文学、美学、IT、舞台芸術。それぞれの分野で羽ばたく4人の女性がまとうのは、飛翔の力となるジャケット。彼女たちの活躍は、進むべき道を描き出し、その先へと力強く導く

BY AKANE WATANUKI, PHOTOGRAPHS BY WAKABA NODA(TRON), STYLED BY MIHOKO SAKAI

作家・川上未映子

画像: 柔らかいフラワープリントドレスに合わせたのは、かっちりとしたスタンダードなテーラードジャケット。ベージュベースのチェックにミドル丈がモダンな薫りを醸し出す。硬軟を織り交ぜたジャケットスタイル ジャケット¥324,500、ドレス¥445,500、イヤリング¥95,700、ブーツ¥258,500/セリーヌ バイ エディ・スリマン セリーヌジャパン TEL. 03(5414)1401

柔らかいフラワープリントドレスに合わせたのは、かっちりとしたスタンダードなテーラードジャケット。ベージュベースのチェックにミドル丈がモダンな薫りを醸し出す。硬軟を織り交ぜたジャケットスタイル

ジャケット¥324,500、ドレス¥445,500、イヤリング¥95,700、ブーツ¥258,500/セリーヌ バイ エディ・スリマン
セリーヌジャパン
TEL. 03(5414)1401

 2019年に川上未映子さんが上梓した『夏物語』。この世に生命を生み、生まれる意味を問う衝撃的なこの長編小説は、たくさんの言語に訳され、25カ国以上で刊行されることが決まっている。「これほど読まれているのは訳者の力も大きい。英訳をデビッド・ボイドとサム・ベットに頼んだ際、翻訳力だけではなく、彼らがどんなものを見聞きし感じてきたかも大事にしました。訳者とはできるだけ話し合って信頼関係を築きたい」。

 近年の欧米でのアジア女性作家ブームは喜ばしい半面、翻訳の質の問題が横たわり、日本語というマイノリティ言語のある種の限界も感じる。そのなかでヘブライ語やネパール語など、読めない言語でSNSに感想が寄せられたのは新鮮な驚きだった。「他国でも『自分と同じだ』『私たちの物語』という反応が多く、そこは日本と変わらないと興味深く思った点です」。

 今後も同じ訳者チームによる英訳『ヘヴン』『すべて真夜中の恋人たち』など長編小説の海外展開が続く。フィールドを世界に広げている今、文学にできることは何だと考えるのか。「多くの人が思う希望や幸せに同調を求められますが、その希望や幸せという概念を揺らし、疑い破る力のきっかけとなる。それが文学や芸術にできることではないかと思います」

川上未映子(MIEKO KAWAKAMI)
大阪府生まれ。2007年『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、2008年『乳と卵』で芥川賞など受賞歴多数。2020年にはニューヨーク・タイムズの“The Big Ideas”寄稿者に選出。『夏物語』の英訳版『Breasts and Eggs』が同紙の「今年の100冊」など、各国のベスト作品に選ばれている

HAIR BY MASATOSHI TAKEDA(ELME), MAKEUP BY MIEKO YOSHIOKA

美学者・伊藤亜紗

画像: ジャケット&スカートとボウタイ付きブラウスを彩る、ジオメトリックパターン。モノクロームにゴールドのチェーンベルトが映える ジャケット¥341,000、ブラウス¥176,000、スカート¥165,000、イヤリング¥52,800、リング¥41,800、ベルト¥126,500/グッチ グッチ ジャパン クライアントサービス フリーダイヤル:0120-99-2177

ジャケット&スカートとボウタイ付きブラウスを彩る、ジオメトリックパターン。モノクロームにゴールドのチェーンベルトが映える

ジャケット¥341,000、ブラウス¥176,000、スカート¥165,000、イヤリング¥52,800、リング¥41,800、ベルト¥126,500/グッチ
グッチ ジャパン クライアントサービス
フリーダイヤル:0120-99-2177

 伊藤亜紗さんは昨年から利他学を研究している。利他とは自分でないもののために行動すること。「利他は一見、善い行いをすることというイメージがありますが、障害のある人と一緒に過ごしていると、利他的と思われる行為が案外そうなっていないことに気づきました。つまり、先回りの配慮が、相手を支配することにつながってしまうのです。利他は想定外のことを受け止める“器”のようなものだと考えられます」。たとえばスケジュールや役割に余裕や隙間があれば、相手の潜在的な可能性を引き出すことができるという考えだ。

 現在調査中なのは若い世代の利他について。効率重視で余裕のない彼らは利他をどう考えるのか。「今の若い世代は自己肯定感の低い人が目立ち、何かをしてもらっても自分にそんな価値はないし、返せないから借りをつくりたくないと考えがちです」。彼らは利他を受け取るのが苦手。恋愛を貸し借りで捉えてしまい、結婚にも消極的。人への依存に対する罪悪感も強い傾向がある。「でも返せないものはたくさんあるし、返さなくてもいいと思うんです。知らないうちに直接の相手以外の誰かに返しているかもしれない。言われたことの意味を受け取れるまでに10年かかることもある。受け取ったものを抱えていくことが大事なのではないでしょうか」

伊藤亜紗(ASA ITO)
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。美学を専門とし、アート、哲学、身体に関わる考察など越境した研究を進める。2020年、『記憶する体』(春秋社)などの業績でサントリー学芸賞を受賞。『手の倫理』(講談社選書メチエ)、『「利他」とは何か』(集英社新書)など著書多数

HAIR & MAKEUP BY MOMIJI SAITO(EEK)

ポリネーター® 西村真里子

画像: ソリッドなテーラードジャケットに見えながら、袖を通すとエフォートレスなシルエットに驚く。フラップポケットの内側からちらりとのぞくモノグラムにさりげない遊び心が ジャケット¥426,800、ニット¥163,900、パンツ¥196,900、ネックレス¥145,200/ルイ・ヴィトン ルイ・ヴィトン クライアントサービス フリーダイヤル:0120-00-1854

ソリッドなテーラードジャケットに見えながら、袖を通すとエフォートレスなシルエットに驚く。フラップポケットの内側からちらりとのぞくモノグラムにさりげない遊び心が

ジャケット¥426,800、ニット¥163,900、パンツ¥196,900、ネックレス¥145,200/ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
フリーダイヤル:0120-00-1854

 肩書の“ポリネーター®”は受粉者の意。西村真里子さんがIT系のさまざまなキャリアを経てたどり着いたのは、テクノロジー、ビジネス、クリエイティブの間を受粉役としてつなぎ、未来への可能性を開く役割だ。「海外のIT系大型イベントを定点観測しているのですが、それがすべてオンラインに切り替わりました。国内ではレガシーな企業の重役とお会いするのもオンラインになり、名刺交換もありません。時代の大きな変化を感じます。この流れの先には固定観念を超えるビジネスが生まれる気がします。そのような新しいことに挑戦している企業や個人を可視化し、応援したい」。

 その一つとして若い人のスタートアップビジネスの支援をしている。現在は29歳の女性が和菓子をアメリカで展開する事業や、水問題に取り組む日本のスタートアップをサポート。また情報の透明性にも言及する。「企業や国の代表もソーシャルメディアで発信する時代です。噓はNG。何を大切にしているのか、企業も個人も透明性をもって発信すると、共鳴してもらいやすい世の中に変わりました。私自身、情報の発信から思いもよらないよい展開につながることがあり、リモートでも積極的に発信をすれば新たなプロジェクトが生まれるのを実感しています」

西村真里子(MARIKO NISHIMURA)
国際基督教大学卒業後、日本IBMに入社、ITエンジニアに。アドビシステムズを経て、バスキュールでプロデューサーとなる。2014年に独立し(株)HEART CATCHを設立、代表に。自社をはじめ、スタートアップ企業や官公庁のプロジェクトに携わっている

HAIR & MAKEUP BY MOMIJI SAITO(EEK)

バレエダンサー・高田 茜

画像: リラックス感のあるジャケットにブラウスを重ねて。ダブルベルトのスタイリングは、ジャケットの可能性を大きく広げる ジャケット¥561,000、ブラウス¥198,000、スカート¥451,000、イヤリング(右耳)¥69,300、(左耳)¥60,500、ネックレス¥75,900、リング¥53,900、ベルト¥137,500、靴¥135,300/ディオール クリスチャン ディオール フリーダイヤル:0120-02-1947

リラックス感のあるジャケットにブラウスを重ねて。ダブルベルトのスタイリングは、ジャケットの可能性を大きく広げる

ジャケット¥561,000、ブラウス¥198,000、スカート¥451,000、イヤリング(右耳)¥69,300、(左耳)¥60,500、ネックレス¥75,900、リング¥53,900、ベルト¥137,500、靴¥135,300/ディオール
クリスチャン ディオール
フリーダイヤル:0120-02-1947

 代役ではあったが2月に東京の舞台で久しぶりに踊った高田 茜さん。昨年はロンドンがロックダウンになり、プリンシパルを務める英国ロイヤル・バレエ団の公演や活動も見合わせとなった。「自宅待機中は不安が大きく、落ち込みました。でも一旦日本に戻り家族と過ごしていたら、よい意味で吹っ切れて。もともと自分をネガティブに捉えがちでしたが、『大丈夫、頑張っているよ』と肩をポンポンと叩いて言い聞かせられるようになりました」。

 それにはバレエ団のサイコロジストからの「今できることに一つずつ集中する」という助言を思い出したのも大きかった。踊れない期間、自分と向き合い、できることは何かを模索したという。「人のやさしさに触れ支えてもらい、助けられたことに気づいて、将来自分もそうありたいという思いが湧いてきました。やはりダンサーを支える存在になりたくて勉強を始めています。テクニックも重要ですが、ダンサーの気持ちを理解しアドバイスを送ることも大切。少しの言葉ですっかり変われることもあるんです」。

 もう一つ、痛感したのはオーディエンスのありがたさ。「バレエという舞台芸術ができることは、人々を異空間に誘い、非日常の世界に連れていくこと。今はそれができる日を待ちわびています」

高田 茜(AKANE TAKADA)
2008年、ボリショイ・バレエ学校在学中にローザンヌ国際バレエコンクールに出場。プロ研修賞と観客賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエ団に研修生として入団。2015年『白鳥の湖』で主役、2016年に『ジゼル』で主役を踊り、26歳でプリンシパルに昇格

HAIR & MAKEUP BY RYOKI SHIMONAGATA

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