BY JOHN WOGAN, ILLUSTRATIONS BY AURORE DE LA MORINERIE, TRANSLATED BY MASANOBU MATSUMOTO
日本人デザイナー髙田賢三が古美術品の蒐集を始めたのは、90年代初頭、パリのバスティーユにある約1,300平方メートルのタウンハウスの室内装飾を行っているときだった。彼は1970年にファッションブランド、ケンゾーを設立し、’99年にクリエイティブ・ディレクターを退任。現在81歳になった。今、惹かれているのはアフリカやアジア、ギリシャの古代彫刻や楽器、置物、そして仮面だという。「こうした芸術品や、その背景にある物語を学び始めたら、装飾的な美しさと同時に歴史的価値もわかるようになった」。
蒐集品は300を超え、2009年に移り住んだセーヌ川沿いのオスマン様式の家に収蔵。こうした品々の多くを日本と香港(彼は年6回、アジアを旅する)、またパリのお気に入りの骨董品店で手に入れているそうだ。この1月、髙田はカラフルで東洋的なホーム&ライフスタイルブランド、K三(ケイスリー)を設立。今年はテキスタイルや壁紙、寝具、陶器、ラグを取り扱う。
「舞踏の際に使われていた仮面。白い顔料で塗られた顔など、ガボンのものだが、どこか日本的な美意識を思わせるところがあり、惹かれた」

木製の仮面、プヌ族、ガボン共和国、17世紀頃
「非常にエレガントなプリーツ入りの修道服をまとった立像。ギリシャ・ローマ風の典型的な彫像で、これがクシャーナ朝の仏像のモデルになった」

石仏、クシャーナ朝、パキスタン、2世紀頃