BY MASANOBU MATSUMOTO
今世紀に入って以降、現代アートにとってアジアはきわめて重要なシーンとなってきている。
クリスティーズのようなオークション会社が香港、シンガポール、バンコクへと進出し、パリの現代美術画廊ペロタンをはじめインターナショナルなアートギャラリーもアジアにスペースを構えた。スイス・バーゼルとアメリカ・マイアミで開かれていた世界的アートフェア「バーゼル」も、2011年より3つめの開催地として香港を選んでいる。アートマーケットは、あくまで資本主義の上に成り立っている。欧米中心主義ではうまく回らなくなった世界経済と同様に、アート市場もアジアの新しいパワーを求めたのだ。
もちろん、これまでにもアジア美術をテーマにした展覧会は世界各地で開催されてきたし、美術館のキュレーターや研究者の多くは、アジア各地のアーティストを美術史の中に位置付ける作業をしてきた。そうした流れの中でもやはりアートシーン全体の中ではローカルであったアジア美術が、今世紀、世界のアートマーケットと“出会った”ことの意味は大きい。近年、アジア美術に対する世界の眼差しは、日本や中国、韓国だけでなく、“これから”のものとされてきた東南アジア諸国の現代アートにも、一層強く向けられはじめている。
東京・六本木エリアの森美術館と新国立美術館で開催されている『サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで』は、そうしたアートシーンの「今」に触れる絶好の展覧会だ。