スペイン本土の東、イビサ島の向かいに位置するフォルメンテラ島。天然のビーチ、そして島全体に漂うリラックスした雰囲気が魅力だ

BY KATE MAXWELL, PHOTOGRAPHS BY LUIS DÍAZ DÍAZ, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

 スペイン、バレアレス諸島の最南端にあるフォルメンテラ島。背の低い松が這うように生い茂った長さ12マイルのこの島は、14世紀に流行したペストによって見捨てられ、その後300年ほど無人島と化した歴史を持つ。しかし、この島の最高のビーチと、絞り染めのようにさまざまな縞模様を描く青い海は昔からよく知られている。1960年代にはボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスがこの島で過ごし、1967年にはピンク・フロイドのメンバーも訪れたという。最近では、フェリーで35分ほど離れたイビザ島から、キラキラのボディペイントを施した観光客が日帰りでたびたびここにやってくる。

画像: フォルメンテラ島の東海岸、ラ・モーラ灯台の隣にある崖

フォルメンテラ島の東海岸、ラ・モーラ灯台の隣にある崖

 とはいえ、少し前まではフォルメンテラ島にわざわざ長期滞在するほどの理由はなかった。しかし近年、スペイン人ホテル経営者パブロ・キャリントンによって、島の南のビーチエリア“プラヤ・デ・ミグジョルン”にある有名ホテル「ゲッコ・ホテル&ビーチ・クラブ」がリデザインされた(キャリントンは、メノルカ島の「トッラルベン メノルカ」とマヨルカ島の「キャップ ロカット」を共同所有している)。また、イタリアやスペイン本土のシェフたちが、漆喰塗りの家が並ぶ島の中心地サン・フランチェスク・ザビエルへ移住してきたおかげで、食事も劇的に進化した。彼らは、パタタス・ブラバスやチョリソーといったありきたりなスペイン料理の代わりに、島ならではの魚介類を使った独創的なメニューを提供してくれる。

 しかし、こうした変化はあるものの、フォルメンテラ島は“第2のイビサ島”にはなっていない(また、今後もそうなりそうもない)。この島の雰囲気はカジュアルで控えめであり、まわりから聞こえるBGMは潮騒とセミの声。ナイトクラブ的なものといえば、DJと砂浜のダンスフロアがあるビーチ・バーがあるくらいだ。島の道路には、イタリアのスーパーカーよりもフィアットと原付バイクの方がたくさん走っている。プライバシーとシンプルな楽しみを求める新しい世代の観光客たちにとっては、それこそがこの島の魅力なのだという。

<STAY>

「ゲッコ・ホテル&ビーチ・クラブ」
家族連れにもおすすめのこのホテルは、2002年にオープンし、最近になってミッドセンチュリー・スタイルに改装された。館内には、洗練されていながら心地いい家具(このホテルのデザイナーであるアントニオ・オブラドールが手がけた、脚の細いアームチェア、薄いカーテンで囲まれたデイベットなど)が置かれている。精巧なムーア様式のタイルには砂浜と海を連想させる柄がほどこされ、と同時に本物の砂浜も海も、ホテルの敷地内のどこからでも目に入る。見た目に一新され、洗練されたのは確かだが、30部屋しかないこのホテルは相変わらずリラックスした雰囲気を醸し出している。滞在中、ゲストは無料のヨガクラスや、日没時には魚介のバーベキューを楽しむことができる。その合間には、客室に備え付けのプライベートプールの傍らでゆったりとくつろぐのもいいだろう。
geckobeachclub.com

画像: 「ゲッコ・ホテル&ビーチ・クラブ」のレストラン

「ゲッコ・ホテル&ビーチ・クラブ」のレストラン

「タラヤ」
フォルメンテラ島の中でもとりわけ穏やかな海岸に位置する「タラヤ」は、日常や仕事モードを完全にOFFにしたい人にうってつけのホテルだ。サボテンとブーゲンビリアが色彩のアクセントを添える2つの白い日干しレンガの建物には、シンプルな家具を配した14戸のアパートメントがある。レストランはないが、プライベートキッチンがあり、そこでゲストは、サン・フランチェスク・ザビエルのファーマーズマーケットで手に入れた焼きたてのパンや柑橘類、イチジク、ヤギのチーズなどを調理して、ピクニック用の食事を作ることができる(マーケットは日曜日以外、毎日開催している)。「タラヤ」にはプールはないが、それをほしがる人もいない。ここから30秒ほど砂浜を歩けば、輝く地中海が目の前なのだから。
talaya-formentera.com

画像: 「タラヤ」のプライベートエリアにある2つのデッキチェア

「タラヤ」のプライベートエリアにある2つのデッキチェア

「ヴィラ・レンティスコ」
レンタル別荘を扱うユニーク・プロパティーズ&イヴェンツ社は、島内でも最も洗練された邸宅をいくつも管理している。そのひとつが、新しく建てられたばかりでスタッフも充実した「ヴィラ・レンティスコ」だ。ブルータリズム建築の立方体の連なりからなるこのヴィラは、ミラノの建築家であるオーナーによってデザインされた。カラサオナ・ビーチを見渡す敷地にあるのは、7つの寝室と大きなプール、屋外のダイニングエリア。屋内にはくすんだ緑とグレーの色調のヴィンテージのイタリア製ソファやアームチェアが置かれ、床は磨かれたコンクリート。家のまわりには低木が生い茂っている。
uniquepropertiesandevents.com

画像: 「ヴィラ・レンティスコ」の中庭

「ヴィラ・レンティスコ」の中庭

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