さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第13回はファッションデザイナーの菊池武夫さん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 パリ・コレクション参加を経て、50歳近くになってからは、生活のリズムが変わり、1日2食に。食事の間を埋めるものとして、おやつがいいつなぎ役になっているそう。「いろいろ食べてはみるものの、記憶に残るものって意外と少ない。でも丹念に練り上げた葛に宇治抹茶を加えたもの、それとクリームチーズが二層になった『くろぎ茶々』の練り菓子は、特別ですね」。菊池さんの脳内は、四六時中“服作り”が主軸。だから美味しいものを食み、人の言葉に心を打たれ、上質な映画を観て感化されると、それがイマジネーションになり、ダイレクトに服作りに反映されるとか。そのせいか、「アイデアが浮かばなくてもがき苦しんだことは一度もない(笑)」そう。

画像: 「常葉 白練(ときば しろねり)」<1箱>¥2,700 くろぎ茶々 TEL.03(6264)5754

「常葉 白練(ときば しろねり)」<1箱>¥2,700
くろぎ茶々
TEL.03(6264)5754

 いつだってポジティブ、楽しくてハッピー。プラスのオーラを放つ菊池さん。不況と言われるファッション業界をどのようにとらえているのだろうか?

「全盛期と言われる80年代のバブル期の日本は、異常な熱量で、人々がファッションに費やす金額の割合も相当高かった。デザイナー側も好き放題デザインできて、それを実現する材料も余裕も潤沢にあったので、生業にする僕らにとってはうれしい時代でしたね。今は、楽しいことが多岐にわたっているから、洋服にかける熱量も資金も低くなっているな、とは感じます。でもね、それは当然のこと。海外を見渡せば、暮らしの中で本当に必要なものって決まっていて、“自分らしいもの”にしか興味を示さない人がほとんど。アンティーク品など安いアイテムを上手に取り入れながら、自分らしい着こなしを楽しんでいる。日本もそうなりつつあるのではないでしょうか。だからこそ、僕らは環境を整え、“欲しい”と思ってもらえるような服を作り、どうやったら関心を持ってもらえるか?ー それを見出すことが大切ですよね」。

「80年代は、華やかできらびやかな時代ではあったけれど、新しいことに挑戦するたびに、世間から叩かれることも多く、悔しい思いもいっぱいしました。でもね、苦しいときにそれをプラスのエネルギーに変え、打破するって、後から考えればじつは楽しいこと。その先には必ず未来や希望があるんです」。

 みんなが敬愛する“タケ先生”は、いろんな意味で偉大だった。

菊池武夫(TAKEO KIKUCHI)さん
ファッションデザイナー。1939年東京都生まれ。1970年に「BIGI」、1975年「MEN’S BIGI」を設立し、翌 ’76年パリに進出。’84年にWORLDに移籍し、「TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)」をスタートする。2012年に、同ブランドのクリエイティブディレクターに復帰する。歩くのが大好きで、一日でも最低一万歩を目安に歩いているそう。「歩き出すと7〜8km歩くのは当たり前。外の環境も感じられて気持ちがいいし、頭の中がまっさらになるんです」
PHOTOGRAPH BY ROWLAND KIRISHIMA

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