BY HATTIE CRISELL, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)
「私は、ポルノと死体は表現しないって決めているの。だけど、もし違った形で紛争や戦争を表現できれば面白くなるのでは、とも考えていた。この写真で惹かれたのは、荒廃した景色とカラフルなバルーンのコントラスト。そして、被写体の彼女の表情ね。それが恐怖によるものなのか、ただの恥ずかしがり屋でカメラに写らないように顔を隠れているのかわからないでしょ? その曖昧さが本当に好き」
「これは、絶対に私がやらなければと思った作品。10年前に初めて見た時から、この写真がどうしても忘れられなかったの。人の横顔を再現するのはあまり得意じゃないから、その点は気に入っていないのだけど。でも、右の女の子のくねっと曲がった腕の表情は気に入っている。そもそもプレイ・ドーで緻密なディテールまでを完璧に再現することは無理。だからこそ、ちょっとした仕草をいかに捉えられるかが重要なの」
「テヘランでは女性が公の場で何かを表現することが禁止されているの。ニューシャは、その女性の権利を少しでも取り戻すために、”架空の観客に向かって歌っている女性”のポートレイトを制作した。それが、この『イマジナリー・CDカバー』シリーズ。この被写体はギリシャ神話に出てくるセイレーンに少し似ている気がするし、タイムレスでもある。じつはその表情がうまく再現できなくて顔部分を3回も作ったんだけど、イライラして危うく爆発しそうになったわ」
「これが一番のお気に入りかな。ブルース・デヴィッドソンは私の一番好きな写真家のひとりなんだけど、この写真はプレイ・ドーでうまく再現できそうだと思ったの。背景の黒と黄色のコントラストが効いた写真で、なんとなくこちらに視線を向けている男性が写っている。この男性も、女性を守っているのか、彼女を所有しようとしているのかわからない曖昧さがある。今回は、シリーズの中でいろんな配色の作品を制作したいと思っていたんだけど、背景が真っ黒なこの一枚は、そのバリエーションを広げてくれたわ」