「ワインにチーズ」「ワインに生ハム」。どちらも定番の組み合わせだ。しかし、「ワインに胡椒」と聞くと、どうだろう。日本では、胡椒をそのまま「食べる」という習慣は、ほとんどない。たいていは、料理の仕上げにパラパラっと振りかける程度ではないだろうか。料理の脇役的な存在が、ワインのお供になる。それが、この「塩漬け胡椒」だ。



白いごはんの上にパラパラと振りかけたり、とろけたチーズをのせた

トーストの上にのせても美味しい。カルボナーラや酸辣湯麺にも相性抜群

COURTESY OF FOURSTONES



 この小さな粒をひとかじりすると、ぷちっと実が弾け、そのジューシーな食感に驚く。塩の辛味と胡椒特有の芳醇な味わいが口の中に広がり、同時にふわっとミントを思わせる爽やかな香りが鼻に抜ける。そして、ワインをぐびっ。この永遠に続く幸せなサイクル! チーズや生ハムと同等、いや、組み合わせの新鮮さという点では一歩抜きんでた存在と言えるかもしれない。


 この塩漬け胡椒のもととなる胡椒の産地は、カンボジア南部のカンポット。日本ではなじみが薄いが、フランスをはじめとしたヨーロッパでは世界最高の胡椒の産地として知られ、その歴史は13世紀のアンコール王朝までさかのぼる。海と山に囲まれたこの土地で育つ胡椒は、豊富なミネラルによって育まれた深みのある味わいが特徴だ。



湖に近く位置するカンポットの胡椒農園。胡椒の栽培には、

良質で大量の水が欠かせない。カンボジアの中でもカンポットエリアは

胡椒の生育に適した絶好の条件が揃っている

COURTESY OF LA PLANTATION KAMPOT



 カンボジアでは、軸についたままの青い胡椒の束をどっさりタコやイカと一緒に炒めるなど、まるで野菜のような感覚で、胡椒をひとつの食材として使っている。摘みたての胡椒の実はフレッシュで、辛味は少なく、香り高い。プチプチとした食感も食欲をそそる。しかし胡椒は青い実を収穫しても2~3日ですぐに黒くなってしまい、みずみずしく弾力のある食感も失われてしまう。塩に漬けることで、その食感や味わいをぎゅっと閉じ込めたのが、塩漬け胡椒だ。カンポットで、この塩漬け胡椒を製造しているのが「La Plantation」という農園。世界各国を旅してきたフランス人とベルギー人の夫妻がカンポットの胡椒にほれこみ、この土地に移り住んで農地を開拓、胡椒の栽培を行なっている。



青い実を収穫して天日乾燥すると、黒胡椒ができる。

香りや辛味が強く、肉料理によく合う。

赤く熟すまで待つと、マイルドな味わいの赤胡椒に。

フルーツやアイスに添えて甘さを引き立てるという意外な使い方も

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