TEXT & PHOTOGRAPHS BY YUMIKO TAKAYAMA
新潟で1993年にぶどう作りからワイン醸造まで手がけるヴィンヤードとしてスタートした「カーブドッチ・ワイナリー」。海近くの砂地という環境を生かして作られ、ぶどう本来の味わいが生きたワインの評価は年々高まっている。その敷地内に、オーベルジュスタイルの宿泊施設「ワイナリーステイ トラヴィーニュ」が2019年11月にオープンした。
客室はたった10室。各部屋はそれぞれデザインや家具や照明、飾られているアート作品もすべて趣が異なる。どの部屋からもブドウ畑と角田山が眺められ、その美しい景観が自慢だ。
料理を作るのはフランス料理の名店「ル・ブルギニオン」出身の佐藤 龍シェフ。フランス・ブルゴーニュで一年働いた後、レストラン「トラヴィーニュ」の料理長に就任。実は、渡仏する前の一年間、ワイン造りを学びたくて、「カーブドッチ・ワイナリー」で働いていたのだという。そのとき、この土地の自然環境、食材の素晴らしさに触れていたことも、「ここでしかできない料理の可能性を追求する」という決心につながった。
「主要食材はほぼ県内産。すぐそばに海があり、漁港もあります。漁師さんに魚種や地元での食べ方について教えてもらったりして、それが料理のアイデアにつながっていますね。とれたての魚介類をすぐに処理できる環境は恵まれています。魚介には、とれたてがおいしい種類もあれば、そこから熟成させることでさらに深みが出るものもある。肉類は県内産のもの、野菜も地元の生産者から、直接仕入れさせてもらっているものも多いですね」と佐藤シェフ。「根菜のパナシェ 南蛮エビのクリスプとエキュームソース」は、「南蛮エビは唐揚げにするとうまい」という漁師さんの一言もヒントになったそう。
柿の種や郷土料理「からし巻き」を再構築してアミューズブーシュに取り入れるなど、遊び心もたっぷり。なかでも特に印象的だったのは、使用した食材の端材を丁寧に引いて作られるコンソメ「海と山のエキス そのクラリフェと米どころのニョッキ」。この土地の滋味が凝縮された、ほっとする一皿だ。国内ではまだ珍しい、本格的なワイナリーホテルの誕生に心躍る。
ワイナリーステイ トラヴィーニュ
住所:新潟県新潟市西蒲区角田浜1661
料金:¥35,000~(1泊1室の室料、2食付き。消費税別)
TEL. 025(677)5460(受付時間:9:00〜22:00)
公式サイト