TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
東山三条「瓢樹」

「御折詰」¥3,240
大正9年、「瓢亭」から暖簾分けを許され、初代・西村卯三郎さんが円山公園にて開店。その後、2代目は東山三条で仕出し業に専念し、2001年、3代目が日本画家・今尾景年の元邸宅にて料亭を再開。仕出しと料亭の二足のわらじとなったが、2022年、2代目が仕出し店を構えていた東山三条で再び、仕出し・持ち帰りの弁当の専門店となった。

門口の格子戸の先に石畳が続く料理屋さんのようなアプローチ
持ち帰りの折詰弁当は、旬の食材を使い、季節の味を楽しめる内容に。「冷めてもおいしいことは大前提ですが、過度な味付けはせず、素材の持ち味を邪魔しないようにしています」と、四代目・西村友延さん。濃い味付けをせずとも、毎朝ひく出汁でうまみを引き立て、ビシッと味が決まっている。

大葉で包んだ海老の道明寺揚やゴボウの昆布巻きなど、ひと品ごとに手がしっかりかけられている
春の「御折詰」(¥3,240)には、ひょうたん型のだし巻き玉子をはじめ、タケノコの煮物や鮭の西京焼きなど、さまざまな調理法で仕立てられた料理が美しく詰められている。この時は、うすいえんどうのごはんだったが、さくらごはんや青じそごはん、番茶で炊いた茶めしなど、ごはんも季節と共に移り変わっていく。
慶事や法事、お食い初めなど、家庭で客人をもてなす際に、用途に合わせて料理を作って届ける仕出し業。京都には古くから仕出しの文化が根付いていてるが、最近では、ホテルの客室や一棟貸しの宿へ届ける、旅行者の利用も増えているという。温かい椀物をその場で温めたり、季節を映す器を持参したり、仕出しはただのデリバリーとは違うため、配膳をする光景に外国人ツーリストも興味津々なのだとか。
京都観光に出かける前や新幹線で帰路につく前にお弁当を受け取りに行くのもよいが、1日歩き疲れた夜は、あらかじめ仕出しを頼んでおいて、宿泊先でいただくのも京都ならではの楽しみ方だ。宿泊先が仕出し利用可能な場合に限るので、まずは予約の前に宿泊先に確認を。

暖簾には初代から受け継がれている教え「五味調和」と記されている。御折詰¥2,700〜
「瓢樹」
住所:京都府京都市東山区東大路通三条下ル進之町581
営業時間:電話予約 10:00〜18:00(店頭の引き渡し、仕出しに関しては18:00以降も相談可)
定休日:水曜・第3火曜
TEL. 075-561-1369
公式サイトはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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