BY ASATO SAKAMOTO
2018年5月24日、東京・港区のイタリア大使館で「Pomellato(ポメラート)」が主催する「Pomellato For Women(ポメラート・フォー・ウィメン)」のイベントが開催された。Pomellato For Womenは、あらゆる女性に向けて「すべての多様性の素晴らしさと、女性であることを讃えよう」というメッセージを発信するとともに、ブランド創立50周年を記念して昨年立ち上げたキャンペーンだ。イベントを夜に控え、ポメラートのCEOであるサビーナ・ベッリ氏に話を聞くことができた。
サビーナ氏は、数々のラグジュアリーブランドで重要な役職を果たした後、2015年よりポメラートのCEOに就いている女性。インタビュー当日は、ステラマッカートニーのシンプルなジャンプスーツに、腕にはポメラートの「TANGO」シリーズの大ぶりなブレスレットを合わせたモダンでシックな装い。ビッグサイズで洗練された印象のブレスは、大小のダイヤが奥ゆかしい輝きを放っていた。
はじめに「Pomellato For Women」を立ち上げた理由について聞くと、「それには4つの大きなポイントがあります」と、彼女は語り始めた。その4つを表現し、ブランドに対する自分たちの情熱を広く伝えることがキャンペーンの目的だと。
まずひとつは、ポメラートが1967年に創立されたジュエラーであること。その年であったことがとても重要だという。
「1967年という年は、イタリアの女性にとってとても意味深い年でした。’67~68年にかけて女性たちは社会の中で独立し、仕事をするようになりました。つまり、女性たちのライフスタイルに革命が起きた時代だったのです。ポメラートは、そんなふうに社会へ出て行った女性たちが、毎日身につけることができるブランドとして誕生しました。ジュエリーにもさまざまな種類があって『これを身につける日はいつ来るのかしら……』というようなものもありますが、そういったものはポメラートのジュエリーではありません。そういう特別な時って、なかなか来ないものですよね(笑)」
ふたつめは、今に至る50年のあいだポメラートがずっと女性たちを見つめ、ときにはアイデアや提案を投げかけてきたということ。
「ポメラートは、女性たちが自分自身にもっと自信を持つために何が必要なのかを常に考え、ずっと女性のためのジュエリーであり続けてきました。私たちのお客さまは心の内に強い個性やキャラクターを秘めている方が多いと感じているのですが、それをさらに外へ表現していく必要があると考えています。ただ見た目が美しいということだけではなく、これからの女性には“自分らしさ”が必要なのです」
3つめは、デザインや素材に対する美意識だ。ポメラートは時代や流行に流されず、自分たちの価値観を信じ、独自の世界観を築いてきた。
「ポメラートのジュエリーはフォルムがミニマルです。日本の美意識とも通じるところがあると思いますが、ミニマルであることによって、身につけた人の個性をより引き出してくれるジュエリーなのです。それから、カラーストーンに新しいフォルムを与えたのもポメラートではないかと思います。伝統的なストーンと言えばダイヤ、エメラルド、サファイア、ルビーなどがありますが、これらは今、採掘量が少なくなっています。次の重要なカラーストーンと言われているのが、アメジスト、アクアマリン、クオーツ、ターコイズ、タンザナイトなどです。アクアマリンはこれまでさほど人気のない石でしたが、つい最近の英国のハリー王子とメーガン妃のロイヤルウェディングで一躍、注目を浴びています。でも、私たちは何十年も前からアクアマリンを使ってきました。これも、私たちのデザインの正当性を示すひとつの証左ではないでしょうか」
最後に挙げたのは、ポメラートのクリエイションを支えるクラフトマンシップについて。ポメラートは自社工房の中に、熟練した技をもつ職人“マエストロ・オラフィ”を100人以上抱えている。
「マエストロ・オラフィは、日本でいう人間国宝と少し似ているかもしれません。このような職人は国内でも非常に少なくなってきていますが、私たちのジュエリーは彼らの技がないと作り続けることができません。そこで次世代のマエストロ・オラフィを生み出すため、私たちはポメラートアカデミーという、職人を排出するアカデミーを創設しました。工業製品が悪いというわけではありませんが、職人による手作業でないとできないことがまだまだあるのです」
「Pomellato for Women」というキャンペーンは、単なるアニバーサリーイベントではなく、これら4つの理念や情熱をさらに強靭なものとし、ブランドの真価を自ら問い直す重要なものとして位置づけられているようだ。昨年、イタリアではアンバサダーとしてキュレーターのキャロライン・コルベッタ、ブランドアドバイザーのエレナ・ノニーニなど4名を選出し、キャンペーンビジュアルの撮影は、力強いモノクロポートレートで知られる巨匠ピーター・リンドバーグが行った。
通常、このようなキャンペーンには、ミューズとしてモデルや女優を起用することが多いが、ポメラートはリアリティがあり社会的キャリアを持つ女性たちを選んだ。それはサビーナ氏が話した通り、ポメラートというブランドが、外へ、社会へと発信する女性のためのジュエリーを作り続けてきたからだ。そして、そのキャンペーンの舞台を日本へ移したのが今回のイベントである。当日は、ブランド初の「Pomellato For Women Award」が、アーティストのスプツニ子!さんに授与された。
「東京大学准教授でもあるスプツニ子!さんは、テクノロジーが社会や人々の価値観をどのように変えていくかを研究する映像やマルチメディアインスタレーションでよく知られており、特にジェンダーに関する問題に焦点を当てています。セクシャリティやフェミニズムといった問題をとり上げる彼女の作品は、挑発的、型破り、最先端と評されており、ポメラートはこの芸術に対する新鮮で革新的なアプローチに共通点を見出します」
サビーナ氏はスプツニ子!さんへの授賞についてそうコメントし、慣習にとらわれず、自由に表現し続ける女性たちにエールを贈った。
「身につけるとどこからか勇気が湧いてくる。ジュエリーのそんな魅力的な魔法は、ずっと消えないと思いますよ」
現代を生きる女性に、ジェエリーはどんな力を与えることができますか? と最後に訊ねると、サビーナ氏はそう断言してくれた。そして、その魔法は女性だからこそ引き出せるものでもあると。「だって、女性のほうがジュエリーを信じる力を持っているでしょう? 私たち自身がその力をもっと信じれば、女性は今よりもっと勇気のある存在になれる。私はそう思っています」
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ポメラート
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