窓学10周年記念『窓学展 ―窓から見える世界― 』の展示風景


 禅問答のようだが、ふだんの生活で「窓」を意識的に見る機会は少ない。目に映るのは、窓そのものではなく、その向こう側に広がる景色だ。文学や絵画のなかで描かれる窓も、単なる空間の要素にとどまらず、メタファーとしてそこに込められた意味内容がフォーカスされることが多い。窓というものは、すっかり人の意識や生活に溶け込みながらも、ときに特別な眼差しが向けられる存在だ。


 窓をはじめとする建材を扱うYKK APは、2007年から、窓を学問の対象として国内外の有識者とともに研究をスタート。その10年にわたる「窓学」の成果を、『窓学展―窓から見える世界―』と題し、展覧会形式で披露した。


  展覧会には、「窓学」を推進してきた建築家や研究者、そしてアーティストが新作をたずさえて参加。そのひとりが写真家のホンマタカシだ。カメラの原型は、カメラ・オブスキュラと呼ばれる、窓のように小さな穴(ピンホール)が開けられた真っ暗な部屋。穴からの光が室内の壁にあたることで、外の風景が像として浮かぶという原理だ。ホンマは今回、あえてピンホールカメラを使い、建築家ル・コルビジェの晩年の傑作、ラ・トゥーレット修道院の窓辺を撮影。会場には修道院の一部を原寸で再現し、窓から見える風景のように写真を展示した。窓のある部屋とピンホールカメラ、窓と写真という関係を重ね合わせながら、新しいイメージの楽しみ方を提示している。



ホンマタカシ

『Camera Obscura Studies, La Tourette』2017年



 若手アーティストの鎌田友介は、鏡やガラス、フレームを使い、周辺の風景が錯視的に映り込む窓を制作。日本でも金沢21世紀美術館に常設された『スイミング・プール』の作者として知られるレアンドロ・エルリッヒは、窓を宙に浮かせ、ハシゴをかけたインスタレーション作品を発表した。窓がどこに繋がっているのか、見るもののイマジネーションを刺激する作品だ。



鎌田友介

『鏡』 2017年



レアンドロ・エルリッヒ

『Window and Ladder – Leaning into History』2017年



 研究分野では、歴史や文化、環境、設計などの観点から、窓という存在を多角的に掘り下げたレポートが、ブース形式でプレゼンテーションされている。たとえば、建築批評家の五十嵐太郎は、漫画に描かれる窓のシーンをピックアップし、これまで人々は窓辺でどのように振舞ってきたか、作者は窓にどのような物語的想像力を働かせてきたかを分析。その漫画の一部が会場に並べられ、来場者が手にとって閲覧できるのも楽しい。


 ここには多様な窓の姿があり、その数だけ窓に対する豊かな視点がある。奥深い窓の世界をのぞき込むことは、眼差しの感性を育むトレーニングになるはずだ。




窓学10周年記念「窓学展―窓から見える世界―」

会期:~10月9日(月・祝)

時間:11:00〜20:00 ※ 会期中無休

会場:スパイラルガーデン

住所:東京都港区南青山5-6-23

入場料:無料

特設サイト

※ 本展は、10月21日(土)〜11月12日(日)の日程で、金沢工業大学ライブラリーセンターでも開催。その後、東北大学、名古屋工業大学、大阪市立大学、九州大学を巡回予定


問い合わせ

YKK AP お客様相談室
フリーダイヤル: 0120-20-4134






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