寡作にして、新作ごとに数々の賞に輝く映画監督ジャック・オディアール。待望の最新作『ゴールデン・リバー』は、アカデミー賞の常連でもある名優たちが競演する“ウェスタン・サスペンス”だ

BY REIKO KUBO

 監督デビュー作『天使が隣で眠る夜』(1994年)からカンヌ国際映画祭のパルム・ドールに輝いた前作『ディーパンの闘い』(2015年)まで、新作ごとに新しい語り口で世界を驚かせる鬼才ジャック・オディアール。当代一のフランス人監督と目される彼が、ハリウッドきっての名優たちと組んで“西部劇”を撮るというニュースは、世界の映画ファンを興奮させた。

 そしてついに全貌を現した新作『ゴールデン・リバー』は、ゴールドラッシュ時代の殺し屋、シスターズ兄弟を主人公にしながらも、西部劇の型に納まり切らない、夢と現実の狭間で煩悶する男たちの人間ドラマに仕上がっている。

画像: 1851年、アメリカはオレゴン。暴力的な父親に育てられた兄弟は、泣く子も黙る殺し屋シスターズ・ブラザーズとして名をとどろかせていた。辺り一帯を仕切るボスから兄弟に下された指令は、情報屋モリスが探しだす男ウォームを追い、始末することだった

1851年、アメリカはオレゴン。暴力的な父親に育てられた兄弟は、泣く子も黙る殺し屋シスターズ・ブラザーズとして名をとどろかせていた。辺り一帯を仕切るボスから兄弟に下された指令は、情報屋モリスが探しだす男ウォームを追い、始末することだった

「『ゴールデン・リバー』という映画は、僕にとって、そこにいるだけで強烈なインパクトを与えるアメリカ人俳優たちとの出会いの旅になった。そもそもは、『君と歩く世界』を出品したトロント映画祭で、主演のひとりジョン・C・ライリーに出会ったことが発端だった。彼が映画権を買った小説『シスターズ・ブラザーズ』を読んでほしいと言われたんだ。これまで人から勧められた企画を映画化したことはなかったんだけれど、原作に夢中になって監督を引き受けたよ」

 原作の『シスターズ・ブラザーズ』は、ブッカー賞候補にもなったパトリック・デウィットによるベストセラー。映画では、面倒見のいい兄イーライ・シスターズを本作のプロデューサーでもあるジョン・C・ライリーが、そして凶暴な弟チャーリー・シスターズを『her/世界でひとつの彼女』(2005年)などのホアキン・フェニックスが演じる。

画像: 穏やかな微笑みをたたえたウォームの登場によって、黄金をめぐって出会った男たちの運命がスリリングに交錯する。森を流れる川をせき止め、ウォームの発明の成果に歓声を上げた男たちだったが……

穏やかな微笑みをたたえたウォームの登場によって、黄金をめぐって出会った男たちの運命がスリリングに交錯する。森を流れる川をせき止め、ウォームの発明の成果に歓声を上げた男たちだったが……

 そして兄弟が追う、黄金を見分ける方程式を発見した化学者ウォームに『ナイトクローラー』(2014年)のリズ・アーメッド、ウォームを追い、彼の行方を兄弟に書き送る情報屋モリスに『ブロークバック・マウンテン』(2005年)のジェイク・ギレンホール。オディアールが強烈なインパクトと語ったとおり、まさにアカデミー賞の常連でもある名優・怪優の競演である。

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