ルイ・ヴィトンの伝統と革新を推し進めてきたコラボレーションという方法。それを軸にメゾンのクリエイティブな歴史を総覧する展覧会『LOUIS VUITTON &』が始まった。世界的に話題を集めた村上 隆や草間彌生、川久保 玲、山本寛斎ら日本のアーティストとの共作も登場する

BY MASANOBU MATSUMOTO

 今では当たり前になった、ファッションとアーティストとのコラボレーション。その大きな時流を作り出したのがほかでもないルイ・ヴィトンである。2001年春夏コレクションでは、スティーブン・スプラウスと協業。以降、村上 隆、草間彌生、シンディ・シャーマン、リチャード・プリンス、そしてデザイナーの川久保 玲やストリートブランドのシュプリームーー美術、建築、ファッションの枠を超え、名だたる作り手とともに、新しくセンセーショナルなアイテムを世に送り出してきた。

 ただ、じつのところ、こうしたルイ・ヴィトンと他者のコラボレーションはこの数十年で始まったものではない。創設者ルイ・ヴィトン自身、オートクチュールの先駆者シャルル・フレデリック・ウォルトとの親交を深め、ビジョンを共有し、いままでにない衣装用のトランクケースなどを作り上げた。1924年、アートディーラーのルネ・ジャンペルが大西洋横断の船旅の間に繊細な芸術作品を保護するために注文したトランクも、ひとつの共作だと言える。ちなみに、このジャンベルのトランクは画期的なものであり、以降、世界中の顧客が、美術品や画材を運ぶためのケースをルイ・ヴィトンに注文するようになる。2018年にもアムステルダム国立美術館がフェルメールの名作《牛乳を注ぐ女》を運ぶための特製ケースをオーダーした。コラボレーションは、いわば伝統と革新を推し進めてきたルイ・ヴィトンのDNA。原宿のjingではじまった『LOUIS VUITTON &』展は、これまでのメゾンとクリエイターらの創造的な関係史を辿りながら、メゾンの真髄を解き明かす。

画像: 現代美術家、ダミアン・ハーストの作品をプリントした「メディカル・キャビネット」や、音楽プロデュースからデザインまでマルチに活躍する藤原ヒロシとのコラボレーション・ギターケース、またルネ・ジャンペルがオーダーしたトランク、フェルメールの絵画《牛乳を注ぐ女》を運搬するため作られた特製ケースなどが並ぶ。左に見えるのは、ポップアートの巨匠アレックス・カッツが描いた、若き日のルイ・ヴィトンの肖像画

現代美術家、ダミアン・ハーストの作品をプリントした「メディカル・キャビネット」や、音楽プロデュースからデザインまでマルチに活躍する藤原ヒロシとのコラボレーション・ギターケース、またルネ・ジャンペルがオーダーしたトランク、フェルメールの絵画《牛乳を注ぐ女》を運搬するため作られた特製ケースなどが並ぶ。左に見えるのは、ポップアートの巨匠アレックス・カッツが描いた、若き日のルイ・ヴィトンの肖像画

画像: 草間彌生とのコラボレーション。草間の代表的なモチーフ「インフィニティ・ネット(無限の網)」と「ドット・インフィニティ(無限の水玉)」をアイテムにあしらった

草間彌生とのコラボレーション。草間の代表的なモチーフ「インフィニティ・ネット(無限の網)」と「ドット・インフィニティ(無限の水玉)」をアイテムにあしらった

 展示室は10のテーマに区分けされ、歴代のコラボレーションアイテムに加え、王室や著名人と制作したスペシャルオーダーのトランク、またルイ・ヴィトンが着想源あるいはモチーフになったアート作品なども紹介する。特に日本人クリエイターとの協業が大きくフォーカスされているのが本展の特徴だ。村上 隆や草間彌生とのコレクションや川久保 玲が再解釈した「モノグラム」のレザーシリーズ、建築家、磯崎新がテキスタイルデザインを施したシルクスカーフ、また近年の藤原ヒロシやNIGO®とのコラボレーションも会場に並ぶ。

画像: シルクスカーフで表現された、様々なクリエイターとのテキスタイル・コラボレーション。日本の建築家、磯崎新、ブラジルのオズ・ジェメオス、フランスのアンドレ・サライヴァ、英国のべン・アイン、ニューヨークを拠点とする Aikoなどが参加した

シルクスカーフで表現された、様々なクリエイターとのテキスタイル・コラボレーション。日本の建築家、磯崎新、ブラジルのオズ・ジェメオス、フランスのアンドレ・サライヴァ、英国のべン・アイン、ニューヨークを拠点とする Aikoなどが参加した

画像: メゾンのアイコン「モノグラム」誕生100 年目にあたる1996年、また2014年に発表されたコラボレーション。カール・ラガーフェルド、シンディ・シャーマンらが「モノグラム」を再解釈してアイテムをデザインした。 右は川久保 玲による「バッグウィズ ホールズ」シリーズ

メゾンのアイコン「モノグラム」誕生100 年目にあたる1996年、また2014年に発表されたコラボレーション。カール・ラガーフェルド、シンディ・シャーマンらが「モノグラム」を再解釈してアイテムをデザインした。
右は川久保 玲による「バッグウィズ ホールズ」シリーズ

 ウィメンズ アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールが、山本寛斎へのオマージュとして制作した2018年春夏クルーズコレクションもひとつの見どころだ。だるまや日本の伝統的な絵画など寛斎の代表的なモチーフを採用したフューチャリスティックなウエアに加え、デヴィッド・ボウイのツアー衣装にも採用された「TOKYO POP」、「鯉の滝登り」のコートなど、寛斎の代表作もあわせて楽しめる。

画像: 山本寛斎へのオマージュとして発表された、2018年プレフォールコレクション。山本の代表作品も合わせて展示されている PHOTOGRAPHS: © LOUIS VUITTON / DAICI ANO

山本寛斎へのオマージュとして発表された、2018年プレフォールコレクション。山本の代表作品も合わせて展示されている
PHOTOGRAPHS: © LOUIS VUITTON / DAICI ANO

 施設内には、ギフトショップもオープン。店頭に並ぶのは香水やホームグッズ、選りすぐりのアーティストたちと共作した「トラベルブック」など。またメゾンのマスコット「ヴィヴィエンヌ」の友人である新キャラクター「ペチュラ」のミニオブジェ、カードケースを限定で販売する。

『LOUIS VUITTON &』
会期:2021年3月19日(金)〜5月16日(日)
会場:jing(ジング)
住所:東京都渋谷区神宮前6-35-6
開場時間:10:00〜20:00(最終入場 19:30)
入場料:無料
※公式サイトの予約ページより要事前予約制
電話:0120-00-1854(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)
公式サイト

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