BY SATOKO HATAKEYAMA, PHOTOGRAPHS BY KAZUKI NAGAYAMA (S-14), STYLED BY KOHTA KAWAI, HAIR & MAKEUP BY GO IKEGAMI (NICOLASHKA)
役のコントラストは強ければ強いほどやる気が出ます
2022年は本当にいろいろなことがあった。ヨーロッパの一角では戦争が始まり、極東では政治家が銃撃され、新型感染症の波は引いては寄せてを繰り返し、気候変動に至っては待ったなしの状態に。未来への不安と閉塞感をより肌身に感じるからなのか、今年は特にスクリーンやテレビで繰り広げられる物語のヒーロー、ヒロインが、ひときわ輝いて見えたという方も少なくないのではなかろうか。
かくいう筆者もその一人。今年の前半はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に初回から登場した、ひとりの武将に目が釘づけだった。その立ち姿は凜々しく荘厳。坂東武者の鑑と讃えられるほどの武勇伝を持ち、時の権力者にあらぬ疑いをかけられ滅亡するに至る。そんな気高い武人の姿はあまりにも魅力的で、日頃の鬱屈とした気持ちを大いに奮い立たせてくれた。その人物・畠山重忠を演じたのが、中川大志、この人だ。自らの潔白と信念を貫いた傑物の生涯を見事に表現したのはもちろん、24歳の若さで演じきったことも大いに注目された。見栄えも麗しい中川=畠山氏の活躍は放送回を重ねるごとに話題となったが、史実をもとにした作品というのは結末を知っているだけに残酷なもの。歴史に刻まれた壮絶な最期を描いた回では、SNSのタイムラインがお通夜状態になるほど。そんな騒ぎを、中の人である中川自身はいかに眺め、どう感じていたのだろう。
「最後の出演回が放送されて1カ月以上になりますが、行くところのほとんどで畠山重忠役のことを褒めていただけます。大河ドラマは4回目の出演になりますが、初回から参加するのは今回が初めて。10代から40代までの武士の生涯を演じるので、視聴者の方々に育てていただいたと感じていますし、1年以上演じてきて特別な思い入れもありました。自分では思いもしなかったこれだけの反応をいただけたのは率直に驚きましたし、うれしかったです」
だがしかし、そんな中川がわれわれに見せてくれる次回作は、意外や意外、サンタクロースの存在をテーマにしたクリスマスコメディだ。映画『ブラックナイトパレード』で中川が演じるのは、主人公がアルバイトをするコンビニの同僚。安っぽい金髪姿で歯が1本欠け、主人公をイラッとさせることにかけてはピカイチの「チャラ男」なのである。ビジュアルのギャップはもちろんのこと、大河ドラマで見せた役柄とは、時代や設定をも軽々と飛び越えた正反対の役どころ。観る側の期待をいとも軽やかに裏切ってみせるその勇姿は、驚きを超えて痛快でさえもある。「そうきたか⁉」と思わず声に出てしまいそうな(筆者はもちろんそうなった)役柄には、オファーを受けた際に、中川自身もややとまどってはいたようだ。
「ここまで振りきったアッパーな役は初めてでしたから、お話をいただいたときは『うーん、これを演るのか』というのが正直な気持ちでした。自分にない部分を無理やり引っ張り出し、さらにそれを増幅させることでなんとか演じきった感覚です。福田雄一監督から言われたのは『ウザさを大事に』ということ。現場ではことあるごとに『このシーン、ウザさを◯割増しで』と声がかかったぐらいなので、間が少しあいたりすると、役のエネルギー量に自分が追いつかなくなっていたようで(笑)。作品は心に刺さる深いテーマ性があるうえに、僕の役が笑いの要素を背負っている割合が大きいので、撮影に入る1週間前までプレッシャーで寝られなかったほどです」
フレッシュでクリーンなイメージが常にあるが、小学生の頃にスタートした俳優としてのキャリアはもう13年になる。小中高と、勉学との掛け持ちで俳優の仕事をこなし、中学生の頃にはすでに俳優を生業とすることを決めていたという。「この仕事以上にわくわくすることがなかったから」と高校卒業後は進学をせず、俳優という仕事に向き合うことを決心した筋金入りなだけに、以降の活躍は周知のとおり。映画、ドラマ、広告と、端正な顔だちと独特の柔らかな声色で、数多くの印象的な役を演じてきた。現在も明治座での音楽劇の舞台に出演中で、中川本人に当て書きされたという昭和歌謡版リチャード三世を演じている。王道の二枚目路線だけでなく、シリアスな役柄からファンタジー、コメディまでをも縦横無尽にこなしてみせる振り幅に、中川大志という俳優の内なる熱量が見え隠れする。
「とにかく観ている人をびっくりさせたいんです。みなさんがイメージしている自分とガラッと違うことをやりたいというのは、10代でこの仕事を始めてからずっと思っていて、実践していること。未体験のものには積極的にトライしていきたいし、役のコントラストが強ければ強いほどやる気が出ます。だから『ブラックナイトパレード』でのチャラ男の役もとても愛しくて、とても大好きな役でした。観てくださる方が前とは違う僕を観て、驚いて面白がってくれるなら、俳優としてこんなに喜ばしいことはないですね」
そんな中川にとっての2022年とは、どんな年だったのだろう。インタビューの最後に問うてみると、「気づいたらあっという間にすぎていました。自分にとってはチャレンジもあり、変化の大きい年でした」と気負いはない。とはいうものの、大河ドラマで大反響を呼び、舞台では座長としての重責を担い、ガチなコメディではテンションをMAXまで振りきった24歳にとっては、また新たな地平が切り開かれた大変革の年だったともいえるのではないだろうか。そしてわれわれは来年もまた、荒唐無稽な物語に没頭し、感極まって落涙し、最後は笑って憂さを晴らし、前へ、未来へと進んでいく。中川大志は新しい年も、意表をついた役どころで、観る側を大いに驚かせてくれるだろうか。期待は大きく膨らむばかりである。
中川大志(なかがわ・たいし)
1998年、東京都生まれ。2009年にドラマデビュー。以後、映画やドラマなど数多くの話題作に出演。初座長を務める音楽劇『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』が12月25日まで、明治座ほかにて上演中。2023年2月には北村匠海とダブル主演の映画『スクロール』の公開も予定されている。公式サイトはこちら
映画『ブラックナイトパレード』は12月23日公開
福田雄一を監督に迎え、中村光原作の大人気コミックを実写化した話題作『ブラックナイトパレード』。吉沢亮、橋本環奈、中川大志、渡邊圭佑という若手実力派4人が繰り広げる、サンタクロースの真実に迫る物語を痛快に描くクリスマスコメディだ。中川さんが演じるのは、主人公のよきライバル田中皇帝(たなかかいざー)。原作キャラを裏切らないビジュアルで、主人公をイライラさせて笑いを誘いながらも、物語の鍵を握る重要な役どころを熱演。その演技力の幅広さをじっくり堪能したい。
中川大志さんの直筆サイン入りチェキを1名様にプレゼント!
今年の活躍を振り返り、演技に対する想いを語ってくれた中川さん。今回は特別に、直筆サイン入りチェキを1名様にプレゼント! ご希望の方は下記よりご応募ください。
締め切り:2022年12月25日(日)12時まで
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