BY KANA ENDO
エルメスが表現する時の連なり
La Finesse Du Temps――テーマは“時の洗練”。時の流れを招き入れることで感情を呼び覚まし、時間の概念から解き放たれるような関係を“時”と築いていくことの表現のひとつとして、時間の表示だけが目的ではないアイテムを発表した。またジュネーブの会場のセノグラフィーはアーティストのクレマン・ヴィエイユが手掛け、エルメスが考える“時の質感”も同時に表現した。
『アルソー プティット リュンヌ』
アベンチュリンを星空に見立て、マザーオブパールの月、アラゴナイトとオパールの惑星に加え、ダイヤモンドの星座が輝く小宇宙を文字盤で表現した一本。アベンチュリンは半透明になるまで磨き上げられ、タヒチ産のマザーオブパールはオーロラのように輝くなど、サヴォワフェールにより立体感と深みが生み出されている。ベゼルには70個のダイヤモンドが配され、1978年にアンリ・ドリニーによってデザインされたユニークなアルソーのケースに静謐な輝きを加える。10時半位置には月の満ち欠けを知ることができるムーンフェイズ機構を備え、文字盤のアベンチュリンの色味とぴったり合わせられたストラップのカラーも見事。腕元の小さな宇宙の中で星たちが煌めくさまが、悠久の時の流れを感じさせる。
『スリム ドゥ エルメス 伝説の馬』
ギャロップする馬の輪郭をドットで表したダイヤルを携えた新作の「スリム ドゥ エルメス」は精密さと調和を兼ね備えた究極のシンプリシティを表す。この馬のシンボルはアーティスト、ブノワ・ピエール・エメリがデザインし、2010年に発表されたシルクスカーフのカレに由来する。カレでは天翔る騎馬がゴールドのドットで表現されており、本作ではその馬を時計の文字盤に蘇らせた。ピンクゴールドの馬が翔るモデルは、エナメル加工を施したダイヤルにレーザーで微細な穴を開け、そこに1678粒のピンクゴールドのビーズをはめ込んだ後、加熱しビーズを固定。ブルーのモデルは、エナメルの層を重ね焼成した文字盤に、ブルーエナメルの結晶を砕き、直径を揃えたパーツをピンセットで配置し、窯で加熱し固定させた。「スリム ドゥ エルメス」のシンプルなケースを52個のバゲットカットダイヤモンドが囲み、躍動感溢れる馬のモチーフを彩る。
『エルメスH08』
「エルメスH08」にビビッドなカラーを纏った新モデルが登場した。オレンジ、イエロー、ブルー、グリーンの4色の編み込みデザインのラバーストラップに加え、秒針や分目盛り、フランジもストラップと同色に。また新作の「エルメスH08」のケースには繊維を編み込んでアルミ加工を施したグラスファイバーや熱硬化性エポキシ樹脂、スレートパウダーから作られた新素材が採用されている。有機的な模様を生み出すケースとマットなセラミック製ベゼル、グレイン仕上げの文字盤など、質感の違いが絶妙なコントラストを生み出し、カラフルなストラップと融合することにより、よりアクティブでモダンな印象となった。
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