アメリカで広がる、スタートアップ志向や働き方の改革、フェミニズム。その流れを受けて、女性をサポートする女性限定ビジネスが増加中だ。なかでも人気を集めている「ザ・ウィング」に潜入取材した

BY KATHERINE ROSMAN, PHOTOGRAPHS BY HILARY SWIFT, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI (RENDEVOUS)

画像: ザ・ウィングは、女性限定の会員制クラブ兼コ・ワーキングスペース。つまり、男性は入場不可ということだ

ザ・ウィングは、女性限定の会員制クラブ兼コ・ワーキングスペース。つまり、男性は入場不可ということだ

 ジムに勤めていた頃と同様、カサーンはどんな職業でどんな年齢の会員がいつザ・ウィングを使っているのか、その利用パターンを知ることにとりわけ注意を払っている。カサーンとゲルマンは宗教や人種、性的指向、性の自己認識を含む統計的なデータを分析して、会員のなかで抜けているのはどういった人たちなのかを検討している(たとえば、ふたりは医師のメンバーをもっと増やしたいと思っているようだ)。内部的には、このプロセスを「少数派主導の会員制」と呼んでいる。
「私たちがより会員について理解するために、ソーシャルメディアのプロフィールを送ってくれるようにお願いしているの」とゲルマンは言う。

 33歳のレイヴン・ストラローは、中毒患者とその家族をサポートする仕事をしている。夫と所有するニューヨーク州北部の農場を拠点にしているが、頻繁にマンハッタンでミーティングを行うため、コ・ワーキングスペースを利用しようと料金を比較してみた。ラッドロウ・ハウスを見学したときは、人々がわざとらしいくらいに格好つけているように思えた。WeWorkをチェックしたときは、噂に聞く“飲みの文化”が好きになれないように感じた。インスタグラムでザ・ウィングを見つけて問い合わせをしたものの、自分は入会できないだろうと思ったという。「私はたくさんのインスタグラムのフォロワーがいるわけでもないし、何かコンテンツをキュレーションしたこともなかったから」とストラローは言う。

 しかし、すぐに入会が認められ、この場所をとても心地よく感じながら利用している。「私は白人ではないし、髪も自然なままにするのが好き」。ザ・ウィングの化粧室には、そうした彼女の髪に合うブラシやアイテムも置かれていて、「多様性を尊重する努力がすごく感じられるのよ」と語る。

 だが、いまだ課題は残る。会費とは別に、1時間につき30ドル支払うとセミプライベートなワークルームが使えたり、食べ物やコーヒー、ワインなどのスナックバーが利用できるのだ(食べ物の持ち込みは禁止されている)。こうしたシステムゆえ、会員の経済的なダイバーシティには限界があるようだ。

 カサーンとゲルマンは、このシステムがエリート主義だと批判されることを気にかけており、2018年からは奨学金制度を開設する予定だと説明してくれた。「もともと事業を立ち上げることが目標だったわけでもないし、超富裕層向け商品を提供するビジネスをするつもりもなかった。私たちがやろうとしているのは、そういうことではないの」とゲルマン。

 今、アメリカ文化における進歩主義的な人たちは、男か女かの二極ではない、より流動的なジェンダーの解釈を求めている。そんな中、女性限定の企業であるザ・ウィングは、マーケティングにおいても興味深いポジションを占めている。『No Man’s Land』の表紙をトランスジェンダーの女優であるネフが飾っていることは、フレキシブルなジェンダー解釈のひとつの証といえるだろう。

 もし、男性のように見えるが自分は女性だという人が入会を申請してきたらどうするのか? ゲルマンは、その人物のSNSをチェックするなどして、『女性として生きている』指標があるかどうかを探るだろうと言う。彼女たちは、自分たちのポリシーを構築するために女子大の規則に注目した。たとえばバーナード大学では、「一貫して女性として生き、自らを女性として認識している入学希望者については入学を検討する」と規定している。

 そういった女子大の英語のカリキュラムの中核にあるのが、作家ヴァージニア・ウルフだ(※訳注:ウルフは「女性が小説を書くためには、お金と自分だけの場所を持たなければならない」と評論で主張した)。その守護霊はまだ、この会社の上をさまよっている。ゲルマンは言う。「女性は自分だけのための場所を持つことが当然だと、私たちはずっと信じているの」

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