「ラデュレ」を皮切りに「オテル・ル・ムーリス」ほか、ミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」と三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」ではシェフパティシエを歴任。世界のグランシェフたちの信頼を得てガストロノミー界の檜舞台に登場し、現在はパリを拠点に、世界各地で活躍中の長江桂子さん。その精確で明瞭なレシピにはプロの間でも定評あり。家庭で楽しむお菓子においては、誰もがつくりやすく、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深く食べ心地は軽やかなレシピを提案している。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめるアイデアも。これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのレシピを丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: 幸せの象徴である薪の形のクリスマスケーキ。砂糖の量をぎりぎりまで落とした軽くてすっきりした後味のケーキには、芳醇な風味のシャンパーニュが合う

幸せの象徴である薪の形のクリスマスケーキ。砂糖の量をぎりぎりまで落とした軽くてすっきりした後味のケーキには、芳醇な風味のシャンパーニュが合う

「ビュッシュ」とは、フランス語で「薪、切り株、丸太」、「ノエル」は「クリスマス」を意味する。直訳すれば、「クリスマスの薪」。冬の寒さが厳しいヨーロッパでは、暖をとる薪はとても大切なものだった。キリストの誕生を、薪を燃やして夜通し祝ったという話、薪を燃やした後の灰は厄除けや健康のお守りになるといわれていること、他にも、貧しくて恋人にプレゼントを買えなかった青年が薪を1束贈ったというエピソードなど、このお菓子の名前の由来は諸説ある。ともあれ薪が幸せの象徴ということで大切にされ、祝いのお菓子の形となったのだろう。

「フランスではクリスマスシーズンになると、いろいろな『ビュッシュ・ド・ノエル』がパティスリーの棚を彩ります。私もレストランデザートとして、この時期、さまざまにアレンジして作ってきました。今回は、いちご、クリーム、生地のバランスがほどよい、細身のシンプルな白いビュッシュ・ド・ノエルをご紹介します」と長江さん。

 これまで習ったジェノワーズ生地に、カスタードクリームやクレーム・シャンティーを利用したクレーム・シャンティー・ヴァニーユ、いちごのモダンなデコレーション。大人っぽさが漂う仕立てに加え、サンタクロースの飾りをのせた可愛らしいデコレーションの応用編もご紹介。今年のクリスマスは手作りの幸せをどうぞ。

画像1: パリのパティシエ
長江桂子さんにお菓子を習う
Vol.21 ビュッシュ・ド・ノエル

■材料 
<ジェノワーズ(27×27×1cm)>
 卵 2個
 グラニュー糖 75g
 薄力粉 65g
 無塩バター 15g
 牛乳 25g

<シロップ>
水 60g
グラニュー糖 30g

<クレーム・シャンティー・ヴァニーユ>
生クリーム 200g
グラニュー糖 10g
ゼラチン (200ブルーム)  2g
カスタードクリーム 50g(作り方はVol.5 絶品カスタードクリーム編を参照)

■下準備
シロップを作る。水とグラニュー糖を鍋に入れて温め砂糖を溶かす(もしくは、蜂蜜、ジャムなどを水で伸ばしたものでもよい)。

■作り方

1 ジェノワーズを焼く。(ジェノワーズの焼き方はVol.4 ジェノワーズ編を参照)

画像2: パリのパティシエ
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2 粗熱が取れたジェノワーズからオーブンペーパーをはがす。薄いまな板などを写真のように当てて、軽く押し付けるようにしながら、ペーパーを板に沿わせて引っ張りながら進めると、きれいにはがせる。

画像3: パリのパティシエ
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3 ジェノワーズを半分に切る。定規で測って下のオーブンペーパーごと切るとよい。

画像4: パリのパティシエ
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4 3のジェノワーズをひっくり返し、2と同様にオーブンペーパーをはがし、端の余分な部分を切り落とす。焼き上がりの天板側をロールの外側にするときれいに仕上がる。はがしたオーブンペーパーの上にのせ、今後の作業は全てその上でするとスムーズ。

画像5: パリのパティシエ
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5 4にシロップを打ち、少しおいて馴染ませる。

画像6: パリのパティシエ
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6 生地に、使ういちごの数を確認するために並べてみる。なるべく同じ大きさのもの選ぶときれいに仕上がる。一旦いちごをボウルに移し、ヘタを取る。

画像7: パリのパティシエ
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7 クレーム・シャンティー・ヴァニーユ(作り方はVol.5 絶品カスタードクリーム編を参照)の半量を6の生地にのせ、スパチュラで全体にのばす。両端(巻き始めと巻き終わり)1cmほどにはクリームをのせない。このまま、冷蔵庫で冷やして落ち着かせる。

画像8: パリのパティシエ
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8 いちごを真ん中あたりに1列に並べる。

画像9: パリのパティシエ
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9 巻き簀の上にのせ、手前から巻いていく。

画像10: パリのパティシエ
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10 巻き終わったら、軽く全体を押さえながら、巻き終わりを下にする。

画像11: パリのパティシエ
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11 オーブンペーパーごとラップで包み、冷蔵庫に入れて落ち着かせる。

画像12: パリのパティシエ
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12 11を冷蔵庫から出し、クレーム・シャンティー・ヴァニーユの残り半分をヘラで全体に塗る。

画像13: パリのパティシエ
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13 スパチュラに持ち替え、向かって縦に生地を置いて、スパチュラを奥から手前に引くようにして、木の幹のイメージに仕上げる。このまま、一旦、冷蔵庫で落ち着かせる。

画像14: パリのパティシエ
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14 ナイフをお湯で温め、ふきんで拭き、13の両端を切る。

画像15: パリのパティシエ
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15 底にスパチュラを当て、器にそっと移す。縦半分に切ったいちごを交互にのせ、レモンの皮のすりおろしを振る。

■デコレーションのバリエーション

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Vol.21 ビュッシュ・ド・ノエル

上記の作り方8のところで、いちごを縦半分に切り、2列に並べ、同様に巻き簀で巻く。仕上げに、クレーム・シャンティー・ヴァニーユをロール全体に、木の幹のイメージに塗る。少し残しておいたクリームをスプーンでクネル状にして上にのせ、合間にいちごを飾る。あれば、クリスマス用の飾りものせる。

画像: 半分に切ったいちごを2列に並べて巻いたロールに。仕上げにスプーンでクリームをのせ、いちごをあしらった可愛らしいデコレーション

半分に切ったいちごを2列に並べて巻いたロールに。仕上げにスプーンでクリームをのせ、いちごをあしらった可愛らしいデコレーション

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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