さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第13回はファッションデザイナーの菊池武夫さん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 物心ついたときから「TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)」という名前を掲げた店舗があり、街の看板広告で見かけ、そして雑誌のページをめくるとそのブランド名を目にした。日本のファッション業界における“神”ゆえに、どこかファジーな存在の“タケ先生”こと菊池武夫さん――今年80歳を迎えた御大に、おやつにまつわる話を聞いた。

 粋な語り口と洒落た装いが魅力的なその人は、開口一番、「僕にとってはおやつ=甘いもの。それは戦中に生まれ、終戦直後のモノのない時代を生きているからかもしれないのだけど、昔から甘いものには目がなくてね(笑)。父が時折持ち帰る外国産のチョコレートも美味しかったし、うちは料理好きの母親がいて、父も台所に立つ人だったから、“男子厨房に入らず”みたいな空気は一切なくて。おたまを使って砂糖と重曹でカルメラ焼きを作ったりしていました」。

 体が弱くて、でも負けず嫌いだった菊池少年は、文化学院の美術科を卒業後、原 信子アカデミーへ入学。「先生がフランスのオートクチュールを経験した方だったので、デザインというよりは服の歴史を知り、実際に手で作ることが最優先。徹底的に基礎を学びました。一方で自由課題もあり、例えば“エプロンを作る”というテーマのときは、トワル(天竺)を変化させてデザインをおこし、布にきれいなブルーのマジックで7〜8cm幅の太いチェックを描いてみたり。驚かせてしまったけれど、作品を褒めてもらったことは鮮明に覚えていますね」。

画像: 「ウェイファー シーソルトキャラメル」¥2,750 プレスタ 日本橋三越本店 TEL. 03(3241)3311<代表>

「ウェイファー シーソルトキャラメル」¥2,750
プレスタ 日本橋三越本店
TEL. 03(3241)3311<代表>

 卒業後は、CMのコスチュームデザインや『アサヒカメラ年間』で故・写真家、佐藤 明さんの作品の衣装を手がけたり、劇団四季のシェイクスピアの舞台衣装を製作。「人の紹介で仕事がどんどん増えていって…… 夜中に打ち合わせをして一日で衣装を製作をするような日々が続きました。20代はほとんどアトリエで生活していました(笑)」。のちに友人と「BIGI」を設立、テレビでは『傷だらけの天使』で“ショーケン”こと萩原健一さんの衣装デザインとスタイリングを担当した。

 八面六臂のすさまじい仕事ぶりでも、よく食べ、よく呑み、よく遊んだ。「仕事中もご飯とおやつはしっかり食べていましたね。食べているときに仕事の話しをすることがあるじゃないですか!? 僕はあれが大の苦手(笑)。食事のときは食事に、おやつのときはおやつにきちんと向き合い、集中して味わいたいんですよね」。当時、好んで食していたのが、「とらや」の羊羹、「福砂屋」のカステラ、そして1902年にイギリスで創業した「プレスタ」のチョコレート。「もともとは知り合いが英国に住んでいて、お土産でいただいたもの。シーソルトキャラメルはミルクとダークの2種類が入っていて、薄くてパリッとした食感がいい。ちょこちょこつまみたくなるから、今も自宅に常備していますね」。

 

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