ロンドンから車で約2時間半、2019年にイギリス南西部のサマセットに誕生したホテルが、世界のトラベルメディアやホテルジャーナリストから大きな注目を集めている。ここでは滞在記を通してその理由を紐解きたい

BY YUKA OKADA

画像: 菜園から、本館ハドスペン・ハウスを望む。1785年にここを購入した弁護士ヘンリー・ホブハウスが蜂蜜色をした地産の石灰岩を使い、当時のジョージアン王朝が確立した英国式建築意匠を、ファサードや外観に施した

菜園から、本館ハドスペン・ハウスを望む。1785年にここを購入した弁護士ヘンリー・ホブハウスが蜂蜜色をした地産の石灰岩を使い、当時のジョージアン王朝が確立した英国式建築意匠を、ファサードや外観に施した

 海外のカントリーサイドでの休暇を思うとき、常に憧れは募る一方で、はたしてどの国のどの宿を選んだらいいものか。確かな太鼓判がない限り、世界的に円安が膠着した今となっては一歩を踏み出すのは、ますます容易ではないかもしれない。

 そんななか、ロンドンから車で南西へ向かうこと、約2時間半。途中の車窓からはストーンヘンジを眺め、近郊には古代ローマ人が築いた温泉地バースと、いずれも世界遺産を擁するサマセット州に、2019年夏、「The Newt in Somerset(ザ・ニュート・イン・サマセット)」というホテルが誕生。世の中はすぐにコロナ禍に突入するも、翌年には『Condé Nast Traveler』のHOT LISTに選ばれ、2020年以降は毎年同サイトのREADER’S CHOICE AWARDSを獲得。2023年には同じくGOLD LISTに名を連ね、初実施となった「THE WORLD’S 50 BEST HOTELS 2023」では37位にランクイン。ホテルに一家言がある各国ジャーナリストの間でも、一躍、注目のホテルとなった。

 ならば、このThe Newtは、他のカントリーサイドにあるホテルと何が違うのか。

 実際に到着してみてまず面食らうのは、見渡す限りどこまでも、はなから計測を放棄せざるを得ない800エーカー超え、東京ドーム約87個分にも相当する広大な敷地だ。

画像: 上空から眺めた敷地の一部。左上方にある建物がハドスペン・ハウス、正方形の区画が連なる手前が菜園、右奥にThe Newt自慢のガーデン、カフェやショップ、サマセット名物のサイダーのセラーなどがある

上空から眺めた敷地の一部。左上方にある建物がハドスペン・ハウス、正方形の区画が連なる手前が菜園、右奥にThe Newt自慢のガーデン、カフェやショップ、サマセット名物のサイダーのセラーなどがある

 その敷地内には、1687年から1690年にかけて建てられ“ハドスペン”という当時の地名が冠された、今はイギリスで法的に保護される指定建造物(グレードⅡ)にも認定されている本館「ハドスペン・ハウス」、旧厩舎・穀倉・馬車置き場だった「ステーブル・ヤード」、酪農場の旧母屋・牛小屋や工場・穀物所蔵個だった「ファーム・ヤード」、キッチンが付いた一軒家の「ゲート・ロッジ」と4つのエリアがあり、間取りが異なる40の客室が、リノベーションを経て点在。インテリアは木を基調としたカントリーテイストへの敬意をのこしつつ、家具にジャスパー・モリソン、パトリシア・ウルキオラ、moooiやGUBIなどがキュレーションされ、一見してモダンなセンスで再構築されている。

画像: ハドスペン・ハウスの2階、ガーデンの澄んだ空気を取り込む「ハドスペン・ガーデンビュー・ルーム」は、プライベートテラス付き。ゴールドカラーのサイドテーブルやベルベットのソファがアクセント。1泊1,025ポンド〜

ハドスペン・ハウスの2階、ガーデンの澄んだ空気を取り込む「ハドスペン・ガーデンビュー・ルーム」は、プライベートテラス付き。ゴールドカラーのサイドテーブルやベルベットのソファがアクセント。1泊1,025ポンド〜

画像: 旧厩舎だった趣が色濃く残るステーブル・ヤードの「クロック・ハウス・ルーム」は簡易なキッチン付き。野生的な意匠と見合う、遊びのある家具使いが印象的。1泊825ポンド〜

旧厩舎だった趣が色濃く残るステーブル・ヤードの「クロック・ハウス・ルーム」は簡易なキッチン付き。野生的な意匠と見合う、遊びのある家具使いが印象的。1泊825ポンド〜

画像: 本館のエリアから、電動バギーなら5分強、冬以外は自転車での移動も楽しいファーム・ヤード。The Newtにあるもうひとつの小村という風情もあり、本館との行き来は敷地全体の把握にも役立つ

本館のエリアから、電動バギーなら5分強、冬以外は自転車での移動も楽しいファーム・ヤード。The Newtにあるもうひとつの小村という風情もあり、本館との行き来は敷地全体の把握にも役立つ

画像: ファーム・ヤードの「アップル・ロフト」。軽やかなカントリーテイストと色数の少ないニュートラルな空間は、滞在するほどに馴染んでくる。ガーデンがテーマの選書、暖炉やスチームサウナ部屋も完備。1泊1,025ポンド〜

ファーム・ヤードの「アップル・ロフト」。軽やかなカントリーテイストと色数の少ないニュートラルな空間は、滞在するほどに馴染んでくる。ガーデンがテーマの選書、暖炉やスチームサウナ部屋も完備。1泊1,025ポンド〜

 インテリアや家具を手がけたのが、南アフリカ版『ELLE DECO』の編集長だったカレン・ルースと聞けば納得だが、彼女こそがThe Newtのオーナー。その世界観はイギリス郊外のマナーハウスを舞台にしたロバート・アルトマン監督の映画『ゴスフォード・パーク』にも影響を受けているとも。そしてカレンの夫で、同じく南アフリカのナスパースという老舗メディアグループの会長でもある大富豪クース・ベッカーが、このホテルの挑戦を支えている。 

 彼らは2010年にケープタウン郊外に位置する世界的ワインの産地に、18世紀に建てられた農園を「Babylonstoren(バビロンストーレン)」という名のホテルとして開業し、すでに成功に導いており、The Newtはその姉妹ホテルになる。バースを舞台にしたイギリスの古典文学を読んでサマセットに憧れがあったカレンと、ロンドンからそれほど遠くない農業地帯の拠点を探していたクースが、ハドスペン・ハウスを一目で気に入り、1785年以来、約2世紀にわたって建物のみならず広大な一帯を進化させてきたホブハウス家から、2013年に購入した。

画像: 奥に聳えるのがハドスペン・ハウス、手前左右の建物がステーブル・ヤードの一角。グレイッシュな空のもと、零下となる冬場も満室が続く

奥に聳えるのがハドスペン・ハウス、手前左右の建物がステーブル・ヤードの一角。グレイッシュな空のもと、零下となる冬場も満室が続く

 「The Newt」という名は、敷地内に生息し絶滅の危機に瀕している約2,000匹のイモリをホブハウス家が長年保全してきたことに敬意を込めて、名付けられたという。

画像: ハドスペン・ハウスの「ライブラリー・ドローイングルーム&テラス」では自家製のスコーンをクロテッドクリームで味わう“クリーム・ティー”を提供。壁には保管されていたホブハウス家の人々の肖像画も

ハドスペン・ハウスの「ライブラリー・ドローイングルーム&テラス」では自家製のスコーンをクロテッドクリームで味わう“クリーム・ティー”を提供。壁には保管されていたホブハウス家の人々の肖像画も

画像: クロケット・コートに面したラウンジのカラフルなチェアはイタリアのブランドMOROSOのもので、赤青黄緑のボールが入ったクロケット・セットをイメージ。ヴィンテージのレコードプレイヤー、グレイス・ジョーンズなどのレコードも

クロケット・コートに面したラウンジのカラフルなチェアはイタリアのブランドMOROSOのもので、赤青黄緑のボールが入ったクロケット・セットをイメージ。ヴィンテージのレコードプレイヤー、グレイス・ジョーンズなどのレコードも

画像: ファーム・ヤードの中心には「ガーナー・バー」があり、サイダーやワイン、ビールやウィスキーなどがすべてフリー。英国のバー文化を汲んだ気の利いた集会場でもある

ファーム・ヤードの中心には「ガーナー・バー」があり、サイダーやワイン、ビールやウィスキーなどがすべてフリー。英国のバー文化を汲んだ気の利いた集会場でもある

 そんなThe Newtにあってユニークな見せ場は、数世紀にわたって著名な専門家たちが管理を行ないオリジナルの品種も数多く生み出してきた、“園芸の聖地”として知られるガーデンだ。散策する過程で、バロック様式〜ビクトリアン様式〜池泉式庭園と、イギリスの庭園や園芸の物語を辿れるようにもなっていて、花の色や香りなどがテーマの観賞用の庭園もある。The Newt以降はレストランで使われる野菜や果物、ハーブが育つ、各種菜園も加わった。

 一方で放射線状の塀に囲まれた「パラポラ」という名のウォールガーデンでは、The Newtのガーデン・アーキテクトでBabylonstorenの庭園も手がけたイタリア系フランス人のパトリス・タラベラによる、イギリス以外のグローバルなガーデンやそのテクニックも垣間見ることができる。一見シンプルなデザインにもかかわらず、よく見ると様々な 高さの生垣、植栽、壁が混ざり合って、美しい曲線の迷路のような空間を生み出した。ここにはサイダーが名産であるサマセットにちなんで、イギリス最大のコレクションとなる300以上の品種を集めた460本のリンゴの木も植栽された。

画像: 2.7メートルの壁に囲まれたパラポラは、一帯の緑地を開拓し自然保護活動にも努めたホブハウス家の庭園デザイナーで作家のベネロピ・ホブハウスが1970年に建造し、一般公開されていた

2.7メートルの壁に囲まれたパラポラは、一帯の緑地を開拓し自然保護活動にも努めたホブハウス家の庭園デザイナーで作家のベネロピ・ホブハウスが1970年に建造し、一般公開されていた

画像: 敷地内の湖を眺めることができる小高い丘。The Newtにはあらゆる場所にベンチがあり、思い思いに過ごすゲストの長閑な時間に寄り添う

敷地内の湖を眺めることができる小高い丘。The Newtにはあらゆる場所にベンチがあり、思い思いに過ごすゲストの長閑な時間に寄り添う

 The Newtの園芸部門のヘリテージ・マネージャーには現在、在英10年以上になる日本人の石田麻衣子さんが抜擢されている。イギリスで歴史的庭園とランドスケープ保全に関する修士号を取得し、複数のパブリックガーデンでキッチンガーデナーとして伝統的な野菜のリサーチや栽培を手がけてきた。

画像: 石田麻衣子さん。The Newtのガーデンは68ポンドを支払って年間のメンバーシップになると、一般のゲストも入場できる。子どもは無料

石田麻衣子さん。The Newtのガーデンは68ポンドを支払って年間のメンバーシップになると、一般のゲストも入場できる。子どもは無料

 石田さんは切花の栽培にはじまり、ホテル各所のセンスあふれるフラワーアレンジメント、ドライフラワーやハーバリウム、スワッグ作りをはじめとする人気のワークショップ、加えて敷地内のアクティビティのひとつで世界のガーデニングの歴史をインタラクティブに辿る体験型ミュージアム「ストーリー・オブ・ガーデニング」の一部キュレーションに至るまで、The Newtのコンテンツを牽引しながら、マルチに活動。2023年の夏には敷地内に自ら提案した日本庭園もオープンさせたばかりで、イギリスと欧州日本庭園協会の執行役員も務めている。

「日本庭園に関しては、イギリスでガーデンの仕事をしていてその知識を引っ張り出すことはなかったので、デザインの歴史を調べ直しました。同じ植物でも日本とイギリスでは気候が違うぶん、管理法もアレンジしたり、テキストブック通りにいかないのがむしろ楽しい。The Newtには新しい提案を億劫がらず、必要なものはどんどん実行する社風があります」(石田さん)

画像: 宿泊ゲストは入場無料の「ストーリー・オブ・ガーデニング」。石田さんは園芸に関する工具の歴史を細やかに紐解き、それらを壁一面に展示したパートを担当

宿泊ゲストは入場無料の「ストーリー・オブ・ガーデニング」。石田さんは園芸に関する工具の歴史を細やかに紐解き、それらを壁一面に展示したパートを担当

 有料のワークショップも園芸関係が充実していて、ミニチュアガーデン制作、果樹の剪定、ガーデナーと食材を収穫しシェフと一緒に料理を作るプログラムなどが人気だ。

 休暇になくてはならない食体験に関しても、各種レストランがエリアごとに点在。本館のハドスペン・ハウスにあるメインダイニング「ザ・ボタニカル・ルーム」は、田舎の食卓で愛されてきた素朴な料理を新鮮な地元の食材でアップグレード。ヘッドシェフのマッド・ヒーリーはイングランド北部のヨークシャー出身で、ロンドンの女性シェフの草分けでもあるアンジェラ・ハートネットのイタリアン「Murano(ムラーノ)」を皮切りにいくつかのレストランを経て、ルーツである田舎に戻った後、より豊富な食材と対話できるサマセットに移り住んだ。

画像: ザ・ボタニカル・ルームには二つの空間があり、オレンジの木に囲まれたガラス張りの部屋が「グラス・ルーム」

ザ・ボタニカル・ルームには二つの空間があり、オレンジの木に囲まれたガラス張りの部屋が「グラス・ルーム」

画像: もう一つはオークの羽目板がよりフォーマルな「オーク・ルーム」。トム・ディクソンの照明が迎えてくれる。The Newtの中でもドレスアップして出かけたくなるレストラン

もう一つはオークの羽目板がよりフォーマルな「オーク・ルーム」。トム・ディクソンの照明が迎えてくれる。The Newtの中でもドレスアップして出かけたくなるレストラン

 たとえばある日の朝食は、自家製ベーカリーで焼かれた柔らかなサワートーストの上に、サマセット名産のフレッシュなチェダーチーズ、スモークハム、フライドエッグ、そこにディジョンマスタードで味を整えた一皿。ひとつひとつ選ばれた新鮮な食材がシンプルに調和したご馳走だ。

画像: チェダーチーズのトースト。アクテビティではチェダー村へのツアーもあり、敷地内のファームショップでは各種チーズをはじめ、シャルキュトリー、サイダーなど自家製の食材も充実

チェダーチーズのトースト。アクテビティではチェダー村へのツアーもあり、敷地内のファームショップでは各種チーズをはじめ、シャルキュトリー、サイダーなど自家製の食材も充実

 さらにクロケット・コートとテラスを眺める「ハドスペン・バー」、ファームヤードには薪火のオーブン料理がスペシャリテの「ファームヤード・キッチン」、そしてガーデンエリアを一望し休憩所も兼ねたランチ限定の「ガーデン・カフェ」は数時間前にThe Newtの菜園で収穫されたばかりのトマト・豆類・季節の野菜を中心としたヘルシーな料理が並ぶ。滞在時の11月のランチには、前菜に白インゲンとリンゴのスープ、メインにインゲンとカブとケールをシダーとタイムでグリルしたサラダなどがラインナップ。どのレストランでもすべてのメニューにカロリーが記載されている。

画像: ファームヤード・キッチンは、薪火のオーブン料理を中心にしたファインダイニング

ファームヤード・キッチンは、薪火のオーブン料理を中心にしたファインダイニング

画像: ガーデン・カフェはブレックファスト、ランチのみ営業。メンバーシップにも開放されていて、パラポラも一望できる

ガーデン・カフェはブレックファスト、ランチのみ営業。メンバーシップにも開放されていて、パラポラも一望できる

画像: ファーム・ヤード・キッチンに隣接する「プール・バーン」。バーン(BARN)という名の通り、納屋を改造。一方で牛舎を改造したスパにはハマムもあり、他にヨガスタジオやジムも完備

ファーム・ヤード・キッチンに隣接する「プール・バーン」。バーン(BARN)という名の通り、納屋を改造。一方で牛舎を改造したスパにはハマムもあり、他にヨガスタジオやジムも完備

 他にもテイスティングツアーが人気のサイダー醸造所の屋外には「サイダー・バー」があり、敷地内で栽培されるサイダー用のリンゴとサマセット産のリンゴを使い、水も砂糖も一切加えずに作られるThe Newtオリジナルのサイダーと、姉妹ホテルのBabylonstorenのワインなどもオーダーできる。

  食材で言えば、The Newtの最寄り駅となるキャッスル・カリー・ステーション併設の20世紀のミルク工場までをリノベーションし、2024年春からは自家製チーズやヨーグルトを製造し、レストランとショップもオープンするというから、もはやそのスケールにおののくしかない。

画像: サイダー・バー。異なるリンゴから作られた全5種のThe Newtサイダーや、Babylonestorenのワインなども注文できる。お隣にはファーム・ショップがあり、お土産としても購入可

サイダー・バー。異なるリンゴから作られた全5種のThe Newtサイダーや、Babylonestorenのワインなども注文できる。お隣にはファーム・ショップがあり、お土産としても購入可

 ちなみに電動バギーでの移動中は、羊たちに道を遮られる場面もしばしば。羊は地元品種で、牧草を食糧に、糞は堆肥にするなど循環型農業の中で放牧されている。 伝統品種の野生の鹿が生息する公園もあり、特定の時期に殺処分することで頭数を管理。それらは2023年にThe Newt内に新設された食肉処理場で調理・熟成されることで、移動のストレスがなく動物福祉にも配慮されている。

画像: バギーの前にあらわれる羊たちの群れ。他に観賞用の鶏や野生のアヒルにも遭遇する

バギーの前にあらわれる羊たちの群れ。他に観賞用の鶏や野生のアヒルにも遭遇する

 また、敷地内で発掘されたローマン・ブリテン時代の邸宅を「ローマン・ヴィラ」として再現しているのも、The Newtのユニークさの一つ。イギリスがローマ帝国の支配下にあった、西暦351年に建てられたとされ、復元された建物の各部屋には考古学や教育的観点から当時の家具や雑貨も展示。完璧な日本語字幕が付いたVR体験を通してタイムスリップもできる。しかもこのヴィラでの体験ツアーをはじめ、前述のガーデン・ツアーやサイダーテイスティングを含む20ものアクティビティは毎日実施され、スパ・トリートメントとワイン・テイスティング以外は、宿泊ゲストであれば無料という太っ腹ぶりだ。

画像: ローマン・ヴィラ。建物の奥はローマン・ブリテン時代の製法で育てているというワインづくりのための葡萄畑

ローマン・ヴィラ。建物の奥はローマン・ブリテン時代の製法で育てているというワインづくりのための葡萄畑

画像: 考古学者、建築家、職人による専門チームが7年以上をかけて復元し、2023年9月に完成したローマン・ヴィラの一室。VR体験ではこのデイベッドに横たわるローマ・ブリテン時代の人々の宴も再現

考古学者、建築家、職人による専門チームが7年以上をかけて復元し、2023年9月に完成したローマン・ヴィラの一室。VR体験ではこのデイベッドに横たわるローマ・ブリテン時代の人々の宴も再現

画像: ローマン・ヴィラには実際に発掘された遺跡の上に建てられたミュージアムもあり、こちらも宿泊ゲストは入場無料

ローマン・ヴィラには実際に発掘された遺跡の上に建てられたミュージアムもあり、こちらも宿泊ゲストは入場無料

 なお、The Newtからもっとも近い村Bruton(ブルトン)には、2018年に誕生しサマセットを一躍イットなエリアに押し上げたスイスの「ハウザー&ワース」を筆頭に、アートギャラリーも増加中。

画像: 18世紀の農園を改装したギャラリー「ハウザー&ワース サマセット」。ファーム・ショップやレストランを併設し、ラグジュアリーなカントリーライフに憧れる若者やZ世代も訪れている

18世紀の農園を改装したギャラリー「ハウザー&ワース サマセット」。ファーム・ショップやレストランを併設し、ラグジュアリーなカントリーライフに憧れる若者やZ世代も訪れている

 ハウザー&ワースへの道すがら、サマセットに住んでいるというフィービー・ファイロの母と姉がオープンしたというヴィンテージ・ホームウェアの店の前を偶然にも通りかかった。

画像: 母と姉、2人のファイロを意味する店名は「Philo & Philo」。ショーウィンドーに飾られていたハンドメイドと思われるオーナメントも目を見張るセンスだった PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE NEWT

母と姉、2人のファイロを意味する店名は「Philo & Philo」。ショーウィンドーに飾られていたハンドメイドと思われるオーナメントも目を見張るセンスだった
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE NEWT

 アクティビティ担当スタッフの、「イギリスの田舎といえばコッツウォルズが有名だけれど、今はコロナ以降に移住者が増えたサマセットがキャッチー」というコメントも決して大袈裟ではないようで、The Newtを抜け出してサマセットを俯瞰で観察する時間も持てると、浮かび上がってくるカントリーライフの現在があるはずだ。

 すなわちThe Newtのゲストが幸福なのは、元来ホスピタリティのプロではないオーナーが、ありきたりではなく、インテリアだけに留まらない持ち前の感性を味方に、もはや“ホテル”という概念を超えたカントリーサイドならではの“ライフ”を比類のないスケールで感受できることにある。そして、リサーチを重ねてビジョンを打ち出した後は、各分野のプロの力を借り、スタッフの闊達な発想を受け入れてまとめていく元編集者特有のバランス感覚も、ホテルとしてのスピーディな進化に繋がっているのだろう。

 そこには、いわゆる田園での休暇と聞いてイメージするすべてをはるかに凌ぐ、圧倒的な体験が待っている。

<ホテル情報>
The Newt in Somerset
一泊料金: ハドスペン・ハウス625ポンド〜、ステーブル・ヤード795ポンド〜、ファーム・ヤード785ポンド〜、ゲート・ロッジ1,025ポンド〜
※2023年12月時点・宿泊料金には12カ月のガーデンのメンバーシップも含む・季節と曜日によって2泊または3泊のミニマムステイの規約あり
公式サイトはこちら

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