ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第56回目は、鶯谷のランドマークを目指す「LANDABOUT(ランダバウト)」

BY KYOKO SEKINE, PHOTOGRAPHS BY HAJIME KATO

 JR山手線鶯谷駅南口から徒歩で約3分。20~30代の若者から外国人観光客まで幅広い層の旅行者と地域住民が交流できる、新しいスタイルのホテルがオープンした。中古マンション再生流通事業を手掛けるインテリックス(東京都渋谷区・代表取締役社長 山本卓也)が手掛け、東京を訪れる人々の拠点として枠にはまらない“出逢いに満ちた場”に、そして“エリアリノベーションの旗印”にと、2020年1月16日に開業。まだ生まれたてのコミュニティホテルである。

画像: 閉塞感の無いよう内観が見渡せる大きなガラス張りに。エントランスの奥はカフェ、その奥にダイニングエリア。向かって左は宿泊者用のラウンジスペースで、2階がホテルレセプション

閉塞感の無いよう内観が見渡せる大きなガラス張りに。エントランスの奥はカフェ、その奥にダイニングエリア。向かって左は宿泊者用のラウンジスペースで、2階がホテルレセプション

 そもそも鶯谷駅付近は古くから歓楽街、旅館街で知られ、お世辞にもエレガントでファッショナブルな地区とは言えない。誕生したホテルが駅近であるのは好条件だが、人気の谷根千(やねせん・谷中、根津、千駄木)地区のようなカルチャーな香り漂う下町エリアでもない。ではこの街をあえて選んだ理由は何か? なかなか歩く機会のなかった鶯谷駅の入谷、根岸地区側に降りたった。

 ホテル「LANDABOUT(ランダバウト)」は、そんな鶯谷では突出したスタイルで目立つ存在かと想像していたが、古い建物を利用したカフェやゲストハウスなども随所に誕生し、若者が行き交う姿を多く目にする現在の街では、新鮮ではあるが違和感はなかった。「このエリアは、街として少しずつ活気も出てきていると思う」と語るのは、ホテルのインテリアデザインを担当し、PRにも関わる建築家、HAGI STUDIO代表取締役の宮崎晃吉氏だ。宮崎氏はすでに以前から、外国人にも人気のエリアである台東区根津で、築60年の木造アパートを改造したカフェやショップを含む最小文化複合施設「HAGISO」や、三つ星のゲストハウス「hanare」などを運営し、成功させている人物だ。

画像: 2階に設けられた円形の宿泊者専用レセプション。ラウンド型のオープンな雰囲気のカウンターでチェックイン、アウト

2階に設けられた円形の宿泊者専用レセプション。ラウンド型のオープンな雰囲気のカウンターでチェックイン、アウト

 今回手掛けたホテル「LANDABOUT」のある鶯谷は、江戸から明治にかけて、俳人の正岡子規を始め、文人たちが集う文化的で風雅な土地として知られていた。そして現代では、前述のように古い建物の再利用で昨今のニーズにあわせた新しい流れも生まれ、“まちづくり再生”の動きも活発になっていると言うのである。

 宮崎氏やホテルのオーナー会社インテリックスと、運営会社であるベステイトの経営陣は、「単なるホテルプロジェクトにとどまらず、鶯谷の街の見方が変わるようなエリアリノベーションとなり、このホテルにはそのランドマークになって欲しい」と願ったのである。そもそも、ホテル名である「LANDABOUT」は、「ホテルは各地から人が集まり、ひと時を共にし、また旅発つ、導かれた道が淀むことなく結ばれる環状交差点“Roundabout”に似ている」との発想が原点であり、それを基にした造語である。「街と旅人との交差点」を鶯谷という地“Land”にかけ、最初のスペルを“R”から“L”に変えたのだ。

画像: 「DELUXE TWIN」<20㎡>

「DELUXE TWIN」<20㎡>

画像: 「UNIVERSAL」<23㎡>

「UNIVERSAL」<23㎡>

 ホテルの客室は全169室。それぞれの部屋は11㎡から32㎡で8タイプが揃い、2つの部屋をつなげるグループ客向けの「コネクティングルーム」も用意されている。お世辞にも広いとは言えないが、必要なものはすべて揃い、バスタブのある部屋、シャワー付き、テラス付きの部屋など、それぞれにすっきりと使い勝手のいい、そしてミニマルなデザインに好感度は高い。1階には本格的なカウンターを揃えたダイニングバー「LANDABOUT Table」があり、ここには多くの人に集って欲しいと宿泊者以外も歓迎している。

画像: カフェの奥、一段下がった静かなエリアがダイニング。新鮮野菜やこだわりの食材で作られる気取らない料理はなかなか美味しい。ナチュールワインや、クラフトビールもある

カフェの奥、一段下がった静かなエリアがダイニング。新鮮野菜やこだわりの食材で作られる気取らない料理はなかなか美味しい。ナチュールワインや、クラフトビールもある

画像: 「世界に一つだけのオリジナル朝ごはん」、写真は洋食だが和食も用意。洋食は、野菜、自家製のドレシング・シーズニングを、パレットに絵を描くように組み合わせて作る自分だけのオープンサンド

「世界に一つだけのオリジナル朝ごはん」、写真は洋食だが和食も用意。洋食は、野菜、自家製のドレシング・シーズニングを、パレットに絵を描くように組み合わせて作る自分だけのオープンサンド

画像: 提供される新鮮食材の例。全国の農家から届くフレッシュな野菜や旬の食材、こだわりの肉類など

提供される新鮮食材の例。全国の農家から届くフレッシュな野菜や旬の食材、こだわりの肉類など

 ホテルのレセプションは宿泊者専用で2階に造られている。訪れたのがオープン直後ではあったが、早速、街とのコミュニケーションを目的としたイベントが開催されていた。全国10県の農家から直接届く採れたてのフレッシュ野菜やフルーツ、加工品などを、ホテル入口前のテラススペースで販売する「マルシェ」は、定期的に開催され、売り切れ続出! 近隣住民にも好評で、ほどなく常連さんも生まれそうだ。地元を巻き込んで良いことは積極的にやろうとする思考の柔軟さ、行動力、伸びしろの大きさは、コアターゲットである若い世代や外国人観光客のみならず、地元で暮らす人生の先輩たちからも支持されそうな勢いがある。

LANDABOUT(ランダバウト)
住所:東京都台東区根岸3-4-5
電話:03(6802)4431<代表>
客室数:全169室
料金:¥7,000~(1泊1室の室料。消費税・サービス料込)
※ 日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

 

This article is a sponsored article by
''.