BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
2018年9月、ハイジュエリーをまとった究極のシャンパーニュが誕生した。「レア・シャンパーニュ」から限定リリースされた、「レア ル・スクレ」だ。これは、同社の最高醸造責任者レジス・カミュが特別に熟成させていたキュヴェに、1613年創業のフランスの老舗ジュエラー「メレリオ」が特別な装飾デザインを施したもの。
コレクションは、24金プレートに「メレリオ」のブランドロゴが刻印された「レア ル・スクレ ゴールドスミス」と、ゴールドとプラチナのリボンに1.38カラットのルビーを施した「レア ル・スクレ ハイジュエリー」のふたつ。リボンには、総量約4.34カラットのダイヤモンドがちりばめられている。ミュズレ(金属製の栓押さえ)も24金プレートで作られ、ボトルフロントには「Rare」のロゴが24金で描かれるなど、「メレリオ」ならではの高い金細工技術が生かされている。
じつは、「レア ル・スクレ」誕生のきっかけとなったのが、“王妃 マリー・アントワネット”だ。「レア」は1789年5月6日、「メゾン パイパー・エドシック」の創始者であったフローレンス・ルイ・エドシックが王妃に献上した同社最高級ラインのヴィンテージ・シャンパーニュ(当時のワイン名は「フローレンス・ルイ」)で、以後も王妃に愛飲されたことで知られる。一方、「メレリオ」は、当時新進気鋭のジュエラーだったが、マリー・アントワネットが初めての顧客となったことから“王妃のジュエラー”とも称されるメゾン。マリー・アントワネットに愛されたブランドが、時を越えてめぐり会った形だ。
「レア ル・スクレ」誕生の秘話を、レジス・カミュ氏はこう語る。
「これは、本当に偶然と幸運のたまものでした。私は1997年に収穫されたブドウで造ったキュヴェをプライベートカーヴの中で熟成させていたのですが、これを一年半前に当社CEOのブノワ・コラールとともに試飲したのです。すると、彼は『レジス、これは素晴らしいキュヴェだ! なにか特別なものにしなくては』と興奮しながら言いました。彼は同じ頃、テレビを見ていて『メレリオ』の歴史を知った。これが、彼に“マリー・アントワネットに愛されたブランド同士、なにかできる!”というインスピレーションを与えたのです」
「ほどなく私は、彼の働きかけで『メレリオ』クリエイション・デザイナーでもあるロール=イザベル・メレリオさんに会ったのですが、これもまた運命的なものでした。私たちはお互いの背景にある世界を理解し合い、すぐに意気投合しました。そこにはいくつもの共通項があり、私たちは互いの仕事に深い尊敬の念を抱いたのです」
この言葉を受け、ロール=イザベル・メレリオさんも語る。
「“マリー・アントワネットに愛されたこと”以外に私たちに共通するのは、どんな些細なことにも手を抜かないという正確なノウハウや、仕事に対する誇りでした。シャンパーニュはブドウから、ジュエリーは貴石から生まれます。私たちは“自然から生まれるものを美しく昇華させる“ということにおいて、大きな共通項を見出したのです」
以後、「レア ル・スクレ」クリエイションの話はスムースに進んだ。そして、デザインに際し、メレリオさんが表現したいと思ったのが、ブドウの生命力だったという。「これには、マリー・アントワネットが私にインスピレーションを与えてくれました。王妃が好んだモチーフは結び目とリボン。これを『レア』の繊細な味わいに反映させてみたいと思ったのです。ホワイトプラチナはシャルドネ、イエローゴールドは光とピノ・ノワール。リボンや結び目は、ブドウの枝が伸びていくイメージを表現しています」
自然の中から生まれたラグジュアリー。「レア ル・スクレ ハイジュエリー」を見ていると、自然と人間が手を携えると、こんなにも美しいものが誕生するのかと驚かされる。最後に、カミュ氏は、こう言ってほほえんだ。「シャンパーニュとジュエリーは、いつも“ペア”なのです。なぜなら、女性に指輪を贈る時には、シャンパーニュは必需品でしょう?」
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