アメリカで広がる、スタートアップ志向や働き方の改革、フェミニズム。その流れを受けて、女性をサポートする女性限定ビジネスが増加中だ。なかでも人気を集めている「ザ・ウィング」に潜入取材した

BY KATHERINE ROSMAN, PHOTOGRAPHS BY HILARY SWIFT, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI (RENDEVOUS)

男性の配管工と、これからの課題

 話を戻すと、ソーホーのブロックをぐるっと囲むように列を作っていたのは、既存の会員より前にザ・ウィングの新しいスペースに入ることを許された、新会員の女性たちだった。

 新会員たちは、タロットカード占いや、政治的なスローガンやフェミニストの標語がついたボタンを作るコーナー、美容液を調合するテーブル、有権者登録をするブースなどのまわりに群をなした。食べ物やワイン、ザ・ウィングの“W”をかたどった巨大なライスクリスピー(米のシリアルとマシュマロを固めたケーキ)もある。その光景は、まるで女子大の新入生交流会のような、ぎこちない興奮に満ちていた。

 ひとりでソファーに座っていた24歳のマンディ・ニャンビは、デジタルプラットフォームを運営する会社で働いている。ザ・ウィングのすべての拠点を利用できるように年間3,000ドルの会費を支払っているメンバーのひとりだ。「ほかのコ・ワーキングスペースを使用しても同じぐらいの費用がかかる。それに、いろいろな女性との貴重な人脈が作れるのは見逃せないメリットだったの」とニャンビは言う。彼女は、このブームが終わった後も、ザ・ウィングが仕事をしたり、まじめなつながりを生む場所であり続けることを切に願っている。「来てみたらちょっぴり圧倒されちゃったけどね」

画像: 女性だけのチームがデザインしたスペース。インテリアデザイナーのヒラリー・コイフマンはインテリア雑誌『Domino』でザ・ウィングのデザインについて、「男性抜きの『マッドメン』みたいなイメージ」だと表現した

女性だけのチームがデザインしたスペース。インテリアデザイナーのヒラリー・コイフマンはインテリア雑誌『Domino』でザ・ウィングのデザインについて、「男性抜きの『マッドメン』みたいなイメージ」だと表現した

 50歳の新会員、マルギット・デトワイラーは、後ろの方から人々を眺めていた。ブルックリン在住の彼女は、マンハッタンに休憩所のようなものがほしくて入会したのだという。「まわりの全員が女性だけのスペースにいるという経験って、そうそうないわよね」と言うデトワイラーは、40歳以上の女性のためのオンラインマガジン『TueNight』とライブイベント会社の創設者だ。「ここには明らかにエネルギーがあるわ」(ザ・ウィングの創設者2人は、ミレニアム世代以外の会員も増やそうとしていると語る)。

 ゲルマンとカサーンはパーティ会場をめぐり歩き、新会員に挨拶して回った。ゲルマンはレッドブル1本とiPhoneを持ち、カサーンは1月に予定日を控えた初めての子どもをお腹に身ごもりながら。オープンまでの長い長い一週間、1日18時間も立ちっぱなしの日が続いた。ふたりはパーティの準備で家に帰る余裕もなかった。というわけで、当日の身じたくはシャネルの製品でいっぱいの化粧室で整えた。

 現在、多くのブランドが、ザ・ウィングの会員にアプローチしたマーケティングを目的に費用のスポンサードを行なっている。去年の秋の初めには、シャネルの香水の大瓶が会員ひとりひとりのもとに送られてきた。フラットアイアン地区のスペースではHuluのスポンサーのもと、ネット配信ドラマ『侍女の物語』のイベントが開かれたこともあった。会場では、原作者マーガレット・アトウッドがこのイベントのために作ったスペシャル・ビデオも上映された。

 こうしたイベントやギフトの誘惑もあって、メンバーたちはなかなかこのスペースから離れようとしない。22歳でZ世代(ポストミレニアル世代)のスカーレット・カーティスは、ロンドンのサンデータイムズ紙のコラムニストで、ニューヨーク大学の学生でもある。彼女はインスタグラムでゲルマンをフォローしていて、ザ・ウィングの存在を知った。初めの6カ月は両親が会費を支払ってくれていたが、現在は自分で払っているという。

 父親に彼氏がいないことを嘆くと、「だったらザ・ウィングで始終たむろするのをやめなさい」と言われたという。父は、ザ・ウィングを訪れることができないから嫉妬しているのよ、とカーティスは言う。ある日、男性の配管工が来ることになった際には、メンバー間のコミュニティ構築をサポートするスタッフが「男性がスペースに足を踏み入れることを会員全員にお知らせしなくちゃ」と言っていたと、彼女は面白がって教えてくれた。

 ゲルマンとカサーンは、この会社の運営に必要なすべてのサービスにおいて、なるべく女性を雇ったり、女性に仕事を依頼するように心がけているという。しかし同時に、性差を問わないことが最重要なときもある。

「私たちが依頼した電気技師も女性ではないし」と、会議室でカサーンは言う。「ビジネスが機能するためには、それもしかたがないことだから」とゲルマン。

 

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