BY VALERIYA SAFRONOVA, PHOTOGRAPHS BY DIEDRE SCHOO, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
真鍮のチューブでつくったウサギの耳、玉虫色に輝くパーツでできたブラトップ、ゴールドパーツを組み上げた王冠。NY、ブルックリンにあるローラ・ワスのアトリエに足を踏み入れ、最初に目に入るのはこういったフューチャリスティックなアイテムの数々だ。とことんハッピーでかつ都会的でもあるこれらのアイテムは、アメリカのアニメ「宇宙家族ジェットソン」に登場するジェットソン一家の母ジェーンが、若かりし頃に銀河のレイヴ・パーティで身につけていたかのような趣がある。
かなり変わったルックスながら、すでに多くの人がローラの手がけたアイテムを目にしているはずだ。たとえば、ビヨンセの『7/11』のミュージックビデオ。瞑想をしたりくるくる回ったりするビヨンセの頭上に載っている、メタルパーツで覆われたサンバイザー型の王冠がそうだ。先日、NYとフィラデルフィアで行われたエリカ・バドゥのライブで、彼女のアイコン的な縦長のハットを覆っていた星形の八面体オブジェもそう。そしてチャイルディッシュ・ガンビーノ、ことドナルド・グローヴァーの最新アルバム『アウェイクン、マイ・ラブ!』のジャケットに使われている、白いパーツが顔の周りを後光のようにとりまくヘッドピース。彼は8月19日、NYのラジオシティ・ミュージックホールで開催されたコメディ俳優デイヴ・シャペルによる8月限定のレジデンシー(滞在型)公演に参加。このヘッドピースと同じパーツを6、7個ほど使ってパフォーマンスを行ったという。
ローラは、もっと控えめなジュエリーもつくっている。たとえば、小さなピラミッド型のパーツのついたネックレス、金属製のシンプルなバングルや細いチェーンのぶら下がったブレスレットなど。だが、ローラは突飛なアイテムこそ彼女のブランドの真髄だと考えている。「こういう派手なアイテムは、思いっきり自己表現するため、スーパーヒーローみたいな存在になるためのものよ」とローラ。「それは、自分の心に誠実であると同時に冗談みたいな行為でもある。だけど私としては、そこにこそ、このブランドの価値があると思っているんです」
ローラのつくるアイテムは、メッキ加工、もしくはパウダーコーティングがなされた大量の金属製チューブとビーズ、それに太いゴムひもでできている。たとえばチャイルディッシュ・ガンビーノのアルバムジャケットに登場したヘッドピースには、チューブ157個とビーズ824個を使用した。
「制作しているときは、できる限り効率よく、無駄なく作業するよう心がけています」とローラ。ひとつのアイテムにつき、ゴムひもの結び目を一か所だけにするのが目標だ。「無駄な要素ははぶきたい。理想を言えば、ゴムひもの始まりと終わりを結ぶだけですべてがつながるようにしたいの。まるで数学の問題を解いているようなものね」