BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA
朝食後、午前中は立ったまま作業ができる喫茶店で2時間ほど執筆。そこでおやつを済ませ、帰宅して軽めの昼食を摂ったら、外出先で再び執筆。「逃げ場がないぶん、外出先だと執筆が進むんですよね。インターネットが使えるという状況で集中力を保つことが年々難しくなっていて、外で書くときはケータイを自宅に置いたまま。一日に集中できる最大値は限られている感覚があるので、お腹がすいてもいないし満腹でもない、その2〜3時間をどれだけ大切にできるか、そこでどれだけ集中できるかが大切なんです」。何もかも執筆のため。アスリートのようですねと伝えると、「そう言うとかっこいいですが、とにかく集中力の欠落と食後の眠気がすごいんです。アスリートというより怠け防止です」
さて、「今日はあれを食べよう」と気持ちをつくっておき、夕方4時頃に帰宅したら、集中しておやつタイム。最近のヒットが「八天堂」の「くりーむコッペパン」だ。「上京したとき、永田町と恵比寿の駅に販売店があって小躍りしました。たとえば赤坂見附に用事があるときは、“通りかかったから買っちゃっただけ”と自分に言い訳をしながらわざわざ永田町経由で乗り換え、駅構内の店舗に寄るくらい八天堂のくりーむパンが好き。魔が差してオンラインショップをのぞいたらコッペパンと出会ってしまい、ついにお取り寄せに手を出してしまいました。袋に“出来立てを超えた”という記述があり、『冷凍なのにそんなことある!? ウソでしょ!? 』と思いながら、指定されたワット数と秒数に従いレンジでチンしたら、本当にその通り! パンはふわふわ、あんことバターが絶妙なとろとろ具合で、めちゃくちゃ美味しい。おかげで大量に常備しています」
朝井さんには、美味しいものに感動すると、別の人格になりきってグルメブログ風に仕立てた感想文を周囲のひとに送り付ける習性があるという。コッペパンについても、架空の女性ブロガーになりきって“レンチン”の仕方を懇切丁寧に説明し、美味しさを熱く綴ったとか。
「『これが美味しくてあそこで買えるよ。こんな風にアレンジすると最高だよ』といった内容を私の人格のまま送り付けるのちょっと押しつけがましい気がしまして。でも、他者の人格で書けば伝えたい内容をノリノリで書けるし、グルメブログだと思えばおせっかいなくらい情報が山盛りになっていても寧ろ評価が上がるじゃないですか。送り付けられた友達も、そのブログのいち読者として返信をしてくれるので、それも楽しみ」
「以前は甘党であることが少し恥ずかしかったのですが、30代になり、そういう気持ちも薄れてきました。公言するようになったら、美味しいものを教えてくれる友人も増えたし、甘党仲間と一緒に行列店に並ぶことを楽しんだり、おやつの取り寄せの便利さも覚えたりで、世界が広がった。いい変化だなと思っています」