美容師が髪を突き詰めたら、そこにはパーソナルなヘルスケアがあった。コンビニより多いと言われる日本の美容室だが、人口の2人に1人が50歳以上となった今もヘアデザインが優先で、頭皮が健康へとつながるポテンシャルに気づいているところはまだ少数派に思える。

 ジムへ行くよりずっと気軽に足を運べるのが美容院だ。髪や頭皮から美と健康を引き出すヒントを与えてくれて、その場限りの見た目のみならず、その人の本質美を引き出す美容院がもっと増えたとしたら……? 日本人の健康寿命の延伸に寄与することはもちろん、世界から注目を浴びる新たなジャパンビューティの境地が広がるに違いない。

画像: ヘアデザインを突き詰めたら健康に行き着いた

■今回体験したヘッドスパメニュー
ヘッドデトックス ¥8,000
※所要時間の目安は1時間半~2時間

SPIC Salon 鎌倉店
住所:神奈川県鎌倉市小町1丁目5-21 MORIビル2F
TEL. 0120-308-901
公式サイトはこちら

画像: 伊熊奈美 美容エディター、ジャーナリスト。(公社)日本毛髪科学協会毛髪診断士認定指導講師、(社)国際毛髪皮膚科学研究所毛髪技能士。20年以上に渡り、女性誌を中心に美容分野の記事を編集、執筆、監修。美容関連企業のコンサルティングにも携わる。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号!いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)、『脱白髪染めのはじめかた〜でもいきなりグレイヘアは無理』(グラフィック社)がある。 @namiikuma_hairista COURTESY OF NAMI IKUMA

伊熊奈美
美容エディター、ジャーナリスト。(公社)日本毛髪科学協会毛髪診断士認定指導講師、(社)国際毛髪皮膚科学研究所毛髪技能士。20年以上に渡り、女性誌を中心に美容分野の記事を編集、執筆、監修。美容関連企業のコンサルティングにも携わる。著書に『頭皮がしみる、かゆいは危険信号!いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)、『脱白髪染めのはじめかた〜でもいきなりグレイヘアは無理』(グラフィック社)がある。 @namiikuma_hairista
COURTESY OF NAMI IKUMA

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