味は世に連れ、世は味に連れ――。日々進化する日本の美食の最前線から、明日を読む。ベテランのフードジャーナリストが、いま注目するレストランを厳選して紹介する。第3回はケータリングや料理教室など多角経営に挑戦する神楽坂の「KOMB(コンブ)」へ

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

ケータリングや料理教室など多角経営に挑戦。食の店の新しいあり方を問う「KOMB(コンブ)」

画像: 「秋の果物 和え物」。ぶどう、いちじく、柿にしいたけを合わせ、くるみの和え衣で。フルーツの酸味は口直しにもなるので、必ず使う。

「秋の果物 和え物」。ぶどう、いちじく、柿にしいたけを合わせ、くるみの和え衣で。フルーツの酸味は口直しにもなるので、必ず使う。

「KOMB」と書いてコンブと読む。「日本料理の土台となる昆布を店名に」と店主の原田アンナベル聖子は言う。慶應義塾大学でITを学んだが、進んだのは好きな料理の道。懐石の名店での修業を経て、インテリアの会社に勤め、食関係のフリーランスとして独立。EC事業会社のマネジャーや、とらや赤坂店の菓寮のメニュー開発の責任者を務めたのちKOMBを創業。「料理人と並行して築いたキャリアが役立っています。内装関係の知識やウェブデザインの経験もすべてお店づくりに活きています」。レストラン、ケータリング、物販など、KOMBの形態は多角的だ。人生のさまざまな局面や時代の変化、顧客ごとのニーズに柔軟に対応できるあり方を考えたのだと言う。

画像: 「さわら 藁焼き」。焼き台に藁(わら)を置き、あぶる。煙と香りもごちそう。

「さわら 藁焼き」。焼き台に藁(わら)を置き、あぶる。煙と香りもごちそう。

 カウンターでは、ひと皿ひと皿が丁寧に調理され、目の前で仕上げられていく。炭火で焼いたり土鍋から取り分けたりと、香りや温度が感じられ、臨場感にあふれているのも楽しい。器は「歴史や物語を感じるから」と骨董を揃える。食材の生産者を訪ね、対話をし、理解を深めることを大切にしている。そこで感じたものを重ねることで料理の魅力がより増している。

画像: 「猪の味噌鍋」。滋賀の雲井窯の土鍋と水コンロを使う。

「猪の味噌鍋」。滋賀の雲井窯の土鍋と水コンロを使う。

 先日訪れると、店の中にはくつろいだ様子の女性のひとり客の姿もちらほらと。原田と会話を楽しみ、お酒を嗜(たしな)み、料理を味わい、「じゃあまた」と帰っていく。次回の予約をして帰る客も多いという。目も舌も肥えたお客が惹かれるのは、料理はもちろん、原田の感受性や時代を読む力だろう。

画像: 自家製の調味料や季節の瓶詰はオンライン販売も。左から「小布施の栗 渋皮煮」¥5,500、「柚子こしょう」¥2,400、「ごはん進む 和牛しぐれ煮」¥2,700、「じゃこの山椒煮」¥2,200。

自家製の調味料や季節の瓶詰はオンライン販売も。左から「小布施の栗 渋皮煮」¥5,500、「柚子こしょう」¥2,400、「ごはん進む 和牛しぐれ煮」¥2,700、「じゃこの山椒煮」¥2,200。

画像: 原田アンナベル聖子。実家は老舗の和菓子屋。ドイツ人の母は日本料理をきちんと習い、昆布でだしを引くほどの料理上手。

原田アンナベル聖子。実家は老舗の和菓子屋。ドイツ人の母は日本料理をきちんと習い、昆布でだしを引くほどの料理上手。

画像: 清々しい暖簾が洋風の扉に。

清々しい暖簾が洋風の扉に。

KOMB
住所:東京都新宿区若宮町5番地  
TEL.03-3528-9894
コース¥18,000〜
公式サイト

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