TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
京都を訪れる知り合いからの問い合わせで一番多いのが、「オススメの和食店を教えてほしい」という声。今回は、15時からという営業時間もうれしい昨年オープンした和食の新星をご紹介します。
御所南「而今 平たて」

デザートに見えて実は白和え。季節の白和えはフルーツや野菜をかえて毎日オンリスト。豆腐を攪拌した後、裏ごしし、クリームのようなふわふわの口当たり。この日は、イチゴとうるい¥1,200
京都には値段もスタイルもさまざまに星の数ほど和食店があり、「和食のオススメ店は?」と、ばっくり質問されると正直、答えるのが難しい。今回紹介する「而今 平たて」は、「昔ながらの割烹のように店主と相談しながら好きなものをいろいろ食べたい」という方や、日帰り出張や旅の最終日にディナーを早めにとりたい方にぴったりな一軒です。

お客さんに合わせて料理の内容や量を柔軟に対応する店主・平舘亮祐さん
店は、15時からオープンという割烹には珍しい営業時間に。15時から17時は”酒と肴”の時間、17時以降は”一品料理とおまかせコース”の時間と銘打っているが、15時から17時はコースがいただけないだけで、一品料理に関しては夜と同じラインナップになっている。「早い時間は一品料理をアテに軽く一杯という酒場遣いでも来て欲しい」という思いから、”酒と肴”とあえて謳っているそう。
店主・平舘亮祐さんは、昨年4月に独立する前は、先斗町の名割烹「余志屋」で別館の料理長を任されていた和食歴18年の料理人だ。

新玉ねぎのムースとホタルイカ¥1,400。新玉ねぎは甘みを引き出すため、半日かけてお出汁で炊き、攪拌。ゼラチンと卵白を混ぜ、ムース仕立てに。玉ねぎの甘さが凝縮したムースと酸味がしっかりとした土佐酢のジュレ、こっくりとした黄身酢のソースが絶妙なコンビネーション
自身の店では、素材の味をストレートに味わえる正統な割烹料理もあれば、新玉ねぎのムースや土佐酢のジュレを添えたホタルイカや、ふわふわの白衣とフルーツを合わせた白和えといった趣向を凝らした一品もあり。人数やリクエストに合わせて量や内容を調整してもらえ、「ローストビーフは2枚でいいけど、付け合わせの浅漬けはたっぷり添えて」なんて言うわがままにも応えてもらえる。

昆布とかつおの出汁にハマグリの旨みが加わった吸い地がしみじみおいしい。上にのった木の芽やワラビも名脇役。ハマグリと竹の子の椀物¥2,300(写真は大ぶりのハマグリを使った1.5人前¥3,450)
接待利用の場合は取り分けてから提供されることも多く、キメ細かいサービスも心憎い。
おまかせコースは、あらかじめおおよその内容を決めてはいるが、日本酒好きな方には酒肴をちょこちょこ出したり、逆にお酒が弱い方には手巻き寿司を加えたり、お客さんが店に来てから、内容を変更することも多いそう。

京都御苑のほど近く。地下鉄丸太町駅より徒歩2分
単品注文の場合も、まず2、3品がおまかせで供されるスタイルだが、ビール党には揚げ物からスタートしたり、女性二人組には女性に人気の高い白和えを出すなど、おまかせの内容も臨機応変だ。
最近は割烹と言っても、お決まりのコースのみという店も増えているが、こちらでは、店主がそれぞれの客に合わせて料理を作る、昔ながらの割烹のもてなしを味わうことができるのが醍醐味だ。

カウンター7席のほか、半個室もあり
而今 平たて(じこん ひらたて)
住所:京都市中京区車屋通夷川上ル少将井御旅町352の1
営業時間:酒と肴15:00~17:00、一品料理とおまかせコース17:00~(L.O.21:00)
定休日:月曜(月1回連休あり)
TEL. 075(221)2288
おまかせコース¥14,300~(前日までの要予約)
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天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント